「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 8-2
「だいたい、先生、カルトに腰まで漬かった人につきものの思考形態をとっていますよ。気づいてらっしゃいますか?」
「カルト!」
わたしは怒りを感じた。
一瞬後、わたしはいったいなにをしにあの教団のもとへ行ったのかを思い出した。
思い出せただけ幸運だった。わたしは自分の頬に張り手を見舞った。
「ど、どうかしました、先生?」
今度びっくりするのは島田春江のほうだった。わたしは苦笑いした。
「いや、島田さん、あなたがいてくれて助かった。ほんとうの話だ。自分を見失いそうになったらこれからも助けてくれ」
島田春江は、ちょっと不審そうな顔をしていたが、すぐに真面目な顔に戻った。
「ということは、先生、あの教団のインチキなところになにか気がついたんですか」
「いや、必ずしもそうじゃないが……」
「そういえば今日は、帰ってくる予定時刻を大幅にオーバーしてらっしゃいましたね。聞かせていただきますよ、いったいあの教団で、その後なにがあったんですか?」
「あの後か」
今日のことだ。忘れるわけがなかった。忘れるには刺激が強すぎた。
「たしかに、わたしはカルトに籠絡されやすい人間らしいな。わたしに起こったことは、カルトによる籠絡以外のなにものでもないからな」
「どういう……?」
「まあ聞いてくれ」
「学長先生」を見送ってから、わたしは『学食』に戻った。
さっきいたテーブルに戻ると、そこでは尾道夫人をはじめとするあの三人の婦人が陣取っていた。
わたしがこの席に座ることができたのもこの婦人がたのおかげだろう。念のために鞄を抱えて階下へ降りたのだから。
ありがたいことに、テーブルの上にまだBランチは載っていた。わたしは席について食事の続きにとりかかった。
ランチはすっかり冷め切っていたが、まだまだ食える味をしていた。学食のシェフとしてはいい仕事をしている。
麻婆豆腐の最後のひとすくいをすくい取り、最後のご飯とともに口に入れてから、残しておいた最後の味噌汁のひとすすりをすすった。ようやく人心地がつく。
「あの……」
尾道夫人はわたしの声に、マシンガンのような言葉の奔流で答えた。
「……どうでした桐野さん! すごかったでしょ。すごかったでしょ。学長先生に比べれば、宮沢りえなんてそこらの野暮ったいお姉さんですよ。一度言葉をかけてもらえるだけで、もうあたしなんか。あたしなんか」
「カルト!」
わたしは怒りを感じた。
一瞬後、わたしはいったいなにをしにあの教団のもとへ行ったのかを思い出した。
思い出せただけ幸運だった。わたしは自分の頬に張り手を見舞った。
「ど、どうかしました、先生?」
今度びっくりするのは島田春江のほうだった。わたしは苦笑いした。
「いや、島田さん、あなたがいてくれて助かった。ほんとうの話だ。自分を見失いそうになったらこれからも助けてくれ」
島田春江は、ちょっと不審そうな顔をしていたが、すぐに真面目な顔に戻った。
「ということは、先生、あの教団のインチキなところになにか気がついたんですか」
「いや、必ずしもそうじゃないが……」
「そういえば今日は、帰ってくる予定時刻を大幅にオーバーしてらっしゃいましたね。聞かせていただきますよ、いったいあの教団で、その後なにがあったんですか?」
「あの後か」
今日のことだ。忘れるわけがなかった。忘れるには刺激が強すぎた。
「たしかに、わたしはカルトに籠絡されやすい人間らしいな。わたしに起こったことは、カルトによる籠絡以外のなにものでもないからな」
「どういう……?」
「まあ聞いてくれ」
「学長先生」を見送ってから、わたしは『学食』に戻った。
さっきいたテーブルに戻ると、そこでは尾道夫人をはじめとするあの三人の婦人が陣取っていた。
わたしがこの席に座ることができたのもこの婦人がたのおかげだろう。念のために鞄を抱えて階下へ降りたのだから。
ありがたいことに、テーブルの上にまだBランチは載っていた。わたしは席について食事の続きにとりかかった。
ランチはすっかり冷め切っていたが、まだまだ食える味をしていた。学食のシェフとしてはいい仕事をしている。
麻婆豆腐の最後のひとすくいをすくい取り、最後のご飯とともに口に入れてから、残しておいた最後の味噌汁のひとすすりをすすった。ようやく人心地がつく。
「あの……」
尾道夫人はわたしの声に、マシンガンのような言葉の奔流で答えた。
「……どうでした桐野さん! すごかったでしょ。すごかったでしょ。学長先生に比べれば、宮沢りえなんてそこらの野暮ったいお姉さんですよ。一度言葉をかけてもらえるだけで、もうあたしなんか。あたしなんか」
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