読書日記
パトリシア・モイーズチャレンジ(1)
イギリスの女流ミステリ作家に、ヘンリ・ティベット警部という名探偵のシリーズで知られるパトリシア・モイーズという人がいる。
古本屋へ行くとその代表作「死人はスキーをしない」などのタイトルがけっこうみられるので、一度まとめて読んでみるか、と、ハヤカワポケットミステリ棚にあったパトリシア・モイーズ作品をあるだけ取り出して買ってみることにした。
邦訳があったとしても3冊くらいだろうな、と思っていたら、ポケミスには15冊以上も邦訳がありやがった……。
とりあえず、棚にあった10冊をまとめて買ってきて、腰を据えて読んでみることにした。まあ、悪趣味な話である。
それでデビュー作「死人はスキーをしない」を、びっくりドンキーでハンバーグを食いながら読んでみたところ、
とても面白かった。
何の変哲もない、アガサ・クリスティーあたりの作風を1960年代になってもやってるような、典型的な「英国ミステリ」なんだけど、落ち着いたユーモア、華やかな舞台設定、名探偵ティベット警部の「まっとうさ」といい、実に読んでいて「コメのメシとミソシル」的な安定感を読み手にもたらす、リーダビリティの高い本だったのである。
というわけで、「パトリシア・モイーズ・チャレンジ」と題し、買ってきたポケミスを適当に読んでいこう、という企画を開始することにする。
「死人はスキーをしない」……デビュー作であり、そうとう力を入れて書いたことがわかる作品である。舞台はイタリアのスキー場、スコットランドヤードのティベット警部が休暇で訪れたそのゲレンデで、リフトの上で拳銃で射殺された死体が発見される、という密室状況を扱った作品。密室トリックはどちらかといったら小粒で、微妙かつテクニカルな操作により不可能状況を作るものであるが、思い込みと自分の意図からウソばかり証言する登場人物たちがいい味を出している。クライマックスのスキーチェイスは手に汗握るもので、間に合うとわかっちゃいるがどきどきしますな。ラスト一行の遊び心もまたよし。
「死の会議録」……シリーズ第三作(原作の出版ペースでは)。小さいながらも、スイスにおいて、各国の警察当局の人間による、麻薬問題を話し合うための国際会議の議長を務めることになったティベット主席警部を待っていたのは卑劣な罠であった。殺人事件の容疑者とされてしまったティベット警部は、四面楚歌の中で、かけられた容疑を晴らすことができるか。残された時間は少ない。という、読むぶんにはティベット警部の内面の焦燥がじっくりと書き込まれたサスペンスフルで面白い作品なのだが、肝心のトリックがわかりやすすぎて、読んでいるさなかに気づいてしまい、こんな簡単なトリックに全く気付こうともしないティベット警部や、警部に執拗に揺さぶりをかけてくるスイス警察にイライラしてくる、という困った作品でもある。なにげに、殺人事件の巻き添えを食って死んだり重傷を負ったりすることになる人間の数もそれなりに多かったりする。広く大きな心をもって読めば面白いと思う。
今日はこれから「殺人ア・ラ・モード」を読むことにする。ファッション雑誌の編集部を舞台にした殺人事件にティベット警部が挑むもので、なかなか面白そうだ。それにしても、なにも、入稿ぎりぎりで編集者を殺さなくてもいいじゃん犯人……(笑)。
古本屋へ行くとその代表作「死人はスキーをしない」などのタイトルがけっこうみられるので、一度まとめて読んでみるか、と、ハヤカワポケットミステリ棚にあったパトリシア・モイーズ作品をあるだけ取り出して買ってみることにした。
邦訳があったとしても3冊くらいだろうな、と思っていたら、ポケミスには15冊以上も邦訳がありやがった……。
とりあえず、棚にあった10冊をまとめて買ってきて、腰を据えて読んでみることにした。まあ、悪趣味な話である。
それでデビュー作「死人はスキーをしない」を、びっくりドンキーでハンバーグを食いながら読んでみたところ、
とても面白かった。
何の変哲もない、アガサ・クリスティーあたりの作風を1960年代になってもやってるような、典型的な「英国ミステリ」なんだけど、落ち着いたユーモア、華やかな舞台設定、名探偵ティベット警部の「まっとうさ」といい、実に読んでいて「コメのメシとミソシル」的な安定感を読み手にもたらす、リーダビリティの高い本だったのである。
というわけで、「パトリシア・モイーズ・チャレンジ」と題し、買ってきたポケミスを適当に読んでいこう、という企画を開始することにする。
「死人はスキーをしない」……デビュー作であり、そうとう力を入れて書いたことがわかる作品である。舞台はイタリアのスキー場、スコットランドヤードのティベット警部が休暇で訪れたそのゲレンデで、リフトの上で拳銃で射殺された死体が発見される、という密室状況を扱った作品。密室トリックはどちらかといったら小粒で、微妙かつテクニカルな操作により不可能状況を作るものであるが、思い込みと自分の意図からウソばかり証言する登場人物たちがいい味を出している。クライマックスのスキーチェイスは手に汗握るもので、間に合うとわかっちゃいるがどきどきしますな。ラスト一行の遊び心もまたよし。
「死の会議録」……シリーズ第三作(原作の出版ペースでは)。小さいながらも、スイスにおいて、各国の警察当局の人間による、麻薬問題を話し合うための国際会議の議長を務めることになったティベット主席警部を待っていたのは卑劣な罠であった。殺人事件の容疑者とされてしまったティベット警部は、四面楚歌の中で、かけられた容疑を晴らすことができるか。残された時間は少ない。という、読むぶんにはティベット警部の内面の焦燥がじっくりと書き込まれたサスペンスフルで面白い作品なのだが、肝心のトリックがわかりやすすぎて、読んでいるさなかに気づいてしまい、こんな簡単なトリックに全く気付こうともしないティベット警部や、警部に執拗に揺さぶりをかけてくるスイス警察にイライラしてくる、という困った作品でもある。なにげに、殺人事件の巻き添えを食って死んだり重傷を負ったりすることになる人間の数もそれなりに多かったりする。広く大きな心をもって読めば面白いと思う。
今日はこれから「殺人ア・ラ・モード」を読むことにする。ファッション雑誌の編集部を舞台にした殺人事件にティベット警部が挑むもので、なかなか面白そうだ。それにしても、なにも、入稿ぎりぎりで編集者を殺さなくてもいいじゃん犯人……(笑)。
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~ Comment ~
モイーズのことは自分も忘れてました(笑)昔、かなり熱中して読みましたが、『殺人ア・ラ・モード』と『流れる星』が二大傑作かと思います。『死の贈物』と『サイモンは誰か』も面白かった。チャレンジ楽しみにしております
- #21261 ハヤシ
- URL
- 2020.06/27 05:29
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Re: ハヤシさん
「流れる星」と「死の贈物」は、古本屋の棚になかったから、また行って確認確保せねば……。