FC2ブログ

    読書日記

    パトリシア・モイーズチャレンジ(6)

     ←パトリシア・モイーズチャレンジ(5) →「キャッツ・アイ」読んだ
     雨ばかり降って重度の倦怠感に襲われる毎日である。そんなわけで昼頃に目を覚まし、飯を食っても何もする気がなかったのでモイーズを読む。どうせわからないんだから犯人当てなどしないで読むのが、こういうフーダニット物のコツである。

    「サイモンは誰か?」……大富豪が死去直前に書き換えた遺言状で、莫大な全財産はアメリカに養子に出された甥のサイモンに相続させられることになった。だがその甥は戦中の混乱もあり完全に行方不明。追跡調査を任された事務弁護士は富豪の遺言通りに新聞に広告を出したが、正式な書類と共にその広告に答えて名乗り出たサイモンは二人いた。どちらが本物なのか? やがて事態は殺人事件へと発展し、ティベット主任警視が担当することになったのだが、という話。大ネタに引きずり回されながら読んでいると、犯人のあたりをつけたところで、急に思わぬところから脳天かかと落としが読者の後頭部に降ってくる、という寸法で、これが実に巧みなため、そこからのモイーズの詰め手順の妙にうなることしかできない作品。なかなか面白かったが、60年代のような迫力にはさすがに欠けるかなあ。

    「死のクロスワード」……ティベット主任警視のオフィスに届けられた謎めいたクロスワードパズル。友人の助力によって解読した警視は、これを出してきたのは自分に講演を依頼してきた覆面ミステリ作家たちのサークルに違いないと判断、会場のワイト島へ向かってそこで作家たちの鼻を明かすことに成功したのだが、その翌日、会場へ来ていた人間の一人が不審な死を遂げる、という話。奇人変人だらけのミステリ作家は戯画化して描かれているものの、作家同士のしがらみで書けなかったのか、いつものようなギャグのキレがなく、ティベットは悲惨な事件を恐ろしいやり方で解決する。それにしても、後味の悪さではモイーズのミステリでも一二を争うのではないか。もし、リュウ・アーチャーが解決していたら、余波を食ってもう二、三人はあの世行きだったと考えても外れてはいないんじゃないかなあ。

     ここまで読んで、さて、TRPGのセッションに向かうか、と思ったところで、昨日とは別なゲームマスターから、体調不良ゆえにセッションを中止するとの連絡が入る。まあ体調不良に勝てる人間はそうはいないだろうと思うので、ひっくり返って手持ちの最後のモイーズを読む。

    「ブルー・ムーン亭の秘密」……家族の死によって天涯孤独の身となったスーザンは、大伯父の死により居酒屋「ブルー・ムーン亭」を引き継いだ。悪いうわさはあったものの、スイスの専門学校で料理店経営のプロとしての教育を受けていたスーザンの努力の甲斐あり、店は大繁盛……しようとしていた矢先、店でタマゴテングダケを使った毒殺事件が発生する。地元警察はスコットランドヤードへ援助を求め、やってきたのはティベット主任警視であった、という話。なのだが、たしかに読んでて面白いんだけど、面白さの比重が、ミステリというよりは、サスペンスとかロマンス小説とかの領域のほうにかかっているので、よくいって薄味、悪くいって犯人も動機も見え見えでまるわかり、といういささか残念な代物であった。人間、70を過ぎるとさすがにこういう話にもなるか、ってなもんで、この第19作目の長編は、出版社としてもティベットを節目の20作目で引退させるための花道とするような意図があった上のことだったんじゃないかな、と思えてならない。残念ながら、モイーズの創作意欲が尽きたのか、体力が尽きたのかはわからないが、1993年発表のこの作品を最後にモイーズは沈黙し、2000年に没する。ティベット警視総監、レナルズ主任警視という結末が見られなかったのははなはだ残念だが、みんながみんなアプルビイみたいに出世するわけもないしなあ。とりあえず、古本屋が何をいつ仕入れるかがわからない以上、パトリシア・モイーズチャレンジ、ここでひとまず幕とする。明日は明日で積読本を消化しよう……。
    関連記事
    スポンサーサイト






    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    もくじ  3kaku_s_L.png X氏の日常
    もくじ  3kaku_s_L.png 読書日記
    【パトリシア・モイーズチャレンジ(5)】へ  【「キャッツ・アイ」読んだ】へ

    ~ Comment ~

    Re: こみさん

    大丈夫ですよ。何度も明記した通り、今度の甲賀三郎先生作品はまったく怖くないですよ。ゲシシシ(ゲス笑い(笑))

    ありがとうございます

    うわーい、モイーズ祭りだーい。
    タイトルに覚えのあるのは『スキー』と『アラモード』ぐらいだけど
    キッチリ解説してもらえてうれしいわあ。
    なによりも『死の贈物』には注意を促してくれてある親切。
    ウンポコチャッピーに陥らないお気遣い、ありがとうございます。
    そして、甲賀先生のマル秘作品。
    今回こそは決して読まないぞー

    Re: 椿さん

    おお、刺さってくださいましたか。

    すでにご存じと思いますが、古本屋さんでも、文庫の棚じゃなくてポケミスの、あの新書サイズのやつが並んでるところへ行かないと置いてないので気をつけてくださいね~。

    Re: ハヤシさん

    若い人にも、アガサ・クリスティーが好きな人になら絶対受けると思うんですけどねえ。ポケミスじゃさすがに接触度が低いかな。文庫じゃないとハードル高いか……(^^;)

    NoTitle

    チャレンジおつかれさまでした。
    パトリシア・モイーズ、自分の『いつか挑戦したい作家』リストに確実に入りました。古本屋さんに行ったときには探してみよう。

    モイーズ・チャレンジお疲れ様でした。『サイモンは誰か』は個人的に初めて新刊で読んだポケミスなので思い出深いものがあります。現代のミステリには無い美点が確かにモイーズにはあると信じますが、若い読者には受けないかな…私もこれを機に読み返します。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【パトリシア・モイーズチャレンジ(5)】へ
    • 【「キャッツ・アイ」読んだ】へ