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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ138位 四つの署名 コナン・ドイル

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     いわずと知れたシャーロック・ホームズ譚の一編である。ホームズ・パロディを書き始めてから、ホームズ譚を再読し始めたのだが、そのときには、「なんとなく印象の薄い話」でしかなかった。後に「バスカヴィル家の犬」が控えていたからであろう。それ以来の再読。今読んだらどうだろうか?

     というわけで読んだのだが、意外と面白かった。スピーディーな物語運びが心地よい。「単純な事件だ」などといっておきながら、神のごとき名探偵ホームズがロンドン中をあっちこっち移動して、「足の捜査」をするのである。変装シーンもあればコカイン注射もあり、ドイル先生、サービスしてますなあ。

     とはいえ、「緋色の研究」ほどではないが、犯人の自分語りのパートがあまりにも陰惨で、救いようがない、というのは、ああ、ドイル先生らしいな、と思ったのも事実。過渡期の作品とはいえ、あれは端折ってもよかったんじゃないのかな。

     また、いしいひさいち先生のマンガの影響が強すぎたせいか、ホームズとワトスンとメアリ・モースタンが「あの調子」で脳内再現されてしまうのは参った。本作のメアリは美しい乙女で、決してあんな毒舌キャラではないのだが。いしい先生という人はほんと恐ろしい人であるなあ。

     19世紀当時のイギリス人らしいエキゾチシズムも、「味」といえば「味」だが、今の世の中でこんなこと書いたらよくてギャグか、悪いと修正問題だろうなあ。いいわけきかんレベルでポリティカルコレクトネスに反しまくってるし。

     そんなこんなをいろいろと考えたわけだが、「四つの署名」はこの位置に来てもおかしくない傑作であることはよくわかった。だがそうすると考えるのは、ホームズの長編で唯一ランク外に落ちた「恐怖の谷」のことである。

     考えてみると、ドイル先生、「文章がうまくなりすぎた」んだろうな。「恐怖の谷」の過去パートで書かれる事件の構成は「四つの署名」に比べてはるかに凝っていて、小説として面白いんだけれど、それを取り巻く「ホームズ譚」としての構成が破綻していて、結果としてホームズ譚の中でも一二を争う「すっきりしない結末」になっているのが災いしているんだろう。

     「恐怖の谷」が、「ホームズ譚」としても、痛快なハッピーエンドで終わったら、この順位は逆転していたんじゃないかなあ、と思う。ドイル自身のレトリックが向上しているだけに、惜しいなあ、と思う。

     だから、なにがいいたいかというと……。

     ホームズの長編、どれもそれほど悪くないよ? だから「冒険」と「バスカヴィル家」ばかり語ってないで、たまにはほかの長編のことも思い出してくれると、わたしとしては、ちょっと嬉しいんだけどな。読む人はほっといても読む、といわれたらそれまでだけど……。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    英語のホームズの全集2巻本をペーパーバックで買いましたが、ボヘミアの醜聞ひとつ満足に読めずに玉砕しました。(^-^;)

    もうちょっと気力体力があったら翻訳の下訳とかして、病気にもならず、会社へ行かない仕事で食えてたかもしれんなあ、と思います……。

    NoTitle

    私は確か、初めて読んだホームズの長編がこれでした。(子供向けのリライトでしたが。後で全訳も読みました)

    日本語の「署名」と英語の「sign」で意味の範囲が違うというのはこの作品で教えられましたね。訳でも面白かったけど、英語で読むともっと面白いんだろうなあと最初に思わされた本でした^^

    思えば、小学生のころからそんなことを考えていたのか、自分(^^;
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