「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 4-4
「わたしの特殊能力を、どうしてそんなに重要視されるんですか?」
わたしは心底困惑していた。おそらくは、森村探偵事務所と北村は、彼らがこういう態度を取ることを見越した上で、わたしを潜入調査へ赴かせたのだろうが……。
「そのことについては、理事長が話してくれるはずです」
耳を疑った。
「ちょ、ちょっと待ってください。理事長って、さっきの話をうかがったところでは、この研究所のリーダーみたいなかたじゃないんですか?」
教祖、という言葉は呑み込んだ。
「理事長は、この研究所の、実務面の総責任者ですよ。しかし、理論面や研究所の教育方針は、学長が主に進めています。ですから、この研究所のリーダーは、どちらかといえば学長のほうですね」
「はあ」
とはいうものの。
「それでも、最高幹部のひとりじゃないですか。そんな人が、とつぜん入ってきたわたしみたいな人間に、いきなり言葉をかけてくれるものなんですか?」
「ですから、桐野さん」
杉内は、瞳に宗教的情熱とでもいうような色の光を浮かべて、わたしに熱心に語り続けた。
「あなたは、特別なんです」
「はあ」
もう、「はあ」としかいう言葉がなくなっていた。気がついたら重要人物になっていたとき、人間はこういう対応しか取れなくなるものらしい。初の大西洋無着陸単独横断飛行に成功したリンドバーグもパリへたどりついたときこんな気持ちだったのだろうか。
杉内は、わたしを、なにかわたしにはわからない重要だが明白な事実を知っているような顔つきで見た。
「とまどってらっしゃるようですね」
……たしかに、とまどっていた。とまどう以外になにができるというんだ、こんな展開で。
わたしは小細工はしないことにした。
「もう、急に立場が変化したみたいで……なにがなんだかわからないですね、正直に話すと」
そこで、これまで等閑に付されていたことを思い出す。
「そもそも、大事なことを聞き忘れていました。施設その他は見せてもらいましたが、わたしは、この研究所で教えてくれる教義について、その詳しいところをなにも聞いていない! どうなっているんです?」
「ネットだけではちょっとわかりませんものね。でもまあ、そこまで気にすることもないですよ。すぐに、理事長が話してくれますから。では、桐野さん、こちらへいらしてください。理事長がお会いになります」
わたしは心底困惑していた。おそらくは、森村探偵事務所と北村は、彼らがこういう態度を取ることを見越した上で、わたしを潜入調査へ赴かせたのだろうが……。
「そのことについては、理事長が話してくれるはずです」
耳を疑った。
「ちょ、ちょっと待ってください。理事長って、さっきの話をうかがったところでは、この研究所のリーダーみたいなかたじゃないんですか?」
教祖、という言葉は呑み込んだ。
「理事長は、この研究所の、実務面の総責任者ですよ。しかし、理論面や研究所の教育方針は、学長が主に進めています。ですから、この研究所のリーダーは、どちらかといえば学長のほうですね」
「はあ」
とはいうものの。
「それでも、最高幹部のひとりじゃないですか。そんな人が、とつぜん入ってきたわたしみたいな人間に、いきなり言葉をかけてくれるものなんですか?」
「ですから、桐野さん」
杉内は、瞳に宗教的情熱とでもいうような色の光を浮かべて、わたしに熱心に語り続けた。
「あなたは、特別なんです」
「はあ」
もう、「はあ」としかいう言葉がなくなっていた。気がついたら重要人物になっていたとき、人間はこういう対応しか取れなくなるものらしい。初の大西洋無着陸単独横断飛行に成功したリンドバーグもパリへたどりついたときこんな気持ちだったのだろうか。
杉内は、わたしを、なにかわたしにはわからない重要だが明白な事実を知っているような顔つきで見た。
「とまどってらっしゃるようですね」
……たしかに、とまどっていた。とまどう以外になにができるというんだ、こんな展開で。
わたしは小細工はしないことにした。
「もう、急に立場が変化したみたいで……なにがなんだかわからないですね、正直に話すと」
そこで、これまで等閑に付されていたことを思い出す。
「そもそも、大事なことを聞き忘れていました。施設その他は見せてもらいましたが、わたしは、この研究所で教えてくれる教義について、その詳しいところをなにも聞いていない! どうなっているんです?」
「ネットだけではちょっとわかりませんものね。でもまあ、そこまで気にすることもないですよ。すぐに、理事長が話してくれますから。では、桐野さん、こちらへいらしてください。理事長がお会いになります」
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~ Comment ~
NoTitle
ここでいきなりVIP扱いされるとは。
桐野先生も驚きでしょうが、私も驚きました。
でも、一信者として埋没して潜入するより、明らかに危険フラグ;;
桐野先生……どんな星の下に生まれてきたんだか。
桐野先生も驚きでしょうが、私も驚きました。
でも、一信者として埋没して潜入するより、明らかに危険フラグ;;
桐野先生……どんな星の下に生まれてきたんだか。
- #14334 椿
- URL
- 2014.10/13 16:26
- ▲EntryTop
>佐槻勇斗さん
まあそりゃあ桐野くんは事態が悪くなるほうへ悪くなるほうへと引っ張られていく属性のある人ですから(笑)。
ネタバレというにはなんですが、毎度同じく、今回も桐野くんは悲惨な目に遭うことになります。まだ予定ですけど。
まあそりゃあ桐野くんは事態が悪くなるほうへ悪くなるほうへと引っ張られていく属性のある人ですから(笑)。
ネタバレというにはなんですが、毎度同じく、今回も桐野くんは悲惨な目に遭うことになります。まだ予定ですけど。
君のひとみは10000ボルト.
アリスの人ですね。懐かしい……(○´∀`○)
桐野さんヒーロー的扱いをされていますが、このままおだてられまくって危険なところに足を突っ込んでしまわれないことを祈ります。
「はあ」でとぼけて、とりあえず今日は帰りましょう!
なんだか杉内さんも怪しいニオイがいたしますです;;
続きを読みますっっ
アリスの人ですね。懐かしい……(○´∀`○)
桐野さんヒーロー的扱いをされていますが、このままおだてられまくって危険なところに足を突っ込んでしまわれないことを祈ります。
「はあ」でとぼけて、とりあえず今日は帰りましょう!
なんだか杉内さんも怪しいニオイがいたしますです;;
続きを読みますっっ
- #754 佐槻勇斗
- URL
- 2010.01/27 22:39
- ▲EntryTop
>ネミエルさん
まあ、いろいろありまして、はげにしたらかわいそう(^^)
ちょっと今続きが迷走中。うーむ、このままではストックが……。
まあ、いろいろありまして、はげにしたらかわいそう(^^)
ちょっと今続きが迷走中。うーむ、このままではストックが……。
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Re: 椿さん
今回の話は、書いていてかなりつらかったです。こんな運命にして、桐野くんにショットガンでグリュエル・チーズにされても文句いえません(^^;)
そちらのほうの桐野くんは、かわいい彼女と学生ライフを満喫しているようでなんともうらやましいですね(^^)