映画の感想
「銀河鉄道999」見た
「さよなら銀河鉄道999」は見ていたが、前作に当たるこの作品は初見である。
で、見てみたが、映画としての面白さでは「さよなら」よりもこっちの方が断然面白い。やっぱり、松本零士が一番のっている時の999の面白エピソードを再編集したんだから当然ではあるな。機械伯爵のエピソードとか。
そういう意味で、どーでもいーことを書く。
昔から、松本御大の「機械人類vs血の通った人間」という図式に納得できん物を感じていたのだが、つきるところ、
「人間、どんな体になろうが、『煩悩』が生じるのを止めることはできない」のだ、という結論に達した。
機械の体になったら生身の体がうらやましくなり、生身の体なら機械がうらやましくなり、それはもう、動物になろうが、情報になろうが、いっそ飛び越して「神」になろうが、永遠に「隣の芝生は青く」、「隣人は自分が捨てた大事なものを見せびらかすように享受している」ように見えるのである。
哲郎たちの方に理があるように見えるのは、たまたま人間というものが動物として生まれてしまったがゆえであり、もし機械に生まれていたら、機械の体に郷愁を覚え、「機械らしい」生き方を至上のものと考えるだろう。まったく、三千年も前にギリシアの哲人が洞察していたとおりである。
で、『煩悩』が原因である以上、機械人類が現生人類をいじめようが、哲郎が惑星メーテルをぶっ壊そうが、単にヘゲモニーが移動するだけで、人間が、というより、『意思』というものが一度存在してからの永遠の不公平感と軋轢と闘争は避けられないのだ。同じものを平井和正は『幻魔』と呼び、大戦争やって『光のネットワーク』でねじ伏せようとしたが、そんなもんで止められるわけないじゃないか、『煩悩』なんだから。
キリスト教は、『神』というひとつの崇高な『善』としての人格神によりその『煩悩』を救済しようとした。対して、仏教は、その『煩悩』を遠ざけ『悟り』によって昇華しようとした。松本零士のマンガは、その『神』も『悟り』もフィクションでありファンタジーであることを伝えている。
じゃあどうすればいいのか。
ニーチェは心の師匠であるショーペンハウアーの哲学を顚倒して、まったくの無意味の中に『煩悩』だけがうごめく世界でひとつの道を見出そうとした。すなわち、『意志』が存在するところ、確実に『煩悩』だけは生じる。である以上、『煩悩』を生きる意味として、『力への意志』という思考法でひたすら煩悩を拡大し、強化し、それによって、フィクションであることがわかっている『善』『悪』といったものではいささかもぶれないほどの境地に至れば、『無意味』を超克することができるのではないか。
できるかどうかなんてわかるわけがないし、それが魂の救いになるかもわからない。であるが、哲郎は哲郎で、メーテルはメーテルで、車掌さんは車掌さんで、ハーロックはハーロックで、エメラルダスはエメラルダスで、おのれの心からの煩悩は大事にし、煩悩の赴くままに正直に生きていくんじゃないか、そんな気はしているところである。
で、見てみたが、映画としての面白さでは「さよなら」よりもこっちの方が断然面白い。やっぱり、松本零士が一番のっている時の999の面白エピソードを再編集したんだから当然ではあるな。機械伯爵のエピソードとか。
そういう意味で、どーでもいーことを書く。
昔から、松本御大の「機械人類vs血の通った人間」という図式に納得できん物を感じていたのだが、つきるところ、
「人間、どんな体になろうが、『煩悩』が生じるのを止めることはできない」のだ、という結論に達した。
機械の体になったら生身の体がうらやましくなり、生身の体なら機械がうらやましくなり、それはもう、動物になろうが、情報になろうが、いっそ飛び越して「神」になろうが、永遠に「隣の芝生は青く」、「隣人は自分が捨てた大事なものを見せびらかすように享受している」ように見えるのである。
哲郎たちの方に理があるように見えるのは、たまたま人間というものが動物として生まれてしまったがゆえであり、もし機械に生まれていたら、機械の体に郷愁を覚え、「機械らしい」生き方を至上のものと考えるだろう。まったく、三千年も前にギリシアの哲人が洞察していたとおりである。
で、『煩悩』が原因である以上、機械人類が現生人類をいじめようが、哲郎が惑星メーテルをぶっ壊そうが、単にヘゲモニーが移動するだけで、人間が、というより、『意思』というものが一度存在してからの永遠の不公平感と軋轢と闘争は避けられないのだ。同じものを平井和正は『幻魔』と呼び、大戦争やって『光のネットワーク』でねじ伏せようとしたが、そんなもんで止められるわけないじゃないか、『煩悩』なんだから。
キリスト教は、『神』というひとつの崇高な『善』としての人格神によりその『煩悩』を救済しようとした。対して、仏教は、その『煩悩』を遠ざけ『悟り』によって昇華しようとした。松本零士のマンガは、その『神』も『悟り』もフィクションでありファンタジーであることを伝えている。
じゃあどうすればいいのか。
ニーチェは心の師匠であるショーペンハウアーの哲学を顚倒して、まったくの無意味の中に『煩悩』だけがうごめく世界でひとつの道を見出そうとした。すなわち、『意志』が存在するところ、確実に『煩悩』だけは生じる。である以上、『煩悩』を生きる意味として、『力への意志』という思考法でひたすら煩悩を拡大し、強化し、それによって、フィクションであることがわかっている『善』『悪』といったものではいささかもぶれないほどの境地に至れば、『無意味』を超克することができるのではないか。
できるかどうかなんてわかるわけがないし、それが魂の救いになるかもわからない。であるが、哲郎は哲郎で、メーテルはメーテルで、車掌さんは車掌さんで、ハーロックはハーロックで、エメラルダスはエメラルダスで、おのれの心からの煩悩は大事にし、煩悩の赴くままに正直に生きていくんじゃないか、そんな気はしているところである。
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Re: miriさん
ニーチェは、ふたつの対立する「力への意志」が衝突しそうになった場合は、弱いほうが相手の強さを察して自分から折れて没落するべきだ、と考えていたようです。ニーチェのユートピアは、他人様に迷惑を掛けない、を超えて、そうした「譲り合い」により自然と秩序が保たれる平和な世界なんですな。弱いくせに強者に道を譲らないで自分の正統性を唱えて居座るのが、いわゆる「ルサンチマン」というわけです。
……んなもん無理やろ(笑)。
……んなもん無理やろ(笑)。
NoTitle
私はこの映画を公開時に劇場で見ました。小学生でこれを見ていなかったら今でも引きずるアニオタにはならなかったかもです。
ということで普通にこの映画の信者だったんですけれども、のちに松本零士さんの作品が表現していく世界を考えるとそういう解釈は大いにアリかも。
そして、「さよなら」を見た時はピンとこなかった部分がポールさんのご感想で「ああ、なるほど」と腑に落ちた部分もあって、とても面白かったです。
鉄郎とメーテルはどちらも母親からの祝福や呪いに縛られて自分の行く道を定めてしまっているタイプですが、やはりハーロックやエメラルダスの生き方が最強なのか(笑)
ということで普通にこの映画の信者だったんですけれども、のちに松本零士さんの作品が表現していく世界を考えるとそういう解釈は大いにアリかも。
そして、「さよなら」を見た時はピンとこなかった部分がポールさんのご感想で「ああ、なるほど」と腑に落ちた部分もあって、とても面白かったです。
鉄郎とメーテルはどちらも母親からの祝福や呪いに縛られて自分の行く道を定めてしまっているタイプですが、やはりハーロックやエメラルダスの生き方が最強なのか(笑)
お邪魔いたします☆
この映画は昨年初見しました。
私の年代だと、中高生の頃に連ドラアニメが流行っていて
すごく流行っていて、映画も多くの人が見に行っていました。
私は松本氏の描かれる絵が苦手で(笑)。
当時は全然見なかったんです(笑)。
>おのれの心からの煩悩は大事にし、煩悩の赴くままに正直に生きていくんじゃないか、そんな気はしているところである。
全く仰る通りだと思います!
まあ、この世に生きるには「他人様に迷惑をかけない」ことだけは
必須だと思いますけど(笑)。
.
私の年代だと、中高生の頃に連ドラアニメが流行っていて
すごく流行っていて、映画も多くの人が見に行っていました。
私は松本氏の描かれる絵が苦手で(笑)。
当時は全然見なかったんです(笑)。
>おのれの心からの煩悩は大事にし、煩悩の赴くままに正直に生きていくんじゃないか、そんな気はしているところである。
全く仰る通りだと思います!
まあ、この世に生きるには「他人様に迷惑をかけない」ことだけは
必須だと思いますけど(笑)。
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Re: 椿さん
だから機械帝国が崩壊した後の「無政府状態」については礼賛はすれど否定はしないんですよね。人間の数を維持してくためには邪悪ではあってもプロメシュームの「法と秩序と強権」の方が合理的なんですが。
ほんと政治は難しいです。