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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    4 天使を吊るせ(完結)

    天使を吊るせ 14-1

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    14

     『麗澄真理心理学研究所』までは、今日は車ではなくて電車とバスを使うつもりでいた。普通だったらあんな山の中まで路線バスが通るはずもないのだが、教団が無料バスの送迎サービスを行なっているのである。無料とあれば、いっぺん試してみるのも悪くはあるまい。
     もちろん、これには他の理由もあった。もしも、わたしが教団に対してなにか、「知ってほしくない真実」を知ってしまった場合、車に細工されるのを避けるというのがそれである。北村のいうとおり、弁護士と家族が死ぬことになったあの事故がほんとうに謀殺だったら、二の舞を演ずるようなことはしたくなかった。大量の信者の善男善女といっしょならば、目立った形で害を加えようとすることは避けるはずだ。少なくとも、わたしのビートルにブレーキがきかなくなるなどの細工をするとか、または爆薬を使って一気にどかーん、などということからは逃れられるだろう。
     八王子駅から列車とバスを乗り継いで、『麗澄真理心理学研究所』本部にたどりついたときには、わたしは「殺しの四人」をあらかた読み終えていた。池波正太郎、思っていたよりもかなり面白いではないか。北方謙三を男のハーレクイン・ロマンスだなどといっていたやつがいたが、どちらかといえばこうした時代小説群のほうが、よりハーレクインには近いのではないだろうか。少なくとも、習慣性だけは酒やタバコ並みにある。活字が大好きな日本人がこんなの読んでいたら確実に中毒するだろう。
     いつまでもカップ麺一辺倒はやめて、小説の中で藤枝梅安が実にうまそうに食っていた日本食を自作してみるか、などと考えながら入り口をくぐった。
     一歩中に入って、わたしは時計を確認した。来るといっておいた時間までにはまだ十五分あった。
     学食の自販機でジンジャーエールでも買って飲もうか、と、奥の階段に足を向けたとき、見覚えのある顔がわたしのそばに足早にやってきた。
    「桐野さん、時間通りですね」
     杉内だった。
     わたしはいつになく真面目な顔をして微笑んでいる杉内の顔を見て、なんて器用なやつなんだと思った。
    「桐野さん、なにか変なことを考えたでしょう」
     杉内の声に、わたしはちょっとどきっとした。コールドリーディングの実践にすぎないのだろうが、やっぱり動揺するものだ。
    「いえ、たいしたことではありません」
     この研究所がこういう質問に対して自分の内心を隠す方法も教えてくれるのなら、ぜひとも技術をマスターしたいものである。
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    ~ Comment ~

    Re: しのぶもじずりさん

    まあ昔から、よくあることです(^^)

    柴田先生、「おれの名はムラサキダネリサブロウじゃない」、とことあるごとにこぼしていたそうですから(^^)

    「紫田練三郎先生」などと書いたファンレターや原稿依頼がたくさん届いたんでしょうなあ。

    いや実話(^^)

    くっそー

    変換ミスで~す。

    現代物は読んでません。
    機会があれば、探してみます。

    Re: しのぶもじずりさん

    柴田連三郎は読んだことがありませんねえ。

    似た人で、柴田錬三郎先生の作品だったら「赤い影法師」とか「柴錬立川文庫」とか好きな作品もあるのですが……なんてことを書くからわたしは嫌われる(^^;)

    まあ、冗談はおいといて、柴田先生の作品は、図書館に全集があったので、もっと齢を取ってから、ゆっくり「眠狂四郎無頼控」から全部読んでやろうと思っています(^^)

    ところで、柴田先生の現代小説は読んだことがありますか?

    「チャンスは三度ある」という本を読みましたが、これがまたムヤミヤタラに面白い作品であります。昭和三十年代から四十年代の、高度経済成長時まっただ中の様子がまざまざと感じられて楽しいですよ(^^) けっこう登場人物の倫理観が古風だったりして(笑)

    時代小説は、日本のファンタジーなのだ。と、時代小説を馬鹿にした友人に力説した事があります。

    柴田連三郎は読みませんか。
    顔に似合わず 色っぽい文章で 驚きます。

    Re: 佐槻勇斗さん

    実は杉内さんは。

    ……いかがわしい人物ってことで(^^)

    わたしは池波正太郎先生の「鬼平」「剣客商売」「梅安」シリーズと、岡本綺堂先生の「半七捕物帳」シリーズ、それに宮本昌孝先生の「藩校早春賦」シリーズがあれば無人島で一年暮しても退屈しないで済むのではと思います(……本当か?)。

    NoTitle

    杉内さん、なんか胡散臭いヽ('▽'*)
    そして、研究所はまだまだ謎が多そうで怖いですね汗

    時代小説は面白いですよね
    佐槻は宮部みゆきさんと藤沢周平さんの作品が好きですv
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