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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ141位 星を継ぐもの J・P・ホーガン

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     中学生のとき学校図書館で読んだ。読んで猛烈にハマった。中高一貫教育を標榜していた(そのくせ大半の学生は外部の県立高を受験するのだが)学校の図書館というのはえらいもので、続編「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」までそろえていた。これで続きを読まなかったらバカである。わたしはむさぼるように読み、作者のJ・P・ホーガンの大ファンになった。あれから幾星霜。当時の中学生も、今や夢破れた下層階級のアラフィフである。読み直して面白いのかどうか。まあ、結果はわかってるけど、いちおうどきどきして再読。

     で、読み直したわけだが、うん、やっぱりムチャクチャ面白い。月面に残された、宇宙服を着た人間の死体が、精密な測定の結果、死後五万年を過ぎていることが明らかとなる、というつかみからして満点だ。あとは、名探偵役の数学者ヴィクター・ハント博士が、膠着した議論に次々と風穴を開けていき、知性と判断力と常識を駆使して、死体の謎を解き明かすのを手に汗握って読めばいいのである。その過程はまさにミステリの方法論であり、本書が85年にこの位置に、2012年版では見事100位以内にランクインした理由もわかるような気がする。気がするのだが……SFファンとしては本書がSFミステリを代表する作品とみなされるのはちょっと抵抗があるのも事実なのだ。

     それは、このJ・P・ホーガンという作家の立ち位置に由来する。なんというか、このホーガン先生、ハードSF作家とみなされているようだが、ハードSFファンからしたら、「どこがハードSFやねん」というレベルの科学を語っているのである。つまり、想像力過大な疑似科学を、「いかにもハードSFな語り口で」、実に面白く語ってくれる作家、といっていいだろう。対極にあるのがグレゴリイ・ベンフォード。カリフォルニア大学の物理学教授である彼は、正確かつ該博な科学的知識を、「いかにもハードSFな語り口で」語るのだが、どこをどうやったらここまでつまらなく語ることができるのだろう、と首をひねってしまうような作家なのだ。晩年のアーサー・C・クラーク先生が評判を落としたのも、このベンフォードとの合作のせいではないか、と口の悪いやつはいってるし。

     それなら、ほかにSFでしかできないミステリは山ほどあるだろう、とSFファンなら思うわけだ。古くは第一回ヒューゴー賞を受賞した、テレパシーが一般的になりそうした超能力者の捜査官が当たり前に存在する世界で、殺人の完全犯罪をもくろむ男を主人公にしたアルフレッド・ベスター「分解された男」とか、73光年彼方の惑星から追放された、テレパシーで生物の思考を乗っ取る、自分では動くことのできない寄生生物の犯罪者と、そいつが故郷に帰るためのロケットを作ることができるだけの知性と社会的地位をもった大学教授との死闘を描いたフレドリック・ブラウン「73光年の妖怪」とか、人間に寄生するアメーバ状の逃亡犯罪者を、同じくアメーバ状の刑事の宿主になった少年が、20億人の人間の中から探し出す「20億の針」とか、古典的な作品でもいろいろとあるだろう、と。それに、サイバーパンク作品なんて、ほとんどがSFミステリといって過言ではない作品ばかりじゃん。いや、2012年版で100位以内にランクインしたアシモフの「鋼鉄都市」や、85年版で200位内にランクインした「はだかの太陽」が悪い作品だといってるわけではないのだが。ミステリファンも、もうちょっとSFを読んでもいいんじゃないかなあ、と、SFファンくずれは思うわけだ。もっとも、現代では、SFもミステリも結局のところ「ラノベ」に吸収されてしまうわけだから、オールドファンは黙って退場するべきなのかもしれないが。うううう。
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    ~ Comment ~

    Re: miss.keyさん

    横山光輝先生の「マーズ」なんてその点最高ですな。

    人類を滅ぼすためのわけのわからないほど変なところにばかり凝ったシステム(笑)。

    まあ成功したんだから文句は付けないけど(笑)。

    文明が発達する前に滅ぼしちまえばよかったのに

     この手のSFにおいて不思議なのは、地球支配をもくろむ勢力が、なぜ人類がある程度の文明レベルになるまでほっとくのかという事なんですよ。星を継ぐもの(続編)しかり、宇宙戦争しかり。原始人やってるうちに皆殺しにしちまえばいいのに、余裕ぷっこいてるから返り討ちに合うんだよなって何時も納得できないわたくしです。
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