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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ159位 真夜中の向う側 シドニィ・シェルドン

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     かつてアカデミー出版に大々的に担がれ、「超訳」ブームを巻き起こしたことで悪名高いシドニイ・シェルダンの登場である。本書はアカデミー出版バージョン「真夜中は別の顔」よりも前に早川書房より刊行された完訳版。早川版ではシェルドンと訳されている。まあ、ダだろうがドだろうが、読者としては本が面白ければどうでもいい。土浦市立図書館から借りてきた分厚いハードカバーを、いつものバーミヤンでエビマヨサラダをむさぼり食い、ドリンクバーをガブ飲みしながらひたすら読む。ミステリ界隈からは、「翻訳の破壊」だの「金でアカデミー出版にしっぽを振ったやつ」だの「盛りを過ぎてスカスカな本しか書けなくなってもアメリカのベストセラー作家であることをアカデミー出版に強要された気の毒な作家」だの毀誉褒貶はなはだしいが、果たして21世紀の今読んで面白いだろうか。今回が初読。

     で、読んでみたわけだが、ミスディレクションという言葉があるのを、ミステリファンはよく知っているだろう。小説の文章において読者を誤誘導するテクニックである。本書は、まさにそのお手本のようなものだ。鼻くそをほじりながら読んでいたら、結末でとんでもないどんでん返しを食らい、びっくりしてはね起きるという小説で、あわてて読み返すと、作者に第一ページ目からすでにだましにかけられていたことに気がつく代物。病膏肓のミステリファンほど引っかかりやすい、まさに一本勝ちを狙った、マニア殺しの大技である。

     とはいえ、北村薫先生がブランド「はなれわざ」の解説で書いていた文章を援用すれば、「背負い投げの快感よりは肩すかしの不満が残る」タイプの作品なため、「やり場のない思いをどこにぶつければいいかわからない」という読後感を覚えるのも事実。しかし、作者が、その肩すかしをやるために丁寧に丁寧に積み上げた礎石の量は、敬意を払うにふさわしいだろう。そのうえで、ここまで芸術的な肩すかしをやられたら、もう、やられたほうはにやにや笑うしかないではないか。作者はきちんと、病膏肓のミステリファンではない人にも、普通に読んで感動するようなストーリーの盛り上げ方をしているので、普通の読者も安心である。その点は、さすがに1970年代のベストセラー作家の名に恥じないといえよう。

     で、早川のハードカバーを読んでいて思ったことをもういくつか。カバーに使われている写真が、キャサリン役のスーザン・サランドンばかりなのは参った。いや、スーザン・サランドンも重要な役だが、本作品の主役は、ノエル役のマリー・フランス・ピジェじゃないのか。まあ、たしかに、スーザン・サランドンの写真を載せたほうが売れるよ。売れると思うけど、うーん、といわざるを得ない選択である。

     あと、シドニイ・シェルドン、本作での大技トリックだが、絶対、初めから予定して書いていたのではないと思う。この大河小説のようなメロドラマを書いていて、途中で思いつき、面白いからそれでやっちゃえ、みたいな感じで修正を加えたのではないだろうか。完全にダマされたからいうのではないけど。

     で、この小説を読んだ後で、シェルドンのほかの小説を読みたくなるかというと、シェルダン名義も含めてだが、それほど読みたいとも思わないのも事実。シェルドン、基本的にメロドラマ作家で、ミステリ作家ではないのだろう。この上下二段組み390ページの作品を読んで、正直、疲れきっている自分がいる。波乱万丈の運命ものは、もう、しばらくはいいや!
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    ~ Comment ~

    Re: miss.keyさん

    名誉のためにいっときますけど、ロン・ハバードの百万倍面白いですよこの本。

    そういえばそう人もいましたなぁ

    一時、雑誌の裏表紙やらをやたらと飾っていましたが最近見ませんねぇ。良作は流行り廃りが無いと思っているわたくしとしましては、まあ、そういう評価です(笑
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