「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 7-1
7
わたしが「麗澄真理心理学研究所」の聴講生となって本部の建物へ日参するようになってから五日が過ぎた。
わかったことがあった。
この研究所は、凄まじいまでの集金能力を持っているということである。
凄まじいまでの集金能力といったが、信者というか会員というか、彼らひとりひとりが払う額は、払えないというようなものではない。それだけは断っておきたい。
だが、塵も積もればなんとやら、というのもまた事実だ。
まず、入会費五千円。
学費、一回一時間半の講義を受けて千円。これが基本だ。
テキスト代適宜。
昇格試験一回一万円。
見てわかるとおり完全ガラス張りの明朗会計だが、試験やらなにやら、その準備に至るまでに受けなくてはならない講義のコマ数は、本物の大学のカリキュラムくらいある。
頭の中でざっと計算してみたが、累計すると最短で毎日通って三ヶ月の、第四研究課程に進むまでのコースでも、二十万円近く持っていかれるということだ。まったくうまくできている。
わたしはぼんやりと、心理学の基礎講義を聴いていた。内容は、いわゆる心理学というものの歴史だ。
その内容は、はるか昔の大学生のころに、まるまると太った陽気な教授から教わった通りのもので、さほど目新しくはなかった。真理心理学なるものがいったいいかなるものなのかについてはなかなか教えてもらえないらしい。
プラトンがいったプシケが中世を経てさてどうなるでしょう、というところでベルが鳴った。わたしの記憶によれば、その後デカルトあたりの哲学者が出てきて心身二元論を唱えることになるのだが、これまたわたしの経験からいうと、そんなことをいくら気合いを入れて覚えてもテストには一切出てこないものである。
わたしは教室で学んでいた人々と同じように、テキストをまとめて鞄に入れると、席から立ち上がった。教室内にいる人間は、学生から社会人から老人から、男女合わせて様々だった。
金がない仕事もない将来の展望もないといったところで、今の日本はまだまだ平和だというところか。
わたしは鞄を小脇に抱えて『学食』へ向かった。今は昼の十一時三十分。一時三十分までの昼休みの間に、食事を取って昼寝してくれ、という趣向らしい。個人的には、そういう趣向は大好きだ。
これで実際に役に立つ技能が学べれば申し分ないのだが、はたしてどうだか。
わたしが「麗澄真理心理学研究所」の聴講生となって本部の建物へ日参するようになってから五日が過ぎた。
わかったことがあった。
この研究所は、凄まじいまでの集金能力を持っているということである。
凄まじいまでの集金能力といったが、信者というか会員というか、彼らひとりひとりが払う額は、払えないというようなものではない。それだけは断っておきたい。
だが、塵も積もればなんとやら、というのもまた事実だ。
まず、入会費五千円。
学費、一回一時間半の講義を受けて千円。これが基本だ。
テキスト代適宜。
昇格試験一回一万円。
見てわかるとおり完全ガラス張りの明朗会計だが、試験やらなにやら、その準備に至るまでに受けなくてはならない講義のコマ数は、本物の大学のカリキュラムくらいある。
頭の中でざっと計算してみたが、累計すると最短で毎日通って三ヶ月の、第四研究課程に進むまでのコースでも、二十万円近く持っていかれるということだ。まったくうまくできている。
わたしはぼんやりと、心理学の基礎講義を聴いていた。内容は、いわゆる心理学というものの歴史だ。
その内容は、はるか昔の大学生のころに、まるまると太った陽気な教授から教わった通りのもので、さほど目新しくはなかった。真理心理学なるものがいったいいかなるものなのかについてはなかなか教えてもらえないらしい。
プラトンがいったプシケが中世を経てさてどうなるでしょう、というところでベルが鳴った。わたしの記憶によれば、その後デカルトあたりの哲学者が出てきて心身二元論を唱えることになるのだが、これまたわたしの経験からいうと、そんなことをいくら気合いを入れて覚えてもテストには一切出てこないものである。
わたしは教室で学んでいた人々と同じように、テキストをまとめて鞄に入れると、席から立ち上がった。教室内にいる人間は、学生から社会人から老人から、男女合わせて様々だった。
金がない仕事もない将来の展望もないといったところで、今の日本はまだまだ平和だというところか。
わたしは鞄を小脇に抱えて『学食』へ向かった。今は昼の十一時三十分。一時三十分までの昼休みの間に、食事を取って昼寝してくれ、という趣向らしい。個人的には、そういう趣向は大好きだ。
これで実際に役に立つ技能が学べれば申し分ないのだが、はたしてどうだか。
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~ Comment ~
うまく出来ていますね。
確かに・・・
私立の学校とかもこんなんではないでしょうか?
あと、昼休みが長いのがうらやましいです・・・
確かに・・・
私立の学校とかもこんなんではないでしょうか?
あと、昼休みが長いのがうらやましいです・・・
- #746 ネミエル
- URL
- 2010.01/26 01:05
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わたしも、大学に入学したころにはその時間割の柔軟性にここは天国ではないかと思いました。
その後で、授業についていくには高校とは質の違った「ハードな勉強」をしなければならないことを身体に叩き込まれて、ひいひいいいながら本をめちゃくちゃ読んだことを覚えています。それ以来、わたしは学者というものをよりいっそうの尊敬のまなざしでながめるようになったのでした。どっとはらい。