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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ193位 検察側の証人 アガサ・クリスティー

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     小説版と戯曲版のふたつがあるが、どう考えてもここで票が入れられているのは「戯曲版」のほうだろう、と思ったので戯曲版を読んだ。よく考えたら収録短編集「死の猟犬」が図書館にあるんだから、もととなった短編小説版も読んでもよかったんだろうが、でもどちらかといえば、クリスティとしては「小ネタ」の部類に入るんだろうからなあ原作短編。まあいちおうこちらの短編版も読むか。自分の日本語がおかしくなっているが無視して読む!

     ということで短編版も読んでみたが、うん、この短編は、クリスティーの短編ではCクラス、というところだろう。そこから妄想をたくましくするのだが、たぶん、この短編を書き上げてからしばらくして、クリスティーは「さらにもうひとひねりした結末」のアイデアを思いついたのだろう。そのアイデアのすばらしさに、クリスティーは切歯したに違いない。扼腕したに違いない。どうして自分はあのときこのネタに考えが及ばなかったのか、と、おのれを責めに責めたに違いない。なにしろそのネタはこの「検察側の証人」という作品によってのみ最大限の効果を上げるものであり、なおかつ、「検察側の証人」という短編は、リライトするにも長編化が困難な代物なのである。クリスティーにとっても読者にとっても幸運なことに、世の中にはまだ「戯曲化」という手段があった。クリスティーはラストシーンを改変し、その結果として、この超Aクラスのサプライズ・エンディングを持ったサスペンスフルな舞台劇が誕生したのではないか。以上妄想終わり。

     そんなことを考えてしまうほど、戯曲版のエンディングはすばらしい。劇的で、悲愴で、そして何よりも美しいのだ。批評家からの絶賛を浴びてロングランしたのも当然といえるだろう。あいにくと、舞台劇は見たことがないが、原作の戯曲に極力忠実にビリー・ワイルダーが脚色し監督した、マレーネ・ディートリッヒ主演の映画「情婦」は実にいい映画だった。モノクロだったのはもしかしたらヒロインを演じたディートリッヒさんが「×××(ファンに殴られるので伏字)」だったことを隠すためだったりして。1901年生まれというのが本当だとしたら当時はなんと「××歳(ファンに殴られるので伏字)」だった計算になるからなあ。由美かおるなんかふっ飛ばして、日本でいえば舟木一夫レベルか。保積ペペや窪田正孝も真っ青である。(これ以上書くと本気でファンに殴られるのでよすことにする)

     また、この映画「情婦」において、タイロン・パワー演じる殺人容疑者の若者の弁護を担当する凄腕のベテラン刑事弁護士ウィルフリッド・ロバーツ卿を演じたチャールズ・ロートンは、独特なオーバーアクションで、カーター・ディクスンの名探偵であるヘンリ・メリヴェール卿かとも見まごうめっぽう楽しい頑固なデブの老人を演じていたが、なにっ、今調べてみると、チャールズ・ロートン、マレーネ・ディートリッヒと2歳しか年が違わないじゃないか。げにおそるべきは役者というものであるなあ。

     この映画の「情婦」という邦訳タイトルに激怒していたのがミステリ作家の小泉喜美子。ミステリについての随筆で有名な松田道弘も同様のことを書いていた。だが、いまの目で見れば、映画会社のいいぶんもわからんではない。原題通りに「検察側の証人」では客が入らないことは火を見るよりも明らかである。だが、急逝した小泉喜美子はまだ幸せだったろう。いまの日本でこの映画の邦題を映画会社に作らせたら、「ウィットネス」とかさらにわけのわからんタイトルになっていた公算が高いと思うぞ。素晴らしき日本映画界に乾杯。嗚呼。
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    ~ Comment ~

    Re: miss.keyさん

    さらまわしは中学時代の友人がやたらと愛好していたなあ。

    30年して再開した直後、やつは酒の飲みすぎで急逝した。さらまわしよりも早く死ぬやつがあるか、と思ったです。

    検察側の証人

    恋は何時でも必ず 独法師の影踏みゲーム
    足元にあるのに追いつけない
    追えば追うほどきっと 取り残されてゆく
    気がつけば いつも夕暮れ

    それ、さらまわしやんけー

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    Re: 椿さん

    よく言う「この結末は誰にも話さないでください」ってやつです(^^)

    戯曲だからお芝居を見るのがいいでしょうね。劇場にはかかってないけど、ビリー・ワイルダー監督が持てる技量のすべてを使って撮った「情婦」という映画があるので、それを見ることをお勧めします。三食抜いても、ぜひ!(^^)

    NoTitle

    あああー私が読んでいないやつーーー!
    短編集のほうは持っていたはずなので、原作小説は読んでいるはずなんですが印象に残っていない……。

    戯曲版はそんなに印象が違うのですか。それは読まないと!
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