FC2ブログ

    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ155位 帽子から飛び出した死 クレイトン・ロースン

     ←海外ミステリ155位 紅はこべ バロネス・オルツィ →海外ミステリ155位 太陽がいっぱい パトリシア・ハイスミス
     ディクスン・カーと並び称される、不可能犯罪ミステリに作家生命のすべてを賭けた男、クレイトン・ロースンのミステリを最初に読んだのは、小学生のころのあかね書房の児童向けリライト「ゆうれい殺人事件」だった。今にして思うとものすごいマニア養成ギプスであるなあこのあかね書房のラインナップ。そこで小学生は奇術師名探偵グレート・マーリニの名前を知り、ほかの冒険譚も読みたいと思うのであるが、手の届く範囲の図書館にはどこにもないわけだ。当たり前の話であるが。中学高校とこの思いはやみがたく、ついに古本屋でこの「帽子から飛び出した死」を発見したのは高校のころであったか浪人中であったか。いずれにしろそのころ読んで、ああ面白かった、で済ませてしまった。大学を中退したときに本を手放して以来、どこの古本屋でも見かけていない。今回は茨城県立図書館から、探偵の名前が「メルリーニ」になっていることで一部には有名な創元版のハードカバーを取り寄せてもらって再読。どうやら早川文庫版のほうは先に借り手がいたらしい。「カーに比べて小説がヘタクソ」ということで識者の意見が一致しているロースン作品、読むのは20年ぶりだがはたしてどうか。

     というわけで、いつものバーミヤンで、夕食の後にドリンクバーをがぶがぶ飲みながら2時間以上かけて再読したわけであるが(イヤな客である)、思ったことを書くと、クレイトン・ロースン、意外と面白い。次から次へと、仮説のクラッシュアンドビルドと、予想外の事態が起こって、無責任かつ適当に読んでいる分には読者を飽きさせないのである。理由であるが、ロースンがカーのような「天性のストーリーテラー」ではない、というのも一因であるが、それ以上に、ロースンは、「話の都合上、こいつは犯人でありえない/こいつでしか犯人はありえない」という状況になるのがどうしてもイヤだったのだろう。よく指摘される、本作での密室からの脱出方法についての扱いの不手際についても、読者に「名探偵でもないやつがこのような見事な解答を示すからには、きっとこいつは次に犯人によって殺されることになるんだ」という思い込みの裏をかいたつもりなのだろう、作者本人としては。そういうところを見ると、このロースンという作家、たぶんものすごくマジメな人だったんだろうなあ。戦後隆盛を極めていた、ミッキー・スピレーンの「マイク・ハマー」シリーズに代表される通俗ハードボイルドを口を極めてののしっていた、というのもわかるような気がする。

     そう思って読むと、読者からのツッコミに対して万全の受け答えをしよう、と、すべての「余り詰め」を避けようとして打った予防措置のいくつかが、当時としてもアンフェアすれすれ、いま読むと「なんじゃそりゃ」になってしまっていたり、ヴァン・ダインみたいに悪魔学のペダントリーにやたらとこだわってみたりするのも、作者があまりにもまじめに不可能犯罪ミステリに取り組んだがゆえの「ご愛敬」というものであろう。

     あと、初読時以降すっかり忘れていたことであるが、本作、「サプライズエンディング」なのである。ロースン先生、思い切り読者にサービスしているのだ。ほんと、マジメな人だなあ。たぶんそういう人だから、戦後は著作から離れてミステリ雑誌の編集に携わるようになり、1963年には晴れて、ミステリ編集者だったら誰もがうらやむEQMM(エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン)の編集長にもなれたんだろう。信じがたいことに、グレート・マーリニ・シリーズは短編含めて全作が邦訳されているらしい。たぶん、ミステリファンはみんな悪口いってるけど、みんなロースン先生が好きなんだろう。さて、わたしは謎解きにも飽きたし、スティーヴン・キングのモダンホラーでも読むか。
    関連記事
    スポンサーサイト






    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    もくじ  3kaku_s_L.png X氏の日常
    もくじ  3kaku_s_L.png 読書日記
    【海外ミステリ155位 紅はこべ バロネス・オルツィ】へ  【海外ミステリ155位 太陽がいっぱい パトリシア・ハイスミス】へ

    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    いやあ、お互い、「難儀な客」ですなあw それにしてもどうしてファミレスってあんなに居心地がいいんでしょうねえ。

    不可能趣味ということでは、この小説でも当たり前のように、「こんなに防護する必要があるのか」っていうくらい防護された密室内で殺人事件が起きます。いい密室ミステリは、「密室を残していかなければならなかったギリギリの理由」がありますが、本作ではどうか、まあ一読を。

    NoTitle

    大丈夫大丈夫。
    ファミレスで2時間ぐらいいるなんて平気です。
    私は6時間ぐらい医学の勉強でファミレスに
    居座っているときありますから!!
    1時間置きにちょびちょび頼む方式で。

    不可能犯罪か。。。
    確かにそこまでいくと内容が学生向けになりますよね。
    殺された人よりも、むしろ、どうやってこの殺人をしたんだ。
    っていうことに重きが置かれますからね。
    学生時代は確かに金田一少年の事件簿とか大好きでしたね。
    (*´ω`)
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【海外ミステリ155位 紅はこべ バロネス・オルツィ】へ
    • 【海外ミステリ155位 太陽がいっぱい パトリシア・ハイスミス】へ