「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 24-4
「時代小説によくある、君側の奸を除く、というやつですか。君主のそばにいる悪人を除けば、全てがうまくいくっていう」
「いけないか?」
北村は首を振った。
「悪い考えではありませんがね、桐野さん。その考え方は、いつの世でもお家騒動と、それに伴う混乱と破壊と悲劇を生み出すもととなってきたんですよ」
「知ってるよ。それでもわたしには、これしかできないだけさ」
「なるほど」
北村は声のトーンをやや変えた。
「それで、証拠はつかめているんですか」
わたしは言葉を濁さざるを得なかった。
「……いや」
「弁護士一家謀殺疑惑は」
「それもまだだ。薬はいいとして、弁護士一家の事件は、考えすぎじゃないのか。あの人がそんな恐ろしい団体を作るとは思えない」
「すべては証拠が語ることです」
「残酷だな」
北村は首を振った。
「残酷になるかならないかは、証拠が決めることでしょうね。とりあえず桐野さん、鍵はやはり学長の沢守澄麗さんにありそうです。とりあえず、できる限り彼女に張り付いていてください。ほかのことは放っておいてかまいません」
「……そうか?」
できる限り沢守澄麗に張り付いていろというのは願ってもない指示だったが、それはわたしのこの事態全体に対する見かたと反するものだった。
「どうかしましたか?」
「いや……」
「頼みましたよ」
北村は立ち上がった。
「さっきのことをお忘れなく。どうも、澄麗嬢もこの射撃場に来ているみたいですからね」
「なんだって!」
わたしもがばっと立ち上がろうとした。
北村は手で制した。
「大丈夫です。自分がなにをやっているのかは心得ていますよ。素人に見つかるほど焼きは回っていません。いいですか、できる限り彼女から目を離さないように。それでは」
北村は去っていった。
わたしは銃のケースを抱え、慌てて沢守澄麗を探しにかかった。
沢守澄麗は意外と簡単に見つかった。彼女はわたしに気づくと、射撃をやめた。二連銃によるスキートだった。成績にちらりと目をやると、なかなかの腕だった。
わたしたちは何気ない言葉を交わした。
最後に沢守澄麗はこういった。
「……できれば、次の水曜の午後、ちょっとつきあってもらえませんか? 桐野さんと行きたいところがあるんです」
「いけないか?」
北村は首を振った。
「悪い考えではありませんがね、桐野さん。その考え方は、いつの世でもお家騒動と、それに伴う混乱と破壊と悲劇を生み出すもととなってきたんですよ」
「知ってるよ。それでもわたしには、これしかできないだけさ」
「なるほど」
北村は声のトーンをやや変えた。
「それで、証拠はつかめているんですか」
わたしは言葉を濁さざるを得なかった。
「……いや」
「弁護士一家謀殺疑惑は」
「それもまだだ。薬はいいとして、弁護士一家の事件は、考えすぎじゃないのか。あの人がそんな恐ろしい団体を作るとは思えない」
「すべては証拠が語ることです」
「残酷だな」
北村は首を振った。
「残酷になるかならないかは、証拠が決めることでしょうね。とりあえず桐野さん、鍵はやはり学長の沢守澄麗さんにありそうです。とりあえず、できる限り彼女に張り付いていてください。ほかのことは放っておいてかまいません」
「……そうか?」
できる限り沢守澄麗に張り付いていろというのは願ってもない指示だったが、それはわたしのこの事態全体に対する見かたと反するものだった。
「どうかしましたか?」
「いや……」
「頼みましたよ」
北村は立ち上がった。
「さっきのことをお忘れなく。どうも、澄麗嬢もこの射撃場に来ているみたいですからね」
「なんだって!」
わたしもがばっと立ち上がろうとした。
北村は手で制した。
「大丈夫です。自分がなにをやっているのかは心得ていますよ。素人に見つかるほど焼きは回っていません。いいですか、できる限り彼女から目を離さないように。それでは」
北村は去っていった。
わたしは銃のケースを抱え、慌てて沢守澄麗を探しにかかった。
沢守澄麗は意外と簡単に見つかった。彼女はわたしに気づくと、射撃をやめた。二連銃によるスキートだった。成績にちらりと目をやると、なかなかの腕だった。
わたしたちは何気ない言葉を交わした。
最後に沢守澄麗はこういった。
「……できれば、次の水曜の午後、ちょっとつきあってもらえませんか? 桐野さんと行きたいところがあるんです」
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