「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・4
「範ちゃん、範ちゃん!」
勢い込んで文子が範子の肩を叩いた。
「どうしたのよ、文子」
範子は鞄にしまいかけていた教科書の束を机に置くと、友人の顔を見た。
のけぞった。
「な、なんなの文子! その顔は!」
文子はえ……? と困惑した。
「その顔って……顔がどうかした?」
「どうかしたじゃないわよ! 鏡を見なさい、鏡を!」
範子はいつも鞄のポケットに収めている手鏡を取り出すと、文子の顔に突きつけた。
「どうって……どうもしてないよ、範ちゃん」
文子は、範子がなにをいっているかわからないようだった。
範子は、大声を出しながら友人の肩を揺さぶった。
「どうもしていないって……今のあなたの顔って……あなたの顔って……昔、特撮映画でやっていた『大魔神』そのものじゃないの!」
『大魔神』としか見えない顔をさらに歪ませ、文子はむくれた。
「あーっ、こんな美少女をつかまえて、『大魔神』はないよお、範ちゃん」
「ないよおって、……そのものずばりなんですけど、文子」
範子は穴の開くほど文子の顔を見た。どう見ても、『大魔神』だった。
「だったら、範ちゃんはどうなのよ、範ちゃんは」
「え……わたし?」
そういわれ、範子ははっと嫌な予感を覚えた。
まさか。まさかまさかそんな。
こわごわと手鏡を自分のほうに向ける。
胃袋が裏返りそうになった。
「わた……わたわたわた、わたしも『大魔神』だあ!」
範子は手のひらに顔を埋め、しくしくと泣き出した。
「なんで……なんで、わたしまで『大魔神』なのよお……」
「佐々木?」
「それは横浜ベイスターズの野球選手、『ハマの大魔神』! 『大魔神』っていうのは、昔大映が撮った特撮時代劇だけど……見てない?」
「見てない」
もしかしたらわたしは今の学生としてはめちゃくちゃ偏った知識の持ち主なのかしら……と、疑問にくれる範子であった。
文子は続ける。
「でも『大魔神逆襲』と『大魔神怒る』は見た」
「知ってるんじゃないのっ!」
範子は文子の頭に脳天唐竹割りを食らわせた。ハリセンがないのがつらいところだ。
文子は自分の痛む頭に手を当てて範子にいった。
「範ちゃん、自分の顔に『大魔神コンプレックス』かなんか抱いているの?」
「抱いてなんかいないわよっ!」
でももしかしたら陰では抱いていたのかもしれない。自分の精神の平衡まで疑ってしまう範子であった。
文子がパンと手を叩いた。
「そうだ! だったら、あれをやってみたら?」
「あれ、って?」
文子は腕を自分の顔の前に持ってきた。
「ほら、映画の大魔神は、怒った後、腕をこうしてぐっぐっぐっと自分の顔の前で動かすことによって、もとの顔に戻るでしょう。それと同じよ、範ちゃん。あのポーズをとれば、範ちゃんのコンプレックスも消えるんじゃない?」
おおっ、と範子は感心した。
「そうね。それがいいわ。やってみる、わたし、やってみる!」
範子は腕を、力瘤でも作るかのようにぐっと曲げて拳を握った。
「でも、わたしコンプレックスなんか抱いてないわよ」
「わかったから」
範子は、自分の腕を、顔の前で弧を描くようにゆっくりと動かしていった。
「範ちゃん、うまいわ。動きかたもそっくり」
「変なことはいわなくていいってば! さて、どうなったかしら……」
範子は自分の顔を鏡に写して見た。
大魔神の怒り顔ではなくなっていた。
しかし、そこに映っていたのは、巨大な埴輪だったときの大魔神の顔だった。
範子は気絶した。
何人にわかるんだ今回のネタ。
勢い込んで文子が範子の肩を叩いた。
「どうしたのよ、文子」
範子は鞄にしまいかけていた教科書の束を机に置くと、友人の顔を見た。
のけぞった。
「な、なんなの文子! その顔は!」
文子はえ……? と困惑した。
「その顔って……顔がどうかした?」
「どうかしたじゃないわよ! 鏡を見なさい、鏡を!」
範子はいつも鞄のポケットに収めている手鏡を取り出すと、文子の顔に突きつけた。
「どうって……どうもしてないよ、範ちゃん」
文子は、範子がなにをいっているかわからないようだった。
範子は、大声を出しながら友人の肩を揺さぶった。
「どうもしていないって……今のあなたの顔って……あなたの顔って……昔、特撮映画でやっていた『大魔神』そのものじゃないの!」
『大魔神』としか見えない顔をさらに歪ませ、文子はむくれた。
「あーっ、こんな美少女をつかまえて、『大魔神』はないよお、範ちゃん」
「ないよおって、……そのものずばりなんですけど、文子」
範子は穴の開くほど文子の顔を見た。どう見ても、『大魔神』だった。
「だったら、範ちゃんはどうなのよ、範ちゃんは」
「え……わたし?」
そういわれ、範子ははっと嫌な予感を覚えた。
まさか。まさかまさかそんな。
こわごわと手鏡を自分のほうに向ける。
胃袋が裏返りそうになった。
「わた……わたわたわた、わたしも『大魔神』だあ!」
範子は手のひらに顔を埋め、しくしくと泣き出した。
「なんで……なんで、わたしまで『大魔神』なのよお……」
「佐々木?」
「それは横浜ベイスターズの野球選手、『ハマの大魔神』! 『大魔神』っていうのは、昔大映が撮った特撮時代劇だけど……見てない?」
「見てない」
もしかしたらわたしは今の学生としてはめちゃくちゃ偏った知識の持ち主なのかしら……と、疑問にくれる範子であった。
文子は続ける。
「でも『大魔神逆襲』と『大魔神怒る』は見た」
「知ってるんじゃないのっ!」
範子は文子の頭に脳天唐竹割りを食らわせた。ハリセンがないのがつらいところだ。
文子は自分の痛む頭に手を当てて範子にいった。
「範ちゃん、自分の顔に『大魔神コンプレックス』かなんか抱いているの?」
「抱いてなんかいないわよっ!」
でももしかしたら陰では抱いていたのかもしれない。自分の精神の平衡まで疑ってしまう範子であった。
文子がパンと手を叩いた。
「そうだ! だったら、あれをやってみたら?」
「あれ、って?」
文子は腕を自分の顔の前に持ってきた。
「ほら、映画の大魔神は、怒った後、腕をこうしてぐっぐっぐっと自分の顔の前で動かすことによって、もとの顔に戻るでしょう。それと同じよ、範ちゃん。あのポーズをとれば、範ちゃんのコンプレックスも消えるんじゃない?」
おおっ、と範子は感心した。
「そうね。それがいいわ。やってみる、わたし、やってみる!」
範子は腕を、力瘤でも作るかのようにぐっと曲げて拳を握った。
「でも、わたしコンプレックスなんか抱いてないわよ」
「わかったから」
範子は、自分の腕を、顔の前で弧を描くようにゆっくりと動かしていった。
「範ちゃん、うまいわ。動きかたもそっくり」
「変なことはいわなくていいってば! さて、どうなったかしら……」
範子は自分の顔を鏡に写して見た。
大魔神の怒り顔ではなくなっていた。
しかし、そこに映っていたのは、巨大な埴輪だったときの大魔神の顔だった。
範子は気絶した。
何人にわかるんだ今回のネタ。
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Re: ダメ子さん
大映としても黒字だったようで、けっこうファンは多いみたいですね。
会社はもっとシリーズを作りたかったのですが、あまりの「話の作れなさ」ゆえに3作で映画が打ち切られたと聞きました。3作でパターンが全部出尽くしてしまったそうなのです(^^;)
惜しい話であります。
会社はもっとシリーズを作りたかったのですが、あまりの「話の作れなさ」ゆえに3作で映画が打ち切られたと聞きました。3作でパターンが全部出尽くしてしまったそうなのです(^^;)
惜しい話であります。
Re: 佐槻勇斗さん、ネミエルさん
うーむ。
時代ですかなあ。
古い特撮ファンには常識以前の基礎教養だったんですがねえ、大映の「大魔神」。
とりあえずこちらの動画をごらんください。
http://www.youtube.com/watch?v=CjJUHCPKyak&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=a_SQvUqAGsg
若いっていいよなあ(←じじい)
時代ですかなあ。
古い特撮ファンには常識以前の基礎教養だったんですがねえ、大映の「大魔神」。
とりあえずこちらの動画をごらんください。
http://www.youtube.com/watch?v=CjJUHCPKyak&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=a_SQvUqAGsg
若いっていいよなあ(←じじい)
NoTitle
す、すいません;;
わかんなかったです(つД`)゚・。・
でも。
ものすごい顔だったんだろうなァとは充分すぎるほど伝わりましたよ!!w
わかんなかったです(つД`)゚・。・
でも。
ものすごい顔だったんだろうなァとは充分すぎるほど伝わりましたよ!!w
- #1169 佐槻勇斗
- URL
- 2010.05/06 21:31
- ▲EntryTop
Re: トゥデイさん
「大魔神カノン」は見てません。
第1話に気づかずにきれいにスルーしてしまったのですが、周囲の人がみんな酷評するのを見てこれはダメだろと。
これから見る気にもなれません。
うむむ。
ちなみに戦国時代を舞台にしたシミュレーションボードゲーム「英雄戦国時代」では、追加選択ルールとして「巨大なはにわの魔神像」なるコマが出てきて爆笑したことがあります。今となっては入手は困難だろうと思います。
第1話に気づかずにきれいにスルーしてしまったのですが、周囲の人がみんな酷評するのを見てこれはダメだろと。
これから見る気にもなれません。
うむむ。
ちなみに戦国時代を舞台にしたシミュレーションボードゲーム「英雄戦国時代」では、追加選択ルールとして「巨大なはにわの魔神像」なるコマが出てきて爆笑したことがあります。今となっては入手は困難だろうと思います。
さすがに「カノン」版のデザインの大魔神になりました、にはしませんでしたか。安心しました。オリジナル版だけで話がまとまった。
ただ、元々は埴輪だったってのは知りませんでした。母にも言われましたよ見た目で分からないかと。
ちなみにカノンの大魔神は銅鐸らしいです。
ただ、元々は埴輪だったってのは知りませんでした。母にも言われましたよ見た目で分からないかと。
ちなみにカノンの大魔神は銅鐸らしいです。
- #1165 トゥデイ
- URL
- 2010.05/06 16:08
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Re: ひゃくさん
階級敵ですよね(笑)。