「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 12-2
「様子といっても」
わたしは口ごもるしかなかった。
「まだ聴講生になったばかりだ。詳しいことはなにも教えてもらっていないよ。それに、こういう調査はとても時間がかかるものなんじゃないか。北村さんみたいにプロの探偵として訓練を受けたわけじゃないからよくわからないが」
「それでも、第一印象とかあるでしょう。入った感じはどうでしたか?」
わたしはビッグマックをかじった。
「よかったよ」
聞かれたことは正直に語るつもりだった。聞かれなかったことについては知らないが。
「とてもフレンドリーでいい感じだった。あそこだけ見ただけでは、みんな和気藹々としていて、文科系大学の文科系サークル活動といっても通用するんじゃないかと思ったくらいだ。もっとも、わたしが専攻していた学部は文系でもなければ、サークルも体育会系だったがね」
「射撃部でしたね」
北村はコップの蓋を開けてひとすすりした。どうやらカフェラテらしい。個人的には、カフェラテを飲んでいると、最後に残ったあの泡がもったいなくてたまらなくなるので、好んで飲もうとは思わない。我ながら貧乏性である。
「でも、桐野さん、第一印象というのは、思うよりも重要です。ですから……」
「わかっている。わたしの職業でも、第一印象の重要性はいつも肌身に感じているから安心してくれ。もっとも、第一印象だけで判断すると過るけどな」
わたしはポテトにケチャップをつけてかじった。ケチャップをつけて食べることでさほどうまくなるとは思わないが、サービスされると、ついつい使ってしまうのである。貧乏性も窮まれりだ。
「建物のあちこちを見た。湯水のように金が使われていることは、ハーバードで経済学を専攻しなくてもわかる。わたしを案内してくれた杉内という男は、二百億ではできなかった、といってたな。話半分、いや話四分の一としても、数十億はかかっているだろう。大半は借入金だろうが、その持っている集金力は半端じゃないな。経営顧問を抱き込めたら、わたしの診療所も二十年としないうちに順天堂大学になれるかもしれん」
北村は苦笑した。
「桐野さんにはそんなあこぎな金集めはできませんよ。ほかには?」
わたしは首を振った。
「わたしがあの団体に潜入して、いったい何日経ったと思っているんだ。まだひと月にもならないんだぞ。そんな中で、いったいなにを……」
「桐野さん。話を避けなくてもいいんです」
北村はアナウンサーが飛行機事故のニュースでも読むかのような口調でいった。
わたしは口ごもるしかなかった。
「まだ聴講生になったばかりだ。詳しいことはなにも教えてもらっていないよ。それに、こういう調査はとても時間がかかるものなんじゃないか。北村さんみたいにプロの探偵として訓練を受けたわけじゃないからよくわからないが」
「それでも、第一印象とかあるでしょう。入った感じはどうでしたか?」
わたしはビッグマックをかじった。
「よかったよ」
聞かれたことは正直に語るつもりだった。聞かれなかったことについては知らないが。
「とてもフレンドリーでいい感じだった。あそこだけ見ただけでは、みんな和気藹々としていて、文科系大学の文科系サークル活動といっても通用するんじゃないかと思ったくらいだ。もっとも、わたしが専攻していた学部は文系でもなければ、サークルも体育会系だったがね」
「射撃部でしたね」
北村はコップの蓋を開けてひとすすりした。どうやらカフェラテらしい。個人的には、カフェラテを飲んでいると、最後に残ったあの泡がもったいなくてたまらなくなるので、好んで飲もうとは思わない。我ながら貧乏性である。
「でも、桐野さん、第一印象というのは、思うよりも重要です。ですから……」
「わかっている。わたしの職業でも、第一印象の重要性はいつも肌身に感じているから安心してくれ。もっとも、第一印象だけで判断すると過るけどな」
わたしはポテトにケチャップをつけてかじった。ケチャップをつけて食べることでさほどうまくなるとは思わないが、サービスされると、ついつい使ってしまうのである。貧乏性も窮まれりだ。
「建物のあちこちを見た。湯水のように金が使われていることは、ハーバードで経済学を専攻しなくてもわかる。わたしを案内してくれた杉内という男は、二百億ではできなかった、といってたな。話半分、いや話四分の一としても、数十億はかかっているだろう。大半は借入金だろうが、その持っている集金力は半端じゃないな。経営顧問を抱き込めたら、わたしの診療所も二十年としないうちに順天堂大学になれるかもしれん」
北村は苦笑した。
「桐野さんにはそんなあこぎな金集めはできませんよ。ほかには?」
わたしは首を振った。
「わたしがあの団体に潜入して、いったい何日経ったと思っているんだ。まだひと月にもならないんだぞ。そんな中で、いったいなにを……」
「桐野さん。話を避けなくてもいいんです」
北村はアナウンサーが飛行機事故のニュースでも読むかのような口調でいった。
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