東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
海外ミステリ167位 堕ちる天使 W・ヒョーツバーグ
これは高校生のころに古本屋の百均棚で買った。当時ハードボイルドと冒険小説にいかれていたため、ちょっとこの本に対しては妙なバイアスを感じていた。要するに、「オカルトの要素を入れるなんて、ハードボイルドをバカにしているんじゃないか」と思えてならなかったのである。で、読んでみて、まっとうなハードボイルド小説であることに驚愕し、このハードボイルド小説かつオカルト小説、という組み合わせでなければ不可能な、アクロバティックな真相に、さらに驚愕したのを覚えている。それ以来読んでないが、今の目から見るとはたしてどうか。二十五年ぶりに再読。
で、読んでみたわけであるが、なんというか、良くも悪くも、「オタク」が書いた小説なのでは、という読後感だった。きちんとした定型にのっとったハードボイルド小説であるのだが、あまりにも定型にのっとりすぎているのだ。読んでて思うことが、「あんたも好きねえ」である。考証は微に入り細を穿ち、いささか行きすぎの気がある。でもそこらへんはどうしても譲れないぞ、という作者のこだわりを如実に感じる。作中で重要な役割を示すヴードゥー教についても、その神学をかなり調べた形跡があり、まあ、好きなんでしょうな、ヒョーツバーグ先生。
ハードボイルド小説の常として、猟奇殺人もつきものになるのだが、これも、オカルトを反映してか、まあ、凝りに凝った殺し方を見せてくれる。しかもそれが、事件の解決の道筋につながる、というのがまたよろしい。きっちりとミステリしているのだ。ほんとに好きなんだなあ、ミステリ。「あんたも好きねえ」といわざるを得ない。
ストーリーテリングも快調、登場人物も怪しげで、実に心地よく楽しい時間を過ごさせてくれた作品であるが、いまの時代で164位というのは妥当か、というと、ちょっと難しいようにも思う。なぜなら、ミステリ的にも、オカルト的にも、この作品のはるか上を行くオタク小説作家集団が存在するからだ。その名を、マイケル・スレイド。この集団ペンネームを使用するカナダ人三人こそ、そのオカルトについての該博な知識と、ミステリ的なサプライズエンディングへの徹底的なこだわりと、そしてインパクトではだれにも負けない恐るべき変態性とを併せ持った、オカルトバイオレンスミステリのマイルストーンなのである。あの悪名高き「グール」を最初に読んだとき、わたしは、「時代は動いた」と感じたものだ。それはあの、さらに悪名高き「髑髏島の惨劇」を読んだときにさらに強固なものになった。
いま、この「堕ちる天使」を読んだとして、誰しもが抱くであろう読後感は、「地味なモダンホラーだなあ」あたりに落ち着くのではないだろうか。そういった意味で、良くも悪くも1978年度作品なのである。スティーヴン・キングが切り開いた地平を、マイケル・スレイドとディーン・R・クーンツがロードローラーのように通り過ぎた後には、オリジナリティのある作家はクライヴ・バーカーくらいしか残らないのだ、ということを、逆説的に、痛烈に思い知らせてくれる作品であるといえよう。
あと、再読して思ったが、序盤から、真相を含みのある言葉で語り、ひとつひとつ伏線を張っていく手並みを見るのは楽しかった。本書とMWAを争ったデアンドリアの「視聴率の殺人」も悪くないけど、読むなら、本書「堕ちる天使」のほうが面白いのではないかな?
で、読んでみたわけであるが、なんというか、良くも悪くも、「オタク」が書いた小説なのでは、という読後感だった。きちんとした定型にのっとったハードボイルド小説であるのだが、あまりにも定型にのっとりすぎているのだ。読んでて思うことが、「あんたも好きねえ」である。考証は微に入り細を穿ち、いささか行きすぎの気がある。でもそこらへんはどうしても譲れないぞ、という作者のこだわりを如実に感じる。作中で重要な役割を示すヴードゥー教についても、その神学をかなり調べた形跡があり、まあ、好きなんでしょうな、ヒョーツバーグ先生。
ハードボイルド小説の常として、猟奇殺人もつきものになるのだが、これも、オカルトを反映してか、まあ、凝りに凝った殺し方を見せてくれる。しかもそれが、事件の解決の道筋につながる、というのがまたよろしい。きっちりとミステリしているのだ。ほんとに好きなんだなあ、ミステリ。「あんたも好きねえ」といわざるを得ない。
ストーリーテリングも快調、登場人物も怪しげで、実に心地よく楽しい時間を過ごさせてくれた作品であるが、いまの時代で164位というのは妥当か、というと、ちょっと難しいようにも思う。なぜなら、ミステリ的にも、オカルト的にも、この作品のはるか上を行くオタク小説作家集団が存在するからだ。その名を、マイケル・スレイド。この集団ペンネームを使用するカナダ人三人こそ、そのオカルトについての該博な知識と、ミステリ的なサプライズエンディングへの徹底的なこだわりと、そしてインパクトではだれにも負けない恐るべき変態性とを併せ持った、オカルトバイオレンスミステリのマイルストーンなのである。あの悪名高き「グール」を最初に読んだとき、わたしは、「時代は動いた」と感じたものだ。それはあの、さらに悪名高き「髑髏島の惨劇」を読んだときにさらに強固なものになった。
いま、この「堕ちる天使」を読んだとして、誰しもが抱くであろう読後感は、「地味なモダンホラーだなあ」あたりに落ち着くのではないだろうか。そういった意味で、良くも悪くも1978年度作品なのである。スティーヴン・キングが切り開いた地平を、マイケル・スレイドとディーン・R・クーンツがロードローラーのように通り過ぎた後には、オリジナリティのある作家はクライヴ・バーカーくらいしか残らないのだ、ということを、逆説的に、痛烈に思い知らせてくれる作品であるといえよう。
あと、再読して思ったが、序盤から、真相を含みのある言葉で語り、ひとつひとつ伏線を張っていく手並みを見るのは楽しかった。本書とMWAを争ったデアンドリアの「視聴率の殺人」も悪くないけど、読むなら、本書「堕ちる天使」のほうが面白いのではないかな?
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