「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 13-4
その可能性については考えたこともなかった。
「マインド・コントロールか。オウム真理教がやろうとして失敗したやつだな」
わたしはオレンジジュースをすすり、もうひと口すすった。かなり氷が溶けて、水っぽくなっていた。
「そこまで心配する必要はないんじゃないのか。人間の精神をコントロールすることなんか、いまの科学では……」
「そんな科学の話をしているわけじゃありません」
北村は厳しい声でいった。
「わたしがいっているのは、古典的な詐術と詭弁の話です。桐野さんがおっしゃられた話と、これまでにわたしどものほうで調べた事実とを総合すると、あの団体はかなりのコールドリーディングの使い手のようです。桐野さんが夢で見たことを、言葉巧みに聞き出して、それにもっともらしい理屈をつけるくらいのことはやりかねない、そう考えるべきだと思いますが」
わたしはしばらく考えた。
「そうだとしても、夢に入らなければならないことには変わりはないだろうな。万一、あの学長と団体がペテン師の集団とその頭目だったとしても、夢に入って実際に自分で確かめない限りは、本物か偽物かの判断ひとつすらできない」
わたしはビッグマックの最後のひとかけらを飲み下した。
「行くしかないね、北村さん。北村さんのいうとおりに、罠かもしれないが、そこに足を自分から突っ込んでいかなければならないみたいだ」
「そういうことですか」
北村は堅い表情をしていた。
「桐野さん」
「なんだ?」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ということわざは真実ですが、どうかお気をつけてください」
「大丈夫だ。わたしはナイトメア・ハンターだ。君が探している虎子、あの団体が隠しているかもしれない秘密の一端を、きっとつかんできてみせるさ」
わたしはジュースとポテトを口の中に急いで放り込むと、ゴミの載ったトレイを持って立ち上がった。
「もう行くんですか?」
北村は、なんとかバーガーを手にしたままで尋ねてきた。
「ああ。腹ごしらえは済んだんでね」
「急ぐ用事でも?」
「あるんだ」
わたしはうなずいた。
「学長と夢に入る日というのは、実は今日、これからなんだ。虎子は必ず得る。期待して待っててくれ」
わたしは絶句した北村を置いて店を出た。
「マインド・コントロールか。オウム真理教がやろうとして失敗したやつだな」
わたしはオレンジジュースをすすり、もうひと口すすった。かなり氷が溶けて、水っぽくなっていた。
「そこまで心配する必要はないんじゃないのか。人間の精神をコントロールすることなんか、いまの科学では……」
「そんな科学の話をしているわけじゃありません」
北村は厳しい声でいった。
「わたしがいっているのは、古典的な詐術と詭弁の話です。桐野さんがおっしゃられた話と、これまでにわたしどものほうで調べた事実とを総合すると、あの団体はかなりのコールドリーディングの使い手のようです。桐野さんが夢で見たことを、言葉巧みに聞き出して、それにもっともらしい理屈をつけるくらいのことはやりかねない、そう考えるべきだと思いますが」
わたしはしばらく考えた。
「そうだとしても、夢に入らなければならないことには変わりはないだろうな。万一、あの学長と団体がペテン師の集団とその頭目だったとしても、夢に入って実際に自分で確かめない限りは、本物か偽物かの判断ひとつすらできない」
わたしはビッグマックの最後のひとかけらを飲み下した。
「行くしかないね、北村さん。北村さんのいうとおりに、罠かもしれないが、そこに足を自分から突っ込んでいかなければならないみたいだ」
「そういうことですか」
北村は堅い表情をしていた。
「桐野さん」
「なんだ?」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ということわざは真実ですが、どうかお気をつけてください」
「大丈夫だ。わたしはナイトメア・ハンターだ。君が探している虎子、あの団体が隠しているかもしれない秘密の一端を、きっとつかんできてみせるさ」
わたしはジュースとポテトを口の中に急いで放り込むと、ゴミの載ったトレイを持って立ち上がった。
「もう行くんですか?」
北村は、なんとかバーガーを手にしたままで尋ねてきた。
「ああ。腹ごしらえは済んだんでね」
「急ぐ用事でも?」
「あるんだ」
わたしはうなずいた。
「学長と夢に入る日というのは、実は今日、これからなんだ。虎子は必ず得る。期待して待っててくれ」
わたしは絶句した北村を置いて店を出た。
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~ Comment ~
NoTitle
ポールさん・・・・・・。
もしかして先日の私の記事「感想うんぬん」に対するコメントで落ち込んでますか?
だとしたらスミマセン。
別にポールさんを責めたつもりはなかったのです。
またお気軽にコメントくださいね。
もしかして先日の私の記事「感想うんぬん」に対するコメントで落ち込んでますか?
だとしたらスミマセン。
別にポールさんを責めたつもりはなかったのです。
またお気軽にコメントくださいね。
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Re:ヒロハルさん
落ち込んでいたというよりは、怖くなってしまったんです。
もしかしたらまたヒロハルさんに不快な思いをさせてしまうかもしれないと思って。
小説は毎回読みに行ってますから、とりあえず心配なさらないでください。
また気が向いたときにそちらにコメントさせていただきますのでよろしくお願いします。