「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
4 天使を吊るせ(完結)
天使を吊るせ 29-3
「澄麗さん」
わたしはこわばった声でいった。
「やめにしないか。わたしは、あなたを殺人者にしたくない」
「わたしは母の娘なのよ」
それが沢守澄麗の答えだった。
銃口がわずかに動いた。
「もう一度いうわ、桐野さん。ガンロッカーを開けなさい」
わたしは逡巡した。だがそれも長くはもたなかった。人間という生き物は、銃を突きつけられていると最後には命令に意のままに従ってしまうものなのだ。
わたしは汗で滑る指で鍵を外すとガンロッカーを開けた。
「そう、それでいいのよ」
わたしはガンロッカーの中を見た。当然だが、そこにはわたしの銃があった。
「銃を取りなさい」
わたしは沢守澄麗を振り返った。
冷たい眼は微動だにしなかった。
「取りなさい」
わたしは手を伸ばし、ヘッケラー&コッホHK502を握った。
いつもなら手にすると安心感と満足感を得る銃が、今日は凍りつくように冷たい鋼の塊に思えた。
「散弾を込めなさい」
抵抗があった。クレー射撃でクレーを撃つのとは違い、殺される理由付けに散弾を込めさせられるというのは、どう考えても間違っていることだった。
ためらっているわたしに、沢守澄麗はいささかも声の調子を変えないでいった。
「散弾を取ったら、装填前に、片手で持って、わたしに見えるように掲げなさい」
わたしはいわれるがままに散弾を取って掲げた。
「振りなさい」
わたしは振った。かすかな、ほんとうにかすかな、散弾がぶつかるちゃりちゃりっという音が聞こえた。
沢守澄麗はうなずいた。
「込めるのよ。装填のしかたはわかっているわ。普通に、教科書どおりにやるのよ」
わたしは背筋が凍りつくのを感じたが、同時に腹の底からふつふつと怒りが湧き上がってくるのを感じた。
この散弾を込めたと同時に、わたしは沢守澄麗に撃たれて死ぬのだ。
わたしは沢守澄麗に最後の質問をした。
「澄麗さん。あなたは、教団の麻薬取り引きと、それにともなう弁護士謀殺を全て知っていたのか」
沢守澄麗の答えは短かった。
「わたしは母の娘よ」
それだけ聞けば充分だった。わたしはこみ上げてくる怒りのままに、銃に散弾を込めると、間髪を入れずに沢守澄麗めがけて引き金を引いた……。
わたしはこわばった声でいった。
「やめにしないか。わたしは、あなたを殺人者にしたくない」
「わたしは母の娘なのよ」
それが沢守澄麗の答えだった。
銃口がわずかに動いた。
「もう一度いうわ、桐野さん。ガンロッカーを開けなさい」
わたしは逡巡した。だがそれも長くはもたなかった。人間という生き物は、銃を突きつけられていると最後には命令に意のままに従ってしまうものなのだ。
わたしは汗で滑る指で鍵を外すとガンロッカーを開けた。
「そう、それでいいのよ」
わたしはガンロッカーの中を見た。当然だが、そこにはわたしの銃があった。
「銃を取りなさい」
わたしは沢守澄麗を振り返った。
冷たい眼は微動だにしなかった。
「取りなさい」
わたしは手を伸ばし、ヘッケラー&コッホHK502を握った。
いつもなら手にすると安心感と満足感を得る銃が、今日は凍りつくように冷たい鋼の塊に思えた。
「散弾を込めなさい」
抵抗があった。クレー射撃でクレーを撃つのとは違い、殺される理由付けに散弾を込めさせられるというのは、どう考えても間違っていることだった。
ためらっているわたしに、沢守澄麗はいささかも声の調子を変えないでいった。
「散弾を取ったら、装填前に、片手で持って、わたしに見えるように掲げなさい」
わたしはいわれるがままに散弾を取って掲げた。
「振りなさい」
わたしは振った。かすかな、ほんとうにかすかな、散弾がぶつかるちゃりちゃりっという音が聞こえた。
沢守澄麗はうなずいた。
「込めるのよ。装填のしかたはわかっているわ。普通に、教科書どおりにやるのよ」
わたしは背筋が凍りつくのを感じたが、同時に腹の底からふつふつと怒りが湧き上がってくるのを感じた。
この散弾を込めたと同時に、わたしは沢守澄麗に撃たれて死ぬのだ。
わたしは沢守澄麗に最後の質問をした。
「澄麗さん。あなたは、教団の麻薬取り引きと、それにともなう弁護士謀殺を全て知っていたのか」
沢守澄麗の答えは短かった。
「わたしは母の娘よ」
それだけ聞けば充分だった。わたしはこみ上げてくる怒りのままに、銃に散弾を込めると、間髪を入れずに沢守澄麗めがけて引き金を引いた……。
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Re: ネミエルさん
味方に対してそんなことをしたらバキバキに殴られても文句はいえませんハイ。