「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 26-3
沈んでいく間に、わたしがなにを見たのかについては、思い出せない、いや、思い出したくない、というのが正直なところだ。
沢守澄麗の口を借りて天使はささやく。
「見ようと思ってはいけません。降りながらあなたが見るものはほとんどすべて躓きの石です。わたしたち人間よりも、ある意味根本的に『低位』なものたちが見る夢は、ナイトメア・ハンターのあなたでさえも想像もつかないような苦痛に満ちたものなのです……」
わたしは目をつぶって精神を統一し、乗り切ろうとしたが、周囲から流れてくる「異質」でありながら根本的な点で「同種」の負の波動は、わたしの精神を激しく揺さぶった。
どれほどの時間が経ったのか、わたしにわからなくなったころ、沢守澄麗が語りかけてきた。
「ついにたどり着きました。ここが、夢世界の最底辺に位置する、『源夢』の世界です」
わたしは精神集中をやめ、目を開こうとした。
「……いけません! ここは、慣れていないと地獄に見える、悲しみと苦悶の異界です。いましばらくは目を閉じて、周囲の影響を受けないように精神を集中させてください」
「いつまでですか」
「小野瀬くんの精神の根幹にたどり着くまでです。狂気に墜ちた人々の魂はこの世界で小さな結晶となって沈んでいるはずですから」
「なぜそれが……」
「わたしはいつも、夢に入るときに最初にこの世界を通ってくるんです。最初はただ感じるだけでしたが、桐野さんに目を作ってもらってからは実際に見ることもできるようになりました。少し、探すのに集中します」
わたしにとっては無限ともいえる時間が過ぎたように感じた。
やがて、天使は安堵の声を上げた。
「……見つかりました。桐野さん、これからある種のバリアのようなものを展開します。わたしがいいというまで目を閉じていてください。そうしたら、あなたの持つ夢世界での能動的な力を使って、小野瀬くんの結晶を拾い上げ、わたしの身体を作ったように、人間体に作り変えてください。結晶のままでは上位の世界に耐えられないかもしれないからです。……はい、いいです。お願いします」
わたしは目を開けた。
その瞬間、わたしは見、感じた。
沢守澄麗の作ったバリアごしに叩きつけてくる、恐ろしいまでの苦悶と苦痛と恐怖を!
そんな中で、わたしは彼女の指し示す、宙に浮いた結晶のようなものを拾い上げ、わたしの力である物象化能力をフルに使って、結晶を分解、溶融し、人間らしい身体に再生しようと試みた。
それはあまりにも苦しい営みだった。
できた……と思った瞬間、わたしは意識を失い……。
再び小野瀬孝史の病室で目を覚ました。
沢守澄麗の口を借りて天使はささやく。
「見ようと思ってはいけません。降りながらあなたが見るものはほとんどすべて躓きの石です。わたしたち人間よりも、ある意味根本的に『低位』なものたちが見る夢は、ナイトメア・ハンターのあなたでさえも想像もつかないような苦痛に満ちたものなのです……」
わたしは目をつぶって精神を統一し、乗り切ろうとしたが、周囲から流れてくる「異質」でありながら根本的な点で「同種」の負の波動は、わたしの精神を激しく揺さぶった。
どれほどの時間が経ったのか、わたしにわからなくなったころ、沢守澄麗が語りかけてきた。
「ついにたどり着きました。ここが、夢世界の最底辺に位置する、『源夢』の世界です」
わたしは精神集中をやめ、目を開こうとした。
「……いけません! ここは、慣れていないと地獄に見える、悲しみと苦悶の異界です。いましばらくは目を閉じて、周囲の影響を受けないように精神を集中させてください」
「いつまでですか」
「小野瀬くんの精神の根幹にたどり着くまでです。狂気に墜ちた人々の魂はこの世界で小さな結晶となって沈んでいるはずですから」
「なぜそれが……」
「わたしはいつも、夢に入るときに最初にこの世界を通ってくるんです。最初はただ感じるだけでしたが、桐野さんに目を作ってもらってからは実際に見ることもできるようになりました。少し、探すのに集中します」
わたしにとっては無限ともいえる時間が過ぎたように感じた。
やがて、天使は安堵の声を上げた。
「……見つかりました。桐野さん、これからある種のバリアのようなものを展開します。わたしがいいというまで目を閉じていてください。そうしたら、あなたの持つ夢世界での能動的な力を使って、小野瀬くんの結晶を拾い上げ、わたしの身体を作ったように、人間体に作り変えてください。結晶のままでは上位の世界に耐えられないかもしれないからです。……はい、いいです。お願いします」
わたしは目を開けた。
その瞬間、わたしは見、感じた。
沢守澄麗の作ったバリアごしに叩きつけてくる、恐ろしいまでの苦悶と苦痛と恐怖を!
そんな中で、わたしは彼女の指し示す、宙に浮いた結晶のようなものを拾い上げ、わたしの力である物象化能力をフルに使って、結晶を分解、溶融し、人間らしい身体に再生しようと試みた。
それはあまりにも苦しい営みだった。
できた……と思った瞬間、わたしは意識を失い……。
再び小野瀬孝史の病室で目を覚ました。
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Re: 佐槻勇斗さん
ふたりとも人間です。(^^)
がんばったけど人間です。
果たして小野瀬くんはどうなったか、続きをごらんください(ってわかっているようなものですが(笑))。
がんばったけど人間です。
果たして小野瀬くんはどうなったか、続きをごらんください(ってわかっているようなものですが(笑))。
NoTitle
佐槻には桐野先生が神に思えるのですが。
先生よくがんばったよ!!(つД`)゚・。・
さてさて、小野瀬くんはいったい・・・・・・??
先生よくがんばったよ!!(つД`)゚・。・
さてさて、小野瀬くんはいったい・・・・・・??
- #1033 佐槻勇斗
- URL
- 2010.04/13 22:08
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Re: ネミエルさん
さて、これからどうなることやら……。
いちおう今月末にはすべての決着がつくはずですが。