東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
海外ミステリ151位 ちがった空 ギャビン・ライアル
高校のころに古本屋で安かったので、「本番台本」と一緒に買って読んだ。つまらなくはなかったが、とはいえ、ちょっとしっくりしなかったのを覚えている。だが、当時それほどでもないと感じた「もっとも危険なゲーム」が、三十を過ぎて読んだら強烈に面白かった、というのもあるので、本書もいま読んだら面白いのではないか。ハヤカワのポケミス版を入手し、取り組んでみた。訳者は「宇宙英雄ペリー・ローダン」シリーズで有名な松谷健二。ドイツ専門だと思ってたからちょっと意外である。
で、読んでみたわけだが、うーん、ちょっとこれは自分の趣味ではないな、というところだった。主人公のパイロット、ジャック・クレイというやつが、どうも好きになれない。凄腕の名パイロットで、愛機はDCダコタ。かなり昔にライセンスを取り上げられそうになってから、裏稼業ばかりやってきて、そちらの方に通じている、ひとくせもふたくせもある男、という設定はいいのだが、ひとくせもふたくせもありすぎて、一人称なのに何を考えているのか読者にまったく手の内をさらさない、というハメットの小説の主人公みたいなやつなのだ。感情移入をはじめから拒否している男なのである。
そこを取り巻く人間たちも、これまた、ひとくせもふたくせもありすぎるやつらばかりで、「素直な」人間などひとりもいない。こうした登場人物が、それぞれに思案を巡らし、相手を出し抜こうとする、というのがこの小説のキモであり、暴き出される真相は意外なものであるが、その意外さに爽快感が乏しいのだ。
まあライアルの処女作だそうだからしかたのないことかもしれないが、でも、ライアルの小説を読んで期待するのは、わかりやすいほどにわかりやすい、「時代遅れであることを認識しつつ、持てる能力のすべてを使って、愚直に戦う熱い心のスペシャリストにして、どうしようもないロマンチスト」だと思うので、本作のような権謀術数にたけた策士タイプの男は、ちょっと期待と違うよね、というところなのだ。「深夜プラス1」のケインとロヴェル、「もっとも危険なゲーム」のケアリとホーマーといった男たちに比べ、魅力の点でいささか見劣りするような気がする。
まあ、本書のクレイ機長も魅せるところでは魅せてくれるのだが、それにしてもなあ。そういったことを考えると、本書の151位というのは、まあ、無理からぬところかな、というところだ。本書の代わりに「本番台本」が入っていてもよかったのでは、とは思うのだが、たぶん、票が割れたんだろうなあ。
また、メインとなるアクションシーンがほとんど航空機がらみなので、航空機マニアだったら、本書をもっと楽しめるのではないか、と思う。わたしはなんとかDCダコタの姿をぼんやりと思い描くのが精一杯だが、本書で重要な役割を果たすピアッジオP160Bポルトフィノの姿や性能がわかる人だったら、この「ちがった空」は断然おすすめの一冊になるだろう。作者ライアルの偏愛ぶりがちょっとおもしろいと思った。
さて、古本屋で勢いに任せて「本番台本」まで買ってきてしまったが、いつ読もうか。この「東西ミステリーベスト100」のリストには入っていない本なのだが、うむむ。
で、読んでみたわけだが、うーん、ちょっとこれは自分の趣味ではないな、というところだった。主人公のパイロット、ジャック・クレイというやつが、どうも好きになれない。凄腕の名パイロットで、愛機はDCダコタ。かなり昔にライセンスを取り上げられそうになってから、裏稼業ばかりやってきて、そちらの方に通じている、ひとくせもふたくせもある男、という設定はいいのだが、ひとくせもふたくせもありすぎて、一人称なのに何を考えているのか読者にまったく手の内をさらさない、というハメットの小説の主人公みたいなやつなのだ。感情移入をはじめから拒否している男なのである。
そこを取り巻く人間たちも、これまた、ひとくせもふたくせもありすぎるやつらばかりで、「素直な」人間などひとりもいない。こうした登場人物が、それぞれに思案を巡らし、相手を出し抜こうとする、というのがこの小説のキモであり、暴き出される真相は意外なものであるが、その意外さに爽快感が乏しいのだ。
まあライアルの処女作だそうだからしかたのないことかもしれないが、でも、ライアルの小説を読んで期待するのは、わかりやすいほどにわかりやすい、「時代遅れであることを認識しつつ、持てる能力のすべてを使って、愚直に戦う熱い心のスペシャリストにして、どうしようもないロマンチスト」だと思うので、本作のような権謀術数にたけた策士タイプの男は、ちょっと期待と違うよね、というところなのだ。「深夜プラス1」のケインとロヴェル、「もっとも危険なゲーム」のケアリとホーマーといった男たちに比べ、魅力の点でいささか見劣りするような気がする。
まあ、本書のクレイ機長も魅せるところでは魅せてくれるのだが、それにしてもなあ。そういったことを考えると、本書の151位というのは、まあ、無理からぬところかな、というところだ。本書の代わりに「本番台本」が入っていてもよかったのでは、とは思うのだが、たぶん、票が割れたんだろうなあ。
また、メインとなるアクションシーンがほとんど航空機がらみなので、航空機マニアだったら、本書をもっと楽しめるのではないか、と思う。わたしはなんとかDCダコタの姿をぼんやりと思い描くのが精一杯だが、本書で重要な役割を果たすピアッジオP160Bポルトフィノの姿や性能がわかる人だったら、この「ちがった空」は断然おすすめの一冊になるだろう。作者ライアルの偏愛ぶりがちょっとおもしろいと思った。
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