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    映画の感想

    「愛情の都」見た

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     知る人ぞ知るメロドラマの傑作だそうだが、いやー、なんというか。時代というか。

     カップルの男のほうの設定が最悪である。なにしろ、「女遊びを繰り返したうえ、いちばん最近の愛人であるレビューの踊り子、エリ子に子供ができたと知ったら堕胎を強要する」というクソ男なのだ。制作側は、「社長である父親が女中に産ませた子供のために、屈折した少年時代を生きてきたナイーブなところのある青年サラリーマン」として描こうとしてきたのだろうが、そんなものにはごまかされん。

    「たとえ真実の愛に目覚めようがクソ野郎はクソ野郎であるし、しでかしてきたことが帳消しになるわけではない」のだ。

     もう、この時点で、このクソ男は自分の中では「公衆の敵ナンバーワン」認定である。あとはこの男がどれだけ害悪をまき散らしたうえで成敗されるかの興味しかない。

     カップルの女のほうである「愛子」なんて、これまたこの男のせいで人生を狂わされるのである。カフェの女給から、一挙に「夜の女」になっちまうのだ。映画では男と別れてから再登場までに「ひと月」の間隙があるが、その間にこの清純そのものだった女がどれだけの男と肌を重ねたものか、想像するだけでも恐ろしいものがある。なにせ時代は昭和半ば、高度経済成長時代を迎えようとしていたころだ。戦争から帰って一息ついた男たちの肉体的パワーは、今の草食系男子全盛時代とは天地の開きがある。

     件の社長の息子が訪ねてくるまでに、もう妖艶そのものの姿になっちゃって。エリ子はエリ子で、社長の息子を待ち伏せて拳銃でもって銃撃したりする始末。こういうところを見ると、つくづく、「敗者復活戦というものの存在を決して認めない日本社会」というものに腹立たしさが募ってくる。エリ子の感情に任せての銃撃が、「生ぬるく」思えてくるのだ。

     その反動では32口径だろう。人間にダメージを与えるには少なくとも38スペシアル弾以上が必要だ。32口径で殺すんなら、あと2、3発、きちんと頭か胴体にブチ込まんかい! と、思わず画面のエリ子にエールを送ってしまった。

     もちろん、結末では、男は重傷だったが死なず、愛子と結ばれてハッピーエンドなのだが、

    「お前が反省して真人間になって一人の女を幸せにすることで、エリ子が堕ろした子供の命が甦るいうんなら甦らしてみい!」

     昭和というものが徹底して男社会であったことがよくわかる映画である。なんだかんだいって、平成のほうがまだまともである、ということに気づかせられた映画であった。

     ちなみに、役者たちは生き生きと光り輝くような演技をしていて、演出もきちんとツボを押さえているので、いま普通の視点で見ると「昔懐かしい平和だったころの日本」の味を噛みしめられると思うので、わたしのように「昭和の亡霊」と戦うことを生きがいにしているような人間でもなければ普通に楽しめると思う(笑)。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    今のエロゲだったら最低の鬼畜野郎として認識されてますけど、

    この映画ではエリ子を孕ませたのが、愛情に飢えた、傷つきやすい心を持ったナイーブな青年が女に逃避せざるを得なかったためで、男が真実の愛を知った今、エリ子は自分から別れるべきだ、とでもいいたいかのような設定ですからねえ。時代というものは時代ですな。

    江戸時代だったら、たぶんもっとひどくて女は泣き寝入りだったと思うので、まあ、文明万歳、といいますか……。

    Re: miriさん

    でも、当時をしのべて面白かったですよ。

    悲惨な状態になってもほとんどの人間が前向きなのがいいですな。

    だからかえってエリ子さんが気の毒に……(><)

    NoTitle

    そういえば、昔のエロゲでもこういうのあったな(笑)。
    エロゲ主人公が本当にクソ野郎で、
    自分の欲望の赴くままに行動して、
    妊娠させたのに堕胎を強要するという。。。
    エンディングは沢山あるのですが、
    10分の9はヒロインに殺されるものばかりのお話(笑)。
    (∩´∀`)∩

    こんにちは☆

    >昭和というものが徹底して男社会であったことがよくわかる映画である。

    そうですね、DVDにもなっていないようですし、
    まあ俳優が良いだけかもしれませんね?(笑)

    >ちなみに、役者たちは生き生きと光り輝くような演技をしていて、演出もきちんとツボを押さえているので、いま普通の視点で見ると「昔懐かしい平和だったころの日本」の味を噛みしめられると思う

    演出も良かったです。
    まあ今現在も若いはやり俳優で作られる邦画は多いので
    この映画もそのたぐいだったとは思います。


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