「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 23-4
「……ユニオン」
その名前を聞いたのは数年ぶりだった。あのときの事件のことは、今でもボルトが入った骨の痛みとともに思い出す。
「どこでその名前を」
沢守澄麗は声を出さずに小さく笑った。
「わからないのですか? わたしは、あなたの心が読めるんですよ」
「からかうのはよしてください」
わたしは考えざるを得なかった。
沢守澄麗がユニオンや、ナイトメア・ハンターそのものとの間に深いつながりがあるのではという思いは、いわれなくても前から持っていた。夢の中で思い出を語ったときに出てきた、あの「二〇〇一年十一月、しし座流星群の日」というひとことだ。
「……それについては、是蔵忠道というわたしよりもよく知っている男がいます」
あの木彫り人形みたいなフランス文学者の顔をわたしは思った。
「どこにいらっしゃるんです?」
「わかりません。フランスのどこかにある大学に、娘と恋人をいっしょにしたような女性とともに移ってしまったらしいですから」
速水鈴音のことだ。沢守澄麗と夢に入った後、それぞれの家を訪ねて意見を聞こうと思ったら、すでにどちらも引越してかなり経つということを知ったときは落胆したものだ。
「でも、桐野さんもいくらかはご存知なんでしょう?」
「いくらかですがね」
わたしは、かつて是蔵忠道に聞いたことを思い出しながら沢守澄麗に説明した。(筆者注:桐野の説明内容については、「ナイトメアハンター桐野・1 ナイトメア・ハンターの掟 第四章」をお読みいただきたい)
沢守澄麗は、内心はどうあれ、それらを落ち着いた表情の下に隠しきっていた。
「悪辣な組織のようですね?」
「進んでお友達になりたくなるやつらじゃないようです」
沢守澄麗はうなずいた。
「わたしの夢に入る力がどこから来たのかは、ずっと謎でした」
沢守澄麗は窓の外を見た。
「力に目覚めたときの日付から、徹底的に調べたわたしは、『ユニオン』という単語にぶつかりましたが、そのときは何もつかめませんでした。ナイトメア・ハンターのあなただったらなにかご存知かもしれないと思って……」
疲れた様子で沢守澄麗は深く頭を下げた。
「ほんとうにありがとうございます、桐野さん。ちょっと疲れました。そろそろ、明石さんを呼んであげてもいいでしょうか?」
面会は終わりということらしい。わたしは頭を下げ、病室を出た。
わたしの愛の告白に対し、沢守澄麗がなにひとつ回答しなかったことに気づいたのは診療所に帰ってからである。
その名前を聞いたのは数年ぶりだった。あのときの事件のことは、今でもボルトが入った骨の痛みとともに思い出す。
「どこでその名前を」
沢守澄麗は声を出さずに小さく笑った。
「わからないのですか? わたしは、あなたの心が読めるんですよ」
「からかうのはよしてください」
わたしは考えざるを得なかった。
沢守澄麗がユニオンや、ナイトメア・ハンターそのものとの間に深いつながりがあるのではという思いは、いわれなくても前から持っていた。夢の中で思い出を語ったときに出てきた、あの「二〇〇一年十一月、しし座流星群の日」というひとことだ。
「……それについては、是蔵忠道というわたしよりもよく知っている男がいます」
あの木彫り人形みたいなフランス文学者の顔をわたしは思った。
「どこにいらっしゃるんです?」
「わかりません。フランスのどこかにある大学に、娘と恋人をいっしょにしたような女性とともに移ってしまったらしいですから」
速水鈴音のことだ。沢守澄麗と夢に入った後、それぞれの家を訪ねて意見を聞こうと思ったら、すでにどちらも引越してかなり経つということを知ったときは落胆したものだ。
「でも、桐野さんもいくらかはご存知なんでしょう?」
「いくらかですがね」
わたしは、かつて是蔵忠道に聞いたことを思い出しながら沢守澄麗に説明した。(筆者注:桐野の説明内容については、「ナイトメアハンター桐野・1 ナイトメア・ハンターの掟 第四章」をお読みいただきたい)
沢守澄麗は、内心はどうあれ、それらを落ち着いた表情の下に隠しきっていた。
「悪辣な組織のようですね?」
「進んでお友達になりたくなるやつらじゃないようです」
沢守澄麗はうなずいた。
「わたしの夢に入る力がどこから来たのかは、ずっと謎でした」
沢守澄麗は窓の外を見た。
「力に目覚めたときの日付から、徹底的に調べたわたしは、『ユニオン』という単語にぶつかりましたが、そのときは何もつかめませんでした。ナイトメア・ハンターのあなただったらなにかご存知かもしれないと思って……」
疲れた様子で沢守澄麗は深く頭を下げた。
「ほんとうにありがとうございます、桐野さん。ちょっと疲れました。そろそろ、明石さんを呼んであげてもいいでしょうか?」
面会は終わりということらしい。わたしは頭を下げ、病室を出た。
わたしの愛の告白に対し、沢守澄麗がなにひとつ回答しなかったことに気づいたのは診療所に帰ってからである。
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Re: 椿さん
沢守澄麗は書いていて楽しかったキャラクターです。いろいろと内面も複雑で。ええ……。
結末から逆算して作ったキャラクターではありますが。
結末から逆算して作ったキャラクターではありますが。
NoTitle
あれ、昨日入れたコメント名前が入ってなかった;;
下の、私です。あやしい名無しコメントで申し訳ありません;;
下の、私です。あやしい名無しコメントで申し訳ありません;;
- #14362 椿
- URL
- 2014.10/17 23:54
- ▲EntryTop
NoTitle
ゆっくり楽しもうと思っていたのに、先が気になり先が気になりで、ここまで結局読んじゃった(^_^;)
懸命な愛の告白に対して、澄麗さんの返事はユニオン。
うーん。
この恋の前途は……?
はぐらかされたのか、逆に自分をセーブしたのか、どっちだろう。
今回ようやく、作られたものじゃない、生の澄麗さんに触れられたような気のする章でした。
まだまだ謎多きヒロインですが。
続きも勢いよく読んじゃいそうです。
懸命な愛の告白に対して、澄麗さんの返事はユニオン。
うーん。
この恋の前途は……?
はぐらかされたのか、逆に自分をセーブしたのか、どっちだろう。
今回ようやく、作られたものじゃない、生の澄麗さんに触れられたような気のする章でした。
まだまだ謎多きヒロインですが。
続きも勢いよく読んじゃいそうです。
- #14359
- URL
- 2014.10/16 18:28
- ▲EntryTop
Re: ネミエルさん
きっと澄麗ちゃんはおくゆかしくて素直な返事ができないんですよ(^^)
……我ながらうそくせー(笑)
……我ながらうそくせー(笑)
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Re: 椿さん
わかってしまうわかりやすいブログであります。(笑)