映画の感想
「戦艦大和(1953年)」見る
カラーかと思ったら、新東宝のモノクロ映画だった。戦艦大和の最期の話は、ちょっと年のいった日本人だったら誰でも知っている。である以上、どう転んでも「なるようにしかならない映画」であるのだが、あとは「なるようにしかならなさ」をどう撮るか、ということになる。
そういう意味で、戦争を知る世代である、能村副長役の藤田進はじめ映画俳優連は、まさに水を得た魚のように実に「帝国海軍の軍人」らしい役を生き生きと演じられていた。それでも、史実での生存者数は9%にすぎないのだから、「誰が生き残るんだろう」ということを楽しみにでもしないと希望も何も持てない。というわけで見ていたわけだが、沈没後の生存者まで機銃掃射を受けてバタバタ死んでいき、生き残るのはもうお察しください状態。いやはや、「一方的な戦闘で徹底的にやられる」ということの恐ろしさが誰にでもよくわかる。
当時の金額で200万円かけたセットなど、特撮もがんばっているが、いまのSFXに慣れた目で見ると、正直、「手作りのあたたかみ」を楽しむ視点がないとつらいかもしれない。特に画面がクリアになったため、「大和艦橋を見上げる形での甲板での訓示シーン」では、艦橋と主砲のマットアートがもろわかりになったり、海をゆく大和の雄姿のバックのホリゾントがまるわかりになったりして、時代というものを噛みしめるばかりである。
しかしほんと、海戦シーンは、海軍なんかに志願するもんじゃないな、という、戦艦サバイバル映画である。主役も端役ももう平等にあっけなく死んでいく。死ぬ前までにはさまざまなドラマもあるけど、死ぬときは一瞬で、ドラマなんか存在しない、というかのような演出だ。死体も安らかな美しさなんかどこにもない。のちに新東宝はグロ演出を売りにするが、その萌芽はここにあったんじゃないか、と思えるほどの死体棄損ぶりである。まあ現実がそうなんだからそうなんだが。
現在の、「戦場において兵士として生きること」がどういうことなのか、身体的感触ではまったく知らない監督と、俳優陣が作り上げた戦争映画に飽き足らない人は、「もろにその当時にそういう体験をしていた人たちが作った」この手の映画を見るべきだと思う。ヒロイックさも悲壮感もなしに人がばたばた虫のように死んでいく映画、いいですな。
そういう意味で、戦争を知る世代である、能村副長役の藤田進はじめ映画俳優連は、まさに水を得た魚のように実に「帝国海軍の軍人」らしい役を生き生きと演じられていた。それでも、史実での生存者数は9%にすぎないのだから、「誰が生き残るんだろう」ということを楽しみにでもしないと希望も何も持てない。というわけで見ていたわけだが、沈没後の生存者まで機銃掃射を受けてバタバタ死んでいき、生き残るのはもうお察しください状態。いやはや、「一方的な戦闘で徹底的にやられる」ということの恐ろしさが誰にでもよくわかる。
当時の金額で200万円かけたセットなど、特撮もがんばっているが、いまのSFXに慣れた目で見ると、正直、「手作りのあたたかみ」を楽しむ視点がないとつらいかもしれない。特に画面がクリアになったため、「大和艦橋を見上げる形での甲板での訓示シーン」では、艦橋と主砲のマットアートがもろわかりになったり、海をゆく大和の雄姿のバックのホリゾントがまるわかりになったりして、時代というものを噛みしめるばかりである。
しかしほんと、海戦シーンは、海軍なんかに志願するもんじゃないな、という、戦艦サバイバル映画である。主役も端役ももう平等にあっけなく死んでいく。死ぬ前までにはさまざまなドラマもあるけど、死ぬときは一瞬で、ドラマなんか存在しない、というかのような演出だ。死体も安らかな美しさなんかどこにもない。のちに新東宝はグロ演出を売りにするが、その萌芽はここにあったんじゃないか、と思えるほどの死体棄損ぶりである。まあ現実がそうなんだからそうなんだが。
現在の、「戦場において兵士として生きること」がどういうことなのか、身体的感触ではまったく知らない監督と、俳優陣が作り上げた戦争映画に飽き足らない人は、「もろにその当時にそういう体験をしていた人たちが作った」この手の映画を見るべきだと思う。ヒロイックさも悲壮感もなしに人がばたばた虫のように死んでいく映画、いいですな。
- 関連記事
-
- 「愛情の都」見た
- 「戦艦大和(1953年)」見る
- 「光」(河瀨直美版)見た
スポンサーサイト
もくじ
風渡涼一退魔行

もくじ
はじめにお読みください

もくじ
ゲーマー!(長編小説・連載中)

もくじ
5 死霊術師の瞳(連載中)

もくじ
鋼鉄少女伝説

もくじ
ホームズ・パロディ

もくじ
ミステリ・パロディ

もくじ
昔話シリーズ(掌編)

もくじ
カミラ&ヒース緊急治療院

もくじ
未分類

もくじ
リンク先紹介

もくじ
いただきもの

もくじ
ささげもの

もくじ
その他いろいろ

もくじ
自炊日記(ノンフィクション)

もくじ
SF狂歌

もくじ
ウォーゲーム歴史秘話

もくじ
ノイズ(連作ショートショート)

もくじ
不快(壊れた文章)

もくじ
映画の感想

もくじ
旅路より(掌編シリーズ)

もくじ
エンペドクレスかく語りき

もくじ
家(

もくじ
家(長編ホラー小説・不定期連載)

もくじ
懇願

もくじ
私家版 悪魔の手帖

もくじ
紅恵美と語るおすすめの本

もくじ
TRPG奮戦記

もくじ
焼肉屋ジョニィ

もくじ
睡眠時無呼吸日記

もくじ
ご意見など

もくじ
おすすめ小説

もくじ
X氏の日常

もくじ
読書日記

~ Comment ~
NoTitle
大和ホテルといわれていたころはよかったのですけどねぇ。
菊水作戦は、通常何通りもの想定をして作戦を立てるのですが、作戦そのものがあってなきがごとし、ただ大和他艦艇を沖縄に特攻させるだけだったそうです。
死んだ人も浮かばれないですよねぇ。
菊水作戦は、通常何通りもの想定をして作戦を立てるのですが、作戦そのものがあってなきがごとし、ただ大和他艦艇を沖縄に特攻させるだけだったそうです。
死んだ人も浮かばれないですよねぇ。
Re: miriさん
役者たちにとってもスタッフにとっても、
「記録映画のつもりで撮ろう」としたかのようなリアルさでしたね。
もしかしたら、「イタリア・ネオレアリズモ」の強い影響があったのかな。そう考えると、どこか「戦火のかなた」のような味も……。
「記録映画のつもりで撮ろう」としたかのようなリアルさでしたね。
もしかしたら、「イタリア・ネオレアリズモ」の強い影響があったのかな。そう考えると、どこか「戦火のかなた」のような味も……。
こんばんは☆
>いやはや、「一方的な戦闘で徹底的にやられる」ということの恐ろしさが誰にでもよくわかる。
>しかしほんと、海戦シーンは、海軍なんかに志願するもんじゃないな、という、戦艦サバイバル映画である。主
>死ぬときは一瞬で、ドラマなんか存在しない、というかのような演出だ。死体も安らかな美しさなんかどこにもない。
仰る通りで、この映画は目で見ていただかないと
なかなか未見の方には伝わりませんね・・・。
>現在の、「戦場において兵士として生きること」がどういうことなのか、身体的感触ではまったく知らない監督と、俳優陣が作り上げた戦争映画に飽き足らない人は、
昨年「アルキメデスの大戦」も映画館で見たのですが
それはそれは美しくて大迫力で良かったんですが
戦闘そのもののシーンは、序盤だけだったので
違う角度から撮っていた感じで、見られました。
この映画と同じようでは、見られなかったと思います、
きっと嘘くさいでしょうから(笑)。
>「もろにその当時にそういう体験をしていた人たちが作った」この手の映画を見るべきだと思う。ヒロイックさも悲壮感もなしに人がばたばた虫のように死んでいく映画、いいですな。
なかなか覚悟が要りますよね・・・
私は、オンエアで順番に見ているだけですが
ある程度の覚悟はもってみたつもりでも、本当に恐ろしかったです。
.
>しかしほんと、海戦シーンは、海軍なんかに志願するもんじゃないな、という、戦艦サバイバル映画である。主
>死ぬときは一瞬で、ドラマなんか存在しない、というかのような演出だ。死体も安らかな美しさなんかどこにもない。
仰る通りで、この映画は目で見ていただかないと
なかなか未見の方には伝わりませんね・・・。
>現在の、「戦場において兵士として生きること」がどういうことなのか、身体的感触ではまったく知らない監督と、俳優陣が作り上げた戦争映画に飽き足らない人は、
昨年「アルキメデスの大戦」も映画館で見たのですが
それはそれは美しくて大迫力で良かったんですが
戦闘そのもののシーンは、序盤だけだったので
違う角度から撮っていた感じで、見られました。
この映画と同じようでは、見られなかったと思います、
きっと嘘くさいでしょうから(笑)。
>「もろにその当時にそういう体験をしていた人たちが作った」この手の映画を見るべきだと思う。ヒロイックさも悲壮感もなしに人がばたばた虫のように死んでいく映画、いいですな。
なかなか覚悟が要りますよね・・・
私は、オンエアで順番に見ているだけですが
ある程度の覚悟はもってみたつもりでも、本当に恐ろしかったです。
.
~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Re: ECMさん
とはいえ大和が東京湾で砲台になって自沈後、米軍に引き上げられて接収されて改修されて、「イオージマ」とか名付けられて朝鮮戦争に行ったりするのも、日本人としてはまたもにょる未来像ではあります。とほほ。