「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 5-3
沢守理事長は嫣然と笑った。嫣然という言葉がぴったりと来る笑顔だった。もっとぴったりした言葉を探すとなると……。
傾城だ。
「面白いことをお考えのようですね、桐野さん」
わたしは頭をかいた。
「いえ、お若いころはさぞやお美しかったのだろうと思いまして……ああ、今でもお綺麗ですが」
「桐野さん、この心理学研究所では、お世辞は通用しませんわよ」
その言葉に、わたしは苦笑いした。
「ほんとうにオープンな心構えでいないとだめなんですね。……でも、お若いころはさぞやお美しかったのだろう、というのは本気です」
いっているうちに自分がどんどん墓穴を掘っていくような気になった。PHPあたりから出ているような、人を褒めるためのハウツー本をあらかじめ読んでおくんだった。
「それで、どうでしたか? この建物と会員たちの感想は」
自分は潜入調査に来ているのだ、という思いをできるかぎり識域下に押さえ込もうとしつつ、わたしは答えた。
「ええ、悪いところではなさそうですね。というよりも、居心地はかなりよさそうです。杉内さんからもうかがいましたが、大学をイメージしているとか」
沢守房江は首を横に振った。
「大学をイメージしているのではありませんよ、桐野さん」
「えっ?」
わたしはちょっととまどった。
沢守房江は、ひとことひとことを吟味するようにしゃべった。
「ここは大学なのです。公には、学校法人の資格がなくて大学はおろか学校とさえ認められていませんが、ここは、真理を学ぶための大学なのですよ」
瞳に妙な情熱が感じられた。本気でいっているらしい。大学に対しコンプレックスでもあるのだろうか。
「大学にこだわるのはおかしなことだとお思いですか」
沢守房江の言葉に、わたしはいいえと答えざるを得なかった。
「もちろん、真理を得たのなら、それを学問として確立するには、多人数の研究集団と交流の場は絶対に必要ですね。とはいえ……」
いいかけて、はっとわたしは気がつき、目の前の理事長を凝視した。
「心を読んだ?」
沢守房江は首を振った。
「ただの心理学とその応用ですよ。こういってはなんですが、桐野さん、とても反応が読みやすいかたでらっしゃいますね。ますます、わたしたちの研究所に必要な人材として確保したくなりましたわ」
傾城だ。
「面白いことをお考えのようですね、桐野さん」
わたしは頭をかいた。
「いえ、お若いころはさぞやお美しかったのだろうと思いまして……ああ、今でもお綺麗ですが」
「桐野さん、この心理学研究所では、お世辞は通用しませんわよ」
その言葉に、わたしは苦笑いした。
「ほんとうにオープンな心構えでいないとだめなんですね。……でも、お若いころはさぞやお美しかったのだろう、というのは本気です」
いっているうちに自分がどんどん墓穴を掘っていくような気になった。PHPあたりから出ているような、人を褒めるためのハウツー本をあらかじめ読んでおくんだった。
「それで、どうでしたか? この建物と会員たちの感想は」
自分は潜入調査に来ているのだ、という思いをできるかぎり識域下に押さえ込もうとしつつ、わたしは答えた。
「ええ、悪いところではなさそうですね。というよりも、居心地はかなりよさそうです。杉内さんからもうかがいましたが、大学をイメージしているとか」
沢守房江は首を横に振った。
「大学をイメージしているのではありませんよ、桐野さん」
「えっ?」
わたしはちょっととまどった。
沢守房江は、ひとことひとことを吟味するようにしゃべった。
「ここは大学なのです。公には、学校法人の資格がなくて大学はおろか学校とさえ認められていませんが、ここは、真理を学ぶための大学なのですよ」
瞳に妙な情熱が感じられた。本気でいっているらしい。大学に対しコンプレックスでもあるのだろうか。
「大学にこだわるのはおかしなことだとお思いですか」
沢守房江の言葉に、わたしはいいえと答えざるを得なかった。
「もちろん、真理を得たのなら、それを学問として確立するには、多人数の研究集団と交流の場は絶対に必要ですね。とはいえ……」
いいかけて、はっとわたしは気がつき、目の前の理事長を凝視した。
「心を読んだ?」
沢守房江は首を振った。
「ただの心理学とその応用ですよ。こういってはなんですが、桐野さん、とても反応が読みやすいかたでらっしゃいますね。ますます、わたしたちの研究所に必要な人材として確保したくなりましたわ」
- 関連記事
-
- 天使を吊るせ 5-4
- 天使を吊るせ 5-3
- 天使を吊るせ 5-2
スポンサーサイト
もくじ
風渡涼一退魔行

もくじ
はじめにお読みください

もくじ
ゲーマー!(長編小説・連載中)

もくじ
5 死霊術師の瞳(連載中)

もくじ
鋼鉄少女伝説

もくじ
ホームズ・パロディ

もくじ
ミステリ・パロディ

もくじ
昔話シリーズ(掌編)

もくじ
カミラ&ヒース緊急治療院

もくじ
未分類

もくじ
リンク先紹介

もくじ
いただきもの

もくじ
ささげもの

もくじ
その他いろいろ

もくじ
自炊日記(ノンフィクション)

もくじ
SF狂歌

もくじ
ウォーゲーム歴史秘話

もくじ
ノイズ(連作ショートショート)

もくじ
不快(壊れた文章)

もくじ
映画の感想

もくじ
旅路より(掌編シリーズ)

もくじ
エンペドクレスかく語りき

もくじ
家(

もくじ
家(長編ホラー小説・不定期連載)

もくじ
懇願

もくじ
私家版 悪魔の手帖

もくじ
紅恵美と語るおすすめの本

もくじ
TRPG奮戦記

もくじ
焼肉屋ジョニィ

もくじ
睡眠時無呼吸日記

もくじ
ご意見など

もくじ
おすすめ小説

もくじ
X氏の日常

もくじ
読書日記

~ Comment ~
>ネミエルさん
理事長先生はたぶん「攻殻機動隊」読んでません(^^)
もしかしたらこれも今の高校生にはクラシックなマンガなのか(汗)
理事長先生はたぶん「攻殻機動隊」読んでません(^^)
もしかしたらこれも今の高校生にはクラシックなマンガなのか(汗)
~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Re: 椿さん
そんな如才ない男じゃありません(笑)