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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ122位 誰かが見ている メアリ・H・クラーク

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     メアリ・H・クラークといえば、わたしが高校生のころは、どこの古本屋の百均棚に行っても、「誰かが見ている」と「揺りかごが落ちる」と「子供たちはどこにいる」のどれかが並んでいる、という作家だった。まあ、ベストセラー作家である。同じように、どこの古本屋の百均棚に行っても並んでいたのがアーサー・ヘイリーであり、「自動車」だったわけであるが、あの内藤陳が「読まずに死ねるか!」で取り上げていたにもかかわらず、まったく食指が動かなかった作品群でもある。「いつだって読めるんじゃないか」という思い込みがあったからだが、「東西ミステリーベスト100」に圏外とはいえ入ったんだから、という理由で読んだこの「誰かが見ている」を除いてはどれも今まで読まずに来たため、「いつだって読める」とは「いつになっても読めない」と同義語なんだなあ、とつくづく思う。あのときの高校生のころを思い出しながら再読。

     再読してみて、内容を勘違いして覚えていたことに気づいた。サイコパスの殺人者に日常生活をひそかに監視されていく中でだんだんおかしくなっていく女性の物語、と記憶していたのだが、まったくそんなことはなかった。女性作家とその恋人の子供を誘拐し監禁し爆弾をセットしたサイコな殺人狂が、身代金を子供の父親からせしめようとする、正統派の「誘拐ものサスペンス」だったのである。

     電話での取り引き、舞い飛ぶ身代金、刻々迫る爆弾のリミット、恐怖におびえる人質と、懊悩する恋人、役に立たない警察とFBI。それに変態殺人鬼である犯人も加わって、ラストは分単位での勝負になり、いや、手に汗握った。実に面白いサスペンス小説である。

     だからというわけではないが、いま売って売れるかといったら、それはそれで疑問な小説であるのも確かだ。サイコサスペンスの分水嶺的作品であるのは確かだが、「古典」とはとても呼べない。そのいちばんの原因は、犯人のサイコパスが「おとなしく見える」ことであろう。ノーマン・ベイツみたいにおとなしい、というわけではなくて、印象が薄いのだ。一時代を築くには、トマス・ハリスの「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」レベルの強烈な変態さんでないととても無理なのだ。

     また、爆弾とともに監禁、レベルでは趣向としてもまだ弱い。監禁ものでは映画の「SAW」なんてえぐいのが平気で出てシリーズ化までされるこの現代において、もっとイヤらしく、神経がキリキリするようなシチュエーションでないと読者は興奮しないのである。世の中そういうものなのだ。

     結局のところ、1970年代末という絶妙なまでの発表時期があってこその122位かもしれない。面白かったことは面白かったものの、すでに読者の舌は激辛料理に慣れて、ちょっとやそっとのことでは麻痺したままなのだ。やはり90年代初頭に一世を風靡した、サイコスリラーというレベルでは収まらない変態小説の波の影響は考えるより大きかったのだろう。

     と、理解はしたものの、やっぱり、百均棚にいないとなんか寂しいのだクラーク女史。あったところで買うかどうかは、うーん、また別の話で。アーサー・ヘイリーも同様。新潮文庫の海外ものは、やっぱりわたしから信用されてないのかもしれん。
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    ~ Comment ~

    Re: 鍵コメさん

    まあ、よくあることです。

    看護師さんともどもお待ちいたしております。

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