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    映画の感想

    「トゥルーマン・ショー」見る

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     恐ろしい映画であるが、同時に「恐ろしい『ハリウッド映画』」でしかないという事実を、わたしはコタツに入ってウーロン茶を飲み飲み、結末の圧倒的な盛り上がりを感じつつ噛みしめている。ここに描かれるのは、「『感動ドラマ』の押し売りを感動ドラマにされたくないと考える男のたったおひとりの闘いをも『感動ドラマ』として消費する過程をさらに感動ドラマとして消費し、そのことをさらに感動ドラマとして……」という無限の入れ子構造を持つ合わせ鏡の最初の2枚である。

     結末において、あのプロデューサーが敗北したように見えるが、そんなことは全然ないのであって、プロデューサーは即座に「第二段」を作るか、「暴露本」を書くか、これが一番ありそうなのだが、この結末でのトゥルーマンとの対決をも含めたドラマ作品(要するにこの映画だ!)を作るかして、延々と映画/テレビ業界の第一人者として君臨し続けるだろう。ぶっちゃけた話、現代のテレビドラマ業界はそこまで行ってしまっているのである。この「トゥルーマン・ショー」で描かれているのは、作中の「トゥルーマン・ショー」という商品自体が自己複製と自己再生を繰り返す、たとえば「スター・ウォーズ」であったり(ディズニーが最新作の制作に取り掛かったそうですな……)、我国の誇る「ガンダム」であったり(鉄血のオルフェンズのあとにまたなんか続くんですって……?)のごときキメラ的な何物かになってしまった、ということなのだ。まさにエンドレス。「外部」などというものはどこにも存在しないのだ。

     フランス現代思想のえらい人の誰かに、「外部は内部である」というテーゼがあって、それは言ってしまえば「外部は内部だ、とか、外部は内部ではない、とかいう議論ができるようなレベルではない、という意味で、外部は内部だとしか言いようがないのだ」、ということだそうだが、まさにこの映画はそれだ。なぜなら、あなた、あのプロデューサーを「外部」から見ているではないですか。それがあの映画の「内部」として「外部」から見られていない、とどうやって証明します? 証明できたとして、そこで定立できたはずの「外部」が、この映画の「内部」として……以下同様。「だけど我々は現に映画を見ているわけで、誰かから見られているわけじゃないか」おっしゃる通りであるが、そこを考え始めるとわけがわからなくなるのでやめたほうがよい。

     そういう視点から考えると、ひしひしと感じられるのが、筒井康隆の初期長編「48億の妄想」の、タイムスリップでもしてきたのかと思えるほどの現代性だ。そこでは、すべての日本人が「アイ」と呼ばれる、24時間動き続ける自撮りテレビカメラを持っていて、互いにその映像を、あちこちにあるテレビ画面の中で見ることによって、日常の行住坐臥を、テレビ番組の位置登場人物として演じながら消費しつつ暮らすのだ。早い話が、日本の全国民がユーチューバーになって、辛辣なコメントを入れ合いながら過ごす、とでもいうべきか。そこでは、演じるものと消費するものと番組を作成するものが混然一体となり、まさに「外部は内部である、とか、外部は内部でない、とかいう議論ができないようなレベルで、外部は内部である」という状況が成立している。

     演じるものと消費するものと番組を作成するものの混然一体を如実に体現しているのが、シンボル的にはアメリカ大統領のドナルド・トランプであろう。もう、彼の中では、それを分割するのは不可能に近くなっているのではなかろうか。政治家としてはあるまじき態度ではあるが、彼のような人物を容認しなければ民主主義がやっていけない、というところに、現代のわけのわからなさがある。

     たぶん、われわれはこの「トゥルーマン・ショー」が寓話であるうちに状態をストップさせるべきだったのかもしれない。だが、「べき」が即ち即可能であるか、というとそんなことがあるわけないので、われわれは停止させようのない高度情報化のスタンピードを、行き着くところまで見守るしかないのかもしれない。行き着くところまで行き着いたその時、人類は生き残っているのか。

     ……知らんがな。
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    ~ Comment ~

    Re: miriさん

    もっとやりそうなのは、脱出してきたトゥルーマンを捕らえてあのハーバーの病院へ送りこみ「どうしたの、ひどくうなされてたわよ」「夢を見ていたのね」……。どうしようもねえなああの世界。個人がなにやっても無力にすぎない気がしてきた。

    この映画にさらにVRが加われば、もう人間、行くところまで行っちゃったな、と。愚かですな人類……。

    Re: 宵乃さん

    SFでこういう「何が現実なのかがわからなくなる」ことをやらせたらうまかったのがP・K・ディックですが、映画ではそのいいところが出ませんなあなかなか。

    「ブレードランナー」も「何が人間で、何が現実なのか」を問うという意味では中途半端でしたし……。

    「ユービック」の企画が流れたのが残念。

    コメントを有難うございました☆

    見てからまだ1年も経っていないけど、好きではないという事もあってか、
    もうすでに、あまり覚えていない作品なんです(笑)。

    >無限の入れ子構造を持つ合わせ鏡の最初の2枚である。

    ああ、たしかにそうですね☆

    >この結末でのトゥルーマンとの対決をも含めたドラマ作品(要するにこの映画だ!)を作るかして、延々と映画/テレビ業界の第一人者として君臨し続けるだろう。

    そうですね、そういう映画を見せられてしまったわけです(笑)。

    >「だけど我々は現に映画を見ているわけで、誰かから見られているわけじゃないか」おっしゃる通りであるが、そこを考え始めるとわけがわからなくなるのでやめたほうがよい。

    わけわからなくなりました(笑)。

    >日本の全国民がユーチューバーになって、辛辣なコメントを入れ合いながら過ごす、とでもいうべきか。

    筒井先生ってすごいですネ♪

    >そこでは、演じるものと消費するものと番組を作成するものが混然一体となり、まさに「外部は内部である、とか、外部は内部でない、とかいう議論ができないようなレベルで、外部は内部である」という状況が成立している。

    わかりやすいです、ここ。

    >たぶん、われわれはこの「トゥルーマン・ショー」が寓話であるうちに状態をストップさせるべきだったのかもしれない。
    >行き着くところまで行き着いたその時、人類は生き残っているのか。 ……知らんがな。

    過去は変えられないけど、これからもどうにもならないのかもしれない・・・
    怖いですね、ホントに!


    .

    たしかに入れ子構造でした

    つい、自分を見てる誰かがいるんじゃないかと不安になりますよね。この作品の少し後に「マネーモンスター」という作品を見たのですが、これも同じようなテーマでなかなか面白かったです。

    >プロデューサーは即座に~(要するにこの映画だ!)を作るかして、延々と映画/テレビ業界の第一人者として君臨し続けるだろう。

    やりそうで怖い(汗)
    あの映画自体があのプロデューサーの作品って解釈は面白いですね。新たな見方に気付かせてくださってありがとうございます。

    >この「トゥルーマン・ショー」が寓話であるうちに状態をストップさせるべきだった

    ですね~。人類はホント色んな方面でストップさせるべきものをストップできてなくて、もうすぐ詰みそうな予感しかしません…。
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