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    映画の感想

    「穴」見た

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     「冒険者たち」に続いて、フランスの犯罪小説作家ジョゼ・ジョバンニ原作のフランス映画である。頭から終わりまで陽光さんさんと降り注ぐ世界での、宝探しからのギャング映画であった「冒険者たち」とは違い、本作は重苦しいモノクロームの映像の中、圧倒的質量感を持つラ・サンテ刑務所からの脱獄をはかる五人の服役囚を描いたストレートな脱獄映画である。

     相互リンクしてくださっているmiriさんが、二の腕に力こぶしまで作っているかのような熱烈プッシュの感想を書いておられたので、見る前からわたしの心は期待でふくらみまくっていた。で、今日ようやく見たわけであるが……。

     これはすごい。脱獄ものといえば、一に「大脱走」であり、二に「アルカトラズからの脱出」であったわけであるが、あんなもん砂糖で煮しめたハリウッド映画に過ぎない、ということが、この映画を見ればよくわかる。刑務所はいるだけでまともな神経を削り取っていくコンクリートと鉄のバケモノであり、脱獄とは甘さも妥協もその存在をいっさい許されない、追いつめられた男たちによる生命がけの闘いなのだ。

     この映画は、ワンシーンを除けば、徹底して話が「刑務所の中」だけで進む、一種の密室劇である。その試みは見事に成功している。この映画の頭から終わりまで、見ている人間はいっときの精神的安らぎも得られない。初めから終わりまで、徹底して極限状態なのだ。そんなストレスにさらされていると、房に空いた穴が、唯一の希望であり可能性であると、開始から十五分もすると疑うわけにはいかなくなってくるのである。

     また、刑務所の外を丹念に描き込めば、どうしても話は、仲間同士の反目し合いと裏切り合いになり、骨肉相食むドロドロの物語になっていただろう。この映画はあえて外をカットすることにより、そうした人間の卑小性をカットすることにも成功している。観客はギリシア古典劇のような、ストレスの中でのスリルとサスペンスを味わうことができるのだ。

     ジョゼ・ジョバンニによる原作小説は「体験記」だそうで、死刑囚であったジョバンニは自らこの脱獄計画に加わっていたそうである。ハヤカワポケミスの和訳「穴」も読んだが、それももまた、スラングが飛び交う中で男たちが絶望的な戦いをする、濃厚で濃密な傑作だった。何度となく再版されているので入手も比較的容易かと思われる。一読をお勧めしたい。
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    ~ Comment ~

    Re: miriさん

    映画紹介してくれてありがとうございました。こんな映画見られて眼福の極みです。

    腰を落ち着けて、「トゥルーマン・ショー」とかもじっくり見てみたいと思います!

    見られて良かったです☆

    >この映画はあえて外をカットすることにより、そうした人間の卑小性をカットすることにも成功している。

    おっしゃる通りですね~そのことに気付く間もなかったです☆

    >観客はギリシア古典劇のような、ストレスの中でのスリルとサスペンスを味わうことができるのだ。

    あまり経験しないスピードさ(そんな言葉ありますか?)でしたね!
    面白い映画でした!


    .
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