「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 20-2
「さて」
北村は姿勢を正してわたしを見た。
「虎子のほうはどうなりましたか、桐野さん?」
わたしはテーブルの水をひと口飲んで、唇を湿した。
「北村さんが思っているような虎子は得られなかった」
「ほう?」
わたしは首を振った。
「だが、北村さんが思っていないような虎子は手に入れた。普通だったら手に入れることなどできないような情報だ。滅多にないぞ、沢守澄麗学長の独占インタビューなんてものは」
「誰かに話されましたか?」
わたしは目を伏せた。
「経験はあると思うが、わたしの事務所には、わたしの操縦法だったら実によく心得ている、詮索が大好きなおっかない中年女性がいるんだ」
「島田さんですね。お会いしたことはありませんが」
「で、その尋問能力は特高警察かゲシュタポ並みにあるんだ。というわけで、わたしのこの情報も、残念ながら本邦初公開ではないんだ」
「配給ルートに乗っていないようだから許容します。能書きはいいですから、早く聞き出したことを教えてください」
「ああ」
わたしは厨房をちらりと見た。ステーキはまだ焼けないらしい。
「まず、麗澄真理心理学研究所の根本的な信仰対象がなんなのか、ということだが……」
「『真理』じゃなかったんですか? あの、教祖が書いたとかいう聖筆」
「表向きにはそうなっている。だが、高位に進むと裏が明かされる」
「……裏?」
北村は心もち身を乗り出してきた。
わたしは苦笑いした。
「そういうものじゃない。気がついたら悪魔崇拝の片棒を担がされていたとか、そういうことじゃないんだ」
わたしは額に手を当てた。
「いいかたが悪かったな。あの団体が崇めているのは、真理で間違いはない。しかし、その真理というものは、徹頭徹尾沢守澄麗の内的体験に基づく『真理』なんだ」
「どんな真理なんです?」
「沢守澄麗の話によると、こうだ。ここから先は、あの団体自体の神学にも関わってくるんだが……」
北村はポーカーフェイスを作っていた。アナウンサーみたいな顔に隠れて、内心がどうもうかがい知れない。
ままよ。
「沢守澄麗は、夢をこんなふうにとらえている」
北村は姿勢を正してわたしを見た。
「虎子のほうはどうなりましたか、桐野さん?」
わたしはテーブルの水をひと口飲んで、唇を湿した。
「北村さんが思っているような虎子は得られなかった」
「ほう?」
わたしは首を振った。
「だが、北村さんが思っていないような虎子は手に入れた。普通だったら手に入れることなどできないような情報だ。滅多にないぞ、沢守澄麗学長の独占インタビューなんてものは」
「誰かに話されましたか?」
わたしは目を伏せた。
「経験はあると思うが、わたしの事務所には、わたしの操縦法だったら実によく心得ている、詮索が大好きなおっかない中年女性がいるんだ」
「島田さんですね。お会いしたことはありませんが」
「で、その尋問能力は特高警察かゲシュタポ並みにあるんだ。というわけで、わたしのこの情報も、残念ながら本邦初公開ではないんだ」
「配給ルートに乗っていないようだから許容します。能書きはいいですから、早く聞き出したことを教えてください」
「ああ」
わたしは厨房をちらりと見た。ステーキはまだ焼けないらしい。
「まず、麗澄真理心理学研究所の根本的な信仰対象がなんなのか、ということだが……」
「『真理』じゃなかったんですか? あの、教祖が書いたとかいう聖筆」
「表向きにはそうなっている。だが、高位に進むと裏が明かされる」
「……裏?」
北村は心もち身を乗り出してきた。
わたしは苦笑いした。
「そういうものじゃない。気がついたら悪魔崇拝の片棒を担がされていたとか、そういうことじゃないんだ」
わたしは額に手を当てた。
「いいかたが悪かったな。あの団体が崇めているのは、真理で間違いはない。しかし、その真理というものは、徹頭徹尾沢守澄麗の内的体験に基づく『真理』なんだ」
「どんな真理なんです?」
「沢守澄麗の話によると、こうだ。ここから先は、あの団体自体の神学にも関わってくるんだが……」
北村はポーカーフェイスを作っていた。アナウンサーみたいな顔に隠れて、内心がどうもうかがい知れない。
ままよ。
「沢守澄麗は、夢をこんなふうにとらえている」
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Re: ネミエルさん
大丈夫です。桐野くんがこれからたっぷり話してくれます。