東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
海外ミステリ141位 死者の中から ボアロー&ナルスジャック
土浦市立図書館どころか、茨城県内の全図書館にすら置いてなかったという本。取り寄せてもらうのに3カ月かかった。フランスミステリはやっぱり人気ないのかなあ。結局、埼玉県の図書館の蔵書を借りることになった。埼玉県立図書館さん、どうもありがとうございました。
で、読んだわけだが。「ものすごくフランスミステリらしいフランスミステリ」を読んだ気がした。妙に「……」の多い会話、しつこくしつこく語られる描写、粘りつくような文章。もう、読んでいるとイライラしてくる。日本人にとってどうしてフランスミステリがウケないのか、その見本を見せられているような感覚であった。
だが、途中からその感覚が妙にフィーリングに合ってくるのだ。旧友の大富豪ジェヴィーニュから、謎めいた言動を最近起こすようになった妻を監視してくれ、という依頼を引き受けた、精神的にもろいところのある弁護士のフラヴィエールが、生と死はつながっていて、自分は過去の女の生まれ変わりかもしれないのだ、と主張するその妻、マドレーヌにだんだんと惹かれていくようになる第一部は、大戦前夜のパリの不穏な空気と相まって、そのまま幻想文学を書く上でのお手本にしてもいいくらいである。いろいろあってマドレーヌは死ぬのだが、同時にドイツ軍も本格的な攻撃を開始してきて、フランス全土は戦火の中に巻き込まれるのだった。
そこからいきなり四年の時間が流れ、解放されたパリに、外地で金をこしらえたフラヴィエールが戻ってくる。そして、死んだはずのマドレーヌとしか思えない女と再会を果たす。そこからの悪夢じみた展開は、読者にまさに一気読みの、サスペンスフルな時間を約束してくれる。ボアロー&ナルスジャックは、「悪魔のような女」でもそうだが、そうした人をイライラソワソワさせるサスペンスを書くとうまいもんである。フランス人だからかなあ。
なんたって、文体が文体なだけに、読んでいるあいだにも、フラヴィエールの正気度がガンガン下がっていくのが目に見えるような感じなのだ。怖いよほんとに。結末近くまで読んでいて、もしかしたらこの本、ミステリの中にランクインされているけど、ほんとはもろの幻想文学、ホラー小説なんじゃないかと疑い出したときに、いきなり真相が明かされるのだが、それがもう、よく考えたらほかに考えようがないじゃないか、と自分の目のフシアナ感を実感させてくれる代物で、読んでいて大変気分が悪い。そこから、さらに気分を悪くさせるような結末のカタストロフへと話は進んでいくのだ。
たしかに面白かったが、うーん、読んでいる間じゅう、ずーっと延々と悪夢のアリ地獄へ引きずり込まれていくようなこの感覚を思うと、たしかに、「141位」くらいでちょうどだよなあ、という感じがしないでもない。いや、141位に入ったのは英断だろう。誰からも忘れられ、マニアだけが顔を突き合わせて「あれ読んだ?」とかいっているのが、この本にとっては正しい気がする……。
と思いながら解説を読んでぶっ飛んだ。ヒッチコックの映画「めまい」って、この小説が原作だったのか! それじゃあ忘れられる可能性なんてまったくないじゃないか! 「めまい」自体は未見だけど、そういわれると妙に見たくなってきたなあ。レンタル屋行こう……。
で、読んだわけだが。「ものすごくフランスミステリらしいフランスミステリ」を読んだ気がした。妙に「……」の多い会話、しつこくしつこく語られる描写、粘りつくような文章。もう、読んでいるとイライラしてくる。日本人にとってどうしてフランスミステリがウケないのか、その見本を見せられているような感覚であった。
だが、途中からその感覚が妙にフィーリングに合ってくるのだ。旧友の大富豪ジェヴィーニュから、謎めいた言動を最近起こすようになった妻を監視してくれ、という依頼を引き受けた、精神的にもろいところのある弁護士のフラヴィエールが、生と死はつながっていて、自分は過去の女の生まれ変わりかもしれないのだ、と主張するその妻、マドレーヌにだんだんと惹かれていくようになる第一部は、大戦前夜のパリの不穏な空気と相まって、そのまま幻想文学を書く上でのお手本にしてもいいくらいである。いろいろあってマドレーヌは死ぬのだが、同時にドイツ軍も本格的な攻撃を開始してきて、フランス全土は戦火の中に巻き込まれるのだった。
そこからいきなり四年の時間が流れ、解放されたパリに、外地で金をこしらえたフラヴィエールが戻ってくる。そして、死んだはずのマドレーヌとしか思えない女と再会を果たす。そこからの悪夢じみた展開は、読者にまさに一気読みの、サスペンスフルな時間を約束してくれる。ボアロー&ナルスジャックは、「悪魔のような女」でもそうだが、そうした人をイライラソワソワさせるサスペンスを書くとうまいもんである。フランス人だからかなあ。
なんたって、文体が文体なだけに、読んでいるあいだにも、フラヴィエールの正気度がガンガン下がっていくのが目に見えるような感じなのだ。怖いよほんとに。結末近くまで読んでいて、もしかしたらこの本、ミステリの中にランクインされているけど、ほんとはもろの幻想文学、ホラー小説なんじゃないかと疑い出したときに、いきなり真相が明かされるのだが、それがもう、よく考えたらほかに考えようがないじゃないか、と自分の目のフシアナ感を実感させてくれる代物で、読んでいて大変気分が悪い。そこから、さらに気分を悪くさせるような結末のカタストロフへと話は進んでいくのだ。
たしかに面白かったが、うーん、読んでいる間じゅう、ずーっと延々と悪夢のアリ地獄へ引きずり込まれていくようなこの感覚を思うと、たしかに、「141位」くらいでちょうどだよなあ、という感じがしないでもない。いや、141位に入ったのは英断だろう。誰からも忘れられ、マニアだけが顔を突き合わせて「あれ読んだ?」とかいっているのが、この本にとっては正しい気がする……。
と思いながら解説を読んでぶっ飛んだ。ヒッチコックの映画「めまい」って、この小説が原作だったのか! それじゃあ忘れられる可能性なんてまったくないじゃないか! 「めまい」自体は未見だけど、そういわれると妙に見たくなってきたなあ。レンタル屋行こう……。
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