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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ168位 大統領誘拐の謎を追え クライブ・カッスラー

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     小学校六年生の時に、父が読み終えたのをそのまま何の気なしに読んだ。当時、わたしはソノラマ文庫の「機動戦士ガンダム」と「クラッシャージョウ」に首までどっぷりつかっており、世の中の小説本が面白くて面白くてしかたなくなっていた。で、まあ、アニメに比べてとんでもないエロシーンばかりだった「ガンダム」はおいといて、冒険SFをブラッシュアップしたことでは当時最大の貢献をした高千穂遥の「クラッシャージョウ」は、アイデア・スケール・ギミック・キャラクターと実にツボを押さえた痛快なシリーズであった。そんなものを読んでいたから、この「大統領誘拐の謎を追え」は、タイトルからして、ものすごく貧弱に思えた。現代社会で、アメリカ大統領が誘拐されるだけの話なんだろうな、スケールが小さいな、でもまあ読んでみるか、と。物を知らなかったとしかいいようがない。とにかく、これが人生初の「国際冒険小説」であり、人生初の「クライブ・カッスラー」であった。

     などと当時のことを思い出しながら再読。アメリカが誇るほら吹きおじさん、クライブ・カッスラーの真骨頂がもろに出ている作品である。当時最先端のテクノロジーを思うさま動員して、もう、カッスラー先生、大ぼらを吹くわ吹くわ。わずか一滴の溶液、ひと呼吸のガスでさえ、触れたものをことごとく死に追いやる恐るべき兵器、神経ガス溶液Sと、それを積んで行方知れずとなった幽霊貨物船「パイロットタウン号」が平和なアラスカの海に現れた。なんとかして早く対策を取らなければ北太平洋は死の海に。さあ出番です、国立海洋海中機関(NUMA)で最もタフな腕利きにして、あのタイタニックを引き揚げた緑色の瞳の男「ダーク・ピット」! この窮境を救えるのは君だけだ! という大ネタが、「小説の前半20パーセント」あたりで収束してしまう「ジャブ」のようなものだなんて、普通は想像しない。全編このノリなのだ。黒幕は同情の余地のかけらもない、悪徳海運会社ブーゲンビル海運と、その後ろで陰謀を企む、悪の帝国「ソ連」である。そんなやつらがアメリカ大統領に狙いをつけてなにをやるのか、というと、もう、カッスラー先生の大ぼら、絶好調。詳細は伏せるが、ドカドカ爆発が起きてバタバタ人が死んで、誇り高き南部連合の旗が翩翻とひるがえり、オルガン奏者は高らかに南部連合国歌「デキシー」を奏でながら悪の首魁に向かって突撃していくのだ。この説明を読めば読むほど混乱するだろうがそういう話なんだからしかたがないだろう!

     小学六年生の頃の、「世の中にこういうひたすらに面白いだけの話があってもいいんだ」というカルチャーショックを、そのままヴィヴィッドに思い出しながら、今回もひたすら楽しく読んでしまった。そして進んだ中高一貫校の図書館には、ありましたねえ、未だ未読のカッスラーが、「氷山を狙え」「タイタニックを引き揚げろ」「QD弾頭を回収せよ」「マンハッタン特急を探せ」……ともうずらずらと。かくして何も知らない中学生は、無敵のヒーロー、ダーク・ピットとともに、氷山を狙ってタイタニックを引き揚げて、QD弾頭を回収してマンハッタン特急まで探してしまうのであった。そのころには、内藤陳の名ガイドブック中の名ガイドブックである「読まずに死ねるか!」を片手に、本屋という本屋を冒険小説を求めてうろうろするというお決まりのコースに。今になってつくづく思うが、やたらと「国際冒険小説」を読んで、世界には様々な考え方の人間や集団がおり、賛成できる思想もあればできない思想もあって、それがごちゃごちゃに組み合わさっているのが出口の見えない世界情勢である、ということの本質を学べたのは自分にとって非常に大きかったと思う。「かわぐちかいじ史観」と「ゴルゴ13史観」だけだと人間はバカになる。同じバカになるならせめて多種多様な面白い本を読んでバカになろうではないか。だから読もうぜ冒険小説。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    わたしがクラッシャージョウを読んでいたころは、まだダーティペアは2巻が出るか出ないかという時でしたからねえ。

    「銀河系最後の秘宝」なんかえらい影響を受けて。それなもんで、「悪霊都市ククル」でもういいや、と。

    ダーティペアも、「大脱走」まではつきあったけど、同じく「もういいや」と(笑) はやく「ダーティペアの大団円」が出ないかな、くらいで(笑)

    冒険小説、同じアイルランド問題を取り上げていても、ジャック・ヒギンズとトム・クランシーではまったく違いますからねえ。そこにSFを重点的に読む生活が加わると、もう世の中をひとつの視点で見るのが困難になってきますな。

    だからもっと翻訳ものを読んでほしいというのはあります。でも読みづらいか……もともとの文章が日本語とはかなり味がちがう上に、ターゲットの客層が年配の人だろうからそうなっちゃうのはあるかも……。

    NoTitle

    私は「クラッシャージョウ」とはあまりご縁がなくて、「ダーティペア」のほうを繰り返し読んでおりました(笑)
    冒険小説の分野はあまり読んでいないのだなと痛感いたします。

    世の中には様々な考え方があって、世界をはかるものさしはひとつではないのだ……というのは海外ものを読んでいると身につきやすいのかもしれないですね。

    違う常識、違う価値観に触れられるのが読書のいいところでしょうし、日本人作家の作品もいいですが海外作品ももっと受け入れられてほしいなあと思います。
    翻訳物は読みづらいから苦手っていう人、多いのですよね(^^;
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