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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    4 天使を吊るせ(完結)

    天使を吊るせ 26-4

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     心なしか全身に鈍痛がする。理由は考えるまでもなかった。病室にいたのはわたしと沢森澄麗と小野瀬孝史の三人だけではなかったからだ。あと三人。一人は受付でわたしたちをここに通すことを認めた看護婦で、もう一人は小野瀬孝史の父親。そしてもちろん、最後の一人は。
     小野瀬孝史の母親、小野瀬敦子は、入谷の真源寺にいる鬼子母神ですらひと目見れば泡を吹いて卒倒するようなものすごい怒りの形相でもってわたしたちをにらんだ。
    「桐野さん」
     その声には、アマゾン名物の軍隊アリですら思わず進路を変えてしまうほどの冷気と激怒が込められていた。
    「ここで、なにをしているんです? それも、こんな夜遅くまで!」
     わたしはいわれて窓の外を見た。日はとっぷりと暮れている。わたしは壁の時計にちらりと目をやった。十時三十五分だった。
    「しかも、そんな女なんか連れ込んで、ずっと眠って。ぶっても叩いても離れない。いったいなにを……」
     わたしははっとして握っていた沢森澄麗と小野瀬孝史の手を離した。
     沢守澄麗が目を覚ました。どう考えても、抗うつ薬の効力は薄れているはずだった。
     しかしそんな中、沢守澄麗はにこりと微笑み、小野瀬敦子に一礼した。度胸があるを通り越して鋼鉄のような神経だ。宗教団体のトップはさすが人間の出来が違う。
     小野瀬敦子がなにかをいおうとしたとき。
     小野瀬孝史が目を覚ました。
     小野瀬孝史は二年ぶりに目に理性の光をきらめかせながら言葉を発した。
    「……母さん?」
     空気が一瞬凍りつき……。
     そして各人のあらゆる感情のほとばしりが怒涛となって部屋を駆け巡った。
     わたしと沢守澄麗は混乱に乗じて病室を脱け出した。
     沢守澄麗は抗うつ剤などいらないほど上機嫌だった。わたしもそうだった。病院のゲートをやすやすと突破したわたしたちは、ビートルに乗り込んだ。
    「帰りますか。その前に食事ですか?」
     わたしは心の底までハッピーになってエンジンをかけた。
    「お祝いの食事もいいけど、それよりも心が疲れちゃった。一刻も早く横になりたい」
    「送りましょう」
    「鈍い人ね。どこかへ泊まっていかない? っていってるのに」
     わたしは反射的に助手席へ首を向けた。
     沢森澄麗と目が合った。
     天使の瞳をしていた。
     その晩を予定外の外泊で終えたわたしは、翌朝いちばんに鍵屋をたたき起こして自分のワンルームの合鍵を作り、同乗者に渡した。
     世の中の全てがわたしに微笑んでいた。
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    第一ページ目から結末は決まっていました。

    それで読んでくれたみんなにあんなおちゃらけコメントばかり返していたんだからわたしってひどいやつですね(^_^;)

    NoTitle

    昨日、ここまで読んで、どうしよう続きは明日にしようか……としばし考え。
    やはり先が気になり一気に最後まで読んでしまったのですが。

    呆然とし、すぐには感想が書けず今日にいたる。

    改めて読み直しておりますが、最後が分かって読むとこのシーンが本当に痛々しい(ToT)

    Re: ネミエルさん

    えー、禍福はあざなえる縄の如し、といいますが、たいていの場合、幸福の絶頂にある人間は、その直後に奈落の底へと突き落とされるものであります。

    桐野くんの場合はどうかというと……。

    NoTitle

    やったぁ!
    やったですね、先生!

    きゃっほぃ!

    Re: 佐槻勇斗さん

    なにかがあるにしてもあと4章16回で終わる予定ですしこの話。

    本人も喜んでますし、まあ生温かく見守っていてください(^^;)

    どうせ桐野くんは不幸になるんですし。(コラ)

    ちなみにここから事態の展開速度は3倍くらいの猛スピードになります。構成をなにも考えていなかったからですがゲフンゲフン。

    NoTitle

    舞い上がっておりますが、合い鍵など手渡して平気なんですか先生ヽ(^ω^;)
    彼女にはまだきっとなにかがあるはず……うーん;;
    ですが、今回はとにかく、小野瀬くんが目覚めたのでそれを素直に喜ぶだけに留めておきます♪
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