「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 3-2
「ようこそ。初めてのかたですね。よくいらっしゃいました!」
わたしはぎくしゃくと礼を返した。
「あ、ああ、どうも」
そういって、ふと首をひねった。
「あの……わたしが、ここに何をしに来たか、訊ねないんですか?」
受付嬢は、さらに顔をにこやかにして答えた。
「お客様、ここは心理学研究所ですよ。お客様がどうしてここにいらしたのかくらい、身振りや行動から、一目瞭然というものです」
「はあ……」
それが本当ならわたしもぜひその技術を学びたいものだ。半分本気でそう思った。
「わたしにもできますか?」
「もちろんですとも。当研究所で、訓練を積めば、誰にでもできるようになります」
「ははあ」
わたしは内心、感嘆した。なにもしないうちから相手がなにをしようとしているのかわかる、それも誰にでも。新興宗教としては、これはものすごい売りだろう。「売り」という言葉を使ってよいのかどうかには議論の余地があるかも知れないが。
受付嬢は、微笑んだままで尋ねてきた。
「さっきも申しましたように、お客様がなんのために来たかはだいたいはわかりますが、一応、ご用件をうかがっておきましょう。どうされましたか?」
わたしは、自分のやることを思い出した。
「あっ、はい。この研究所のことをネットで見て、いろいろと勉強したいと思いまして……」
「やはりそうでしたか! ありがとうございます!」
受付嬢のあまりのにこやかさかげんを見ていると、騙しているのがとてつもなく辛くなってきた。
わたしは、所在なげにきょろきょろと辺りを見回した。
「あのう……」
わたしは受付嬢にいった。
「なにぶん、なにもわからないでここへ来たもので、よろしければ、どなたかに中を案内していただくわけにはいかないでしょうか。それとも、ここへはアポイントメントを取ってから来たほうがよかったですか?」
アポを取らずにここに来たのは、直接ぶつかったときの反応を調べるためだった。相手がどういうことを考えているのか知るのに、アポなし直撃取材はかなりの効果がある。例えば、マイケル・ムーア監督の映画なんかがそのいい例だ。
受付嬢は、わたしのムーア監督並みの無礼な要求にも動じた様子はまったくなかった。
「見学ですか? かまいませんよ。今、係のものを呼びますので、しばらくここでお待ちください」
受付嬢はボタンを押した。
わたしはぎくしゃくと礼を返した。
「あ、ああ、どうも」
そういって、ふと首をひねった。
「あの……わたしが、ここに何をしに来たか、訊ねないんですか?」
受付嬢は、さらに顔をにこやかにして答えた。
「お客様、ここは心理学研究所ですよ。お客様がどうしてここにいらしたのかくらい、身振りや行動から、一目瞭然というものです」
「はあ……」
それが本当ならわたしもぜひその技術を学びたいものだ。半分本気でそう思った。
「わたしにもできますか?」
「もちろんですとも。当研究所で、訓練を積めば、誰にでもできるようになります」
「ははあ」
わたしは内心、感嘆した。なにもしないうちから相手がなにをしようとしているのかわかる、それも誰にでも。新興宗教としては、これはものすごい売りだろう。「売り」という言葉を使ってよいのかどうかには議論の余地があるかも知れないが。
受付嬢は、微笑んだままで尋ねてきた。
「さっきも申しましたように、お客様がなんのために来たかはだいたいはわかりますが、一応、ご用件をうかがっておきましょう。どうされましたか?」
わたしは、自分のやることを思い出した。
「あっ、はい。この研究所のことをネットで見て、いろいろと勉強したいと思いまして……」
「やはりそうでしたか! ありがとうございます!」
受付嬢のあまりのにこやかさかげんを見ていると、騙しているのがとてつもなく辛くなってきた。
わたしは、所在なげにきょろきょろと辺りを見回した。
「あのう……」
わたしは受付嬢にいった。
「なにぶん、なにもわからないでここへ来たもので、よろしければ、どなたかに中を案内していただくわけにはいかないでしょうか。それとも、ここへはアポイントメントを取ってから来たほうがよかったですか?」
アポを取らずにここに来たのは、直接ぶつかったときの反応を調べるためだった。相手がどういうことを考えているのか知るのに、アポなし直撃取材はかなりの効果がある。例えば、マイケル・ムーア監督の映画なんかがそのいい例だ。
受付嬢は、わたしのムーア監督並みの無礼な要求にも動じた様子はまったくなかった。
「見学ですか? かまいませんよ。今、係のものを呼びますので、しばらくここでお待ちください」
受付嬢はボタンを押した。
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~ Comment ~
>森野海月さん
気合いを入れて書いております! がんばります!
小林信彦先生は、昔「オヨヨ大統領」シリーズを夢中になって読んだ覚えがあります。
「地獄の読書録」は最良のブックガイドです。
最近、別なほうのブログからアクセスされていたようですが、なにかあったのですか? わたしの勘違いならすみませんけど。
気合いを入れて書いております! がんばります!
小林信彦先生は、昔「オヨヨ大統領」シリーズを夢中になって読んだ覚えがあります。
「地獄の読書録」は最良のブックガイドです。
最近、別なほうのブログからアクセスされていたようですが、なにかあったのですか? わたしの勘違いならすみませんけど。
こんばんは
新たなシリーズが始まったのですね。面白い!
で、ジャンルは幾分違うと思うのですが、
読み進んでいくうちに、小林信彦的雰囲気を感じております。
何処がと言われても説明し難いのですが……(^^;
で、流された小説を徐々に再掲載し始めました。
ああー心の津波って、突如、ドッカーンとやってくるので、
対処の仕様が無くて、自分でも恐ろしい限りでございますぅ~!!!
といいながらも、このザワザワが小説を書かせるのですけどね。およよ。
で、ジャンルは幾分違うと思うのですが、
読み進んでいくうちに、小林信彦的雰囲気を感じております。
何処がと言われても説明し難いのですが……(^^;
で、流された小説を徐々に再掲載し始めました。
ああー心の津波って、突如、ドッカーンとやってくるので、
対処の仕様が無くて、自分でも恐ろしい限りでございますぅ~!!!
といいながらも、このザワザワが小説を書かせるのですけどね。およよ。
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記憶があやふやですが、小説家の浅田次郎先生にいわせると世の中の90パーセントは基本的に善人であるそうであります。
残りの10パーセントを小説のどこに紛れ込ませるかが勝負どころであります。
はたしてうまくできるかどうか手並みをごろうじろ。