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    読書日記

    「傷心」読む

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     デイヴィッド・ハンドラーといえば、むろん、「ホーギー&ルル」シリーズの作者である。「80年代を代表する作家」といわれながら第二作目の長編小説が絶望的なまでの酷評に終わり、有名女優の奥さんにも逃げられ、出版のめども立たず有名人の自叙伝のゴーストライターをする、まあ、屈折したインテリ有名人の、まあなんというかパッとしない男であるホーギーことスチュアート・ホーグが、ゴーストライターとしてかかわった有名人たちの病んですさんだ私生活と、それが引き起こす殺人事件に巻き込まれ、心ならずも探偵役のような役回りをする羽目になる話である。「ルル」とはホーギーの飼っているいろいろとアクの強いメスのバセットハウンド犬。

     とにかく、第一作「笑いながら死んだ男」から、「真夜中のミュージシャン」「フィッツジェラルドを目指した男」「猫と針金」「女優志願」に続く五冊は、ドラマ的にもミステリ的にも、90年代前半を代表する傑作ぞろいであった。苦いジョークを書かせたらこのころのハンドラーにかなう人間はいない。「女優志願」が出たあとでしばらく発表が途絶え、3年後に満を持して「自分を消した男」が出たのだが……まあこれがひどい作品であった。同じ作家が書いたのか、と思うほど冗長なうえ、ミステリ的にも「こらあかん」と思われるような真相が用意されていたのである。少なくとも、これでガクッとファンが減ったらしい。当時のわたしも、ハンドラーを見限った。

     それから幾星霜。21世紀に入って古本屋を冷かしていたら、シリーズの続編2冊を百均棚に見つけたので買った。読もうか、とも思ったが、どう考えても地雷である。積読状態にして数年。そろそろ読んでもいいかな、と思ってバーミヤンにもっていって読んでみた。で、思ったことだが、やっぱり往年の冴えはなかったのである。

     なんというか、残酷な真実を突きつけられた感じである。長年にわたってシリーズを書いていると、作者は年を取る。当たり前の話である。そして、作者が年を取ると、作中人物も年を取るのだ。同じ18歳の若者を描いているつもりでも、36の人間が描く18歳と、45の人間が描く18歳とでは、残酷なまでに差が出てくるのである。作中のトリックでも同じだ。気力充溢していたときのトリックと、不惑を過ぎて疲れてきた人間の考える趣向やトリックが同じ水準のわけがない。

     本書「傷心」では、往年のハンドラーだったら「大詰めで警察が犯人として逮捕するがホーギーが逆転で無罪を証明する」ような見え見えの人間が、そのまま犯人である、という結末がいただけない。老いたな、という感じである。ホーギーもすっかりじじむさくなってしまったし、うーん、「殺人小説家」読むのが怖いなあ。まあ積んでいてもあれだからなあ。読むか……。
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    ~ Comment ~

    Re: ハヤシさん

    ハンドラーもすっかり「忘れられた小説家」になっちまいましたなあ。

    2012年の作品が最後らしいですねウィキペディアによると。

    まだ生きてはいるみたいなんですが。それとも完全にテレビドラマに転向しちゃったのかなあ。

    最初の三冊は素晴らしい、特に『フィッツジェラルドを目指した男』は鮮やかな幕切れも忘れ難い名作でした。『殺人小説家』は初期の軽妙さが希薄になりシリアスな面ばかりが目立ってしまいホーギー物の軽妙な魅力が薄くなったことは否めず…。しかしハンドラーの名を久々に目にしました。改めて読み返したく思います
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