「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 22-3
「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっとそれですか! そんな大きなものを……」
「気持ちです。気持ち。わたしのポケットマネーで買った物ですから、そう深く考えないでください」
沢守澄麗は重そうに両手で抱えたその箱を、わたしに手渡そうとした。
恐縮しながら受け取ろうとしたわたしは、その思いもかけぬ重さにふらっとした。
わたしがまんざら知らないわけではない重さだった。
わたしは沢守澄麗に向き直った。
「開けていいですか、沢守さん」
どうぞ、の言葉の前にわたしは箱を開けていた。
中にはケースが入っていた。わたしの見覚えのあるケースだった。大学のころはこれなしではいられなかったものだ。
わたしはケースを開けた。
「ヘッケラー&コッホ・HK502……」
まぎれもなく、わたしがかつて大学の射撃部で愛用していたものと同じタイプの散弾銃だった。
「同梱の書類にサインしてくださりさえすれば、この銃は桐野さんのものですよ。ものがものですから、島田さんに渡して開けられでもすると銃刀法違反になってしまいますので……」
「学長先生」
わたしはたまらない嬉しさを覚えつつも、理性を総動員して沢守澄麗にいった。
「島田さんはともかく、あなたが持っていても銃刀法違反では……」
「わたしは免許を持っています」
「え?」
「一時期、母とわたしは、野山で鳥でも撃たなければ食事が出来ないくらいに追い詰められていました。それに、治安の悪い南米では、武器のひとつくらい使いこなせないと悪人たちのいいカモとなってしまいます。説教と博愛心に頼り切るには、母もわたしも現実主義者なんです。わたしたちの団体の活動を見ていればおわかりでしょうけど」
そう語ることばのひとつひとつが痛快だった。わたしはにやりと笑いたくなるのをこらえた。
「でも、ここは日本で……」
「ええ。ですからこの銃は単発の、合法的なものです。クレー射撃をするのであれば、これで充分ですしね」
「澄麗さんもお上手なんですか?」
「アマゾンのジャングルで生き残れるくらいには」
沢守澄麗はそういうと朗らかに笑った。
わたしたちも笑い、ふと時計を見た。
「なんてこった。もう診療所を開ける時間じゃないか。飯も食ってないのに」
「そんなことだと思って」
沢守澄麗はショルダーバッグを開けた。
「サンドイッチ作ってきました」
「気持ちです。気持ち。わたしのポケットマネーで買った物ですから、そう深く考えないでください」
沢守澄麗は重そうに両手で抱えたその箱を、わたしに手渡そうとした。
恐縮しながら受け取ろうとしたわたしは、その思いもかけぬ重さにふらっとした。
わたしがまんざら知らないわけではない重さだった。
わたしは沢守澄麗に向き直った。
「開けていいですか、沢守さん」
どうぞ、の言葉の前にわたしは箱を開けていた。
中にはケースが入っていた。わたしの見覚えのあるケースだった。大学のころはこれなしではいられなかったものだ。
わたしはケースを開けた。
「ヘッケラー&コッホ・HK502……」
まぎれもなく、わたしがかつて大学の射撃部で愛用していたものと同じタイプの散弾銃だった。
「同梱の書類にサインしてくださりさえすれば、この銃は桐野さんのものですよ。ものがものですから、島田さんに渡して開けられでもすると銃刀法違反になってしまいますので……」
「学長先生」
わたしはたまらない嬉しさを覚えつつも、理性を総動員して沢守澄麗にいった。
「島田さんはともかく、あなたが持っていても銃刀法違反では……」
「わたしは免許を持っています」
「え?」
「一時期、母とわたしは、野山で鳥でも撃たなければ食事が出来ないくらいに追い詰められていました。それに、治安の悪い南米では、武器のひとつくらい使いこなせないと悪人たちのいいカモとなってしまいます。説教と博愛心に頼り切るには、母もわたしも現実主義者なんです。わたしたちの団体の活動を見ていればおわかりでしょうけど」
そう語ることばのひとつひとつが痛快だった。わたしはにやりと笑いたくなるのをこらえた。
「でも、ここは日本で……」
「ええ。ですからこの銃は単発の、合法的なものです。クレー射撃をするのであれば、これで充分ですしね」
「澄麗さんもお上手なんですか?」
「アマゾンのジャングルで生き残れるくらいには」
沢守澄麗はそういうと朗らかに笑った。
わたしたちも笑い、ふと時計を見た。
「なんてこった。もう診療所を開ける時間じゃないか。飯も食ってないのに」
「そんなことだと思って」
沢守澄麗はショルダーバッグを開けた。
「サンドイッチ作ってきました」
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NoTitle
サンドウィッチ!!Σ(゚ロ゚ノ)ノ
まさかの学長さんの手作りですか!?
・・・くぅ、うらやましいぜ先生。美人の手作りを独り占めとは(睨
にしてもさすが学長ですね;;
アマゾンのジャングルで生き残れる自信ありとは・・・;;
そんなことさらっと、目映いほどの笑みと共に言われたら、もう押し倒しちゃうんだz(黙
まさかの学長さんの手作りですか!?
・・・くぅ、うらやましいぜ先生。美人の手作りを独り占めとは(睨
にしてもさすが学長ですね;;
アマゾンのジャングルで生き残れる自信ありとは・・・;;
そんなことさらっと、目映いほどの笑みと共に言われたら、もう押し倒しちゃうんだz(黙
- #966 佐槻勇斗
- URL
- 2010.03/29 18:02
- ▲EntryTop
Re: ネミエルさん
誤解されるとまずいのでいっておきますが、実際に銃を買って引き渡しするにはこんなふうにお気楽には行きません。
そもそも銃の免許自体、持っている一丁の銃に対して一つの免許が必要です。
小説ではあとひと月で終わらせるためにこんなふうに書きましたが(単に調査不足ともいう(汗))、銃は正しく取得して正しく安全に使いましょう。
……なんの話をしてたんだっけ?(^^;)
そもそも銃の免許自体、持っている一丁の銃に対して一つの免許が必要です。
小説ではあとひと月で終わらせるためにこんなふうに書きましたが(単に調査不足ともいう(汗))、銃は正しく取得して正しく安全に使いましょう。
……なんの話をしてたんだっけ?(^^;)
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Re: 佐槻勇斗さん
果たして桐野くんは澄麗ちゃんを物語の終わりまでに押し倒せるでしょうか(←コラ)
物語が終わるまであと4分の1ちょっとしかないぞ(←だからなにを考えておるわたし)