「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・5

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    「ヒマねー」
     範子は緑の盤の角に白を置き、文子の黒石をひっくり返して白にした。
     文子は穴の開くほど盤を見ていたが、仏頂面で隣のマスに黒を置いた。ちょぼちょぼと黒の領土を広げるが、それでも衆寡はかないそうになかった。
    「たしかにヒマだよ、範ちゃん。のんびりオセロなんかを教室でやってるんだから」
     ディスカウントショップでなんとなく買ってきたオセロのポケット盤のために、なぜか今どきオセロがマイブームになっている二人だった。
     頭の出来が同じくらいなのか、勝敗は今のところ十一戦して範子の五勝六敗というところだった。今の勝負で勝ったら、勝敗が五分になる。
     たかがゲームにも関わらず燃えてしまう範子であった。
    「オセロってさあ、範ちゃん、小説だとかマンガだとかに向いていないゲームだと思わない?」
     終盤戦の詰めを誤らないため、盤上を目を皿のようにして見回している範子は、その言葉に頭を上げた。
    「一理あるような気がするわ、文子。オセロを舞台にしたマンガも小説も映画も、ちょっと思いつかないわね」
    「でしょ?」
     文子はオセロのコマを指先でもてあそんでいた。
    「どうしてかなあ?」
    「どうしてって……」
     範子は盤に白を置いた。
    「やっぱり、あれじゃないの? どうしても、子供のゲームと見られがちだからじゃないかなあ」
    「子供向けのゲーム?」
    「あれよ、いい大人がやるのは、将棋だとか囲碁だとか麻雀だとかだって、みんな思っているじゃない?」
    「そうかなあ」
    「欧米ではそれほどポピュラーなゲームじゃないから、海外の小説で取り上げられることも少ないしね」
    「うん」
     文子も黒を置いた。
     範子が身を乗り出した。
    「あっ、ちょっと、文子、ひどいわよ。わたしパスじゃない」
    「これもゲームの宿命だよ、範ちゃん。それにしても、オセロって人気ないわけじゃないよね」
    「でも地味よ。チェスとかに比べれば」
    「チェスはかっこいいよね」
     文子は範子がパスしている隙に角に黒を置いた。これで角は五分だ。
     範子はうなりながら白を置いた。
    「悪の組織の幹部が、オセロをやっていたんじゃサマにならないし」
    「だよねー」
     文子は黒石を手に、周りをきょろきょろと眺めた。
    「どうしたの?」
    「範ちゃん、この小説、オチがつく様子がいっこうにないよ」
     範子はその言葉に胸を張った。
    「オチなんてないわよ、はじめから」
    「えっ! ……でもこれって、曲がりなりにもショートショートだから、なんらかのかたちでまとめないと、いけないんじゃ?」
    「それは過去の小説概念に捕らわれているゆえの誤謬よ」
    「誤謬って……」
    「現代社会の様相を見てみなさい。戦争や飢餓で子供は何の理屈もへったくれもなく殺されて、そして忘れられていく。その光景のどこに、オチや救いがあるの?」
    「でも、それじゃ、あまりにもあまりじゃない……」
     文子は決然と立ち上がった。
    「わたし、この話に、オチをつける! つけてみせる! ただのオセロゲームの雑談なんかに終わらせない!」
     範子は驚いたようだった。
    「どうするの?」
    「ももうかあ!」
     範子は落語をよく知らなかった。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    このシリーズで重視したのが「その場の勢い」と「ライブ感」でしたので(笑)

    NoTitle

    こっちの方が、よっぽどわかる人にしかわからないんじゃない?(笑)

    Re: ひゃくさん

    わたしが小学生のおり読んだ『お化け長屋』の落ちはこうだったのですが……。

    NoTitle

    > 「ももうかあ!」

    おい!(爆)

    Re: fateさん

    百話一気読みは骨だと思います。

    ちなみにこのふたり、このブログでいちばんの人気者かもしれない(^^)

    それは過去の小説概念に捕らわれているゆえの誤謬よ

    ↑さすが、ポールさん!!
    既製の概念を取り払ってここまで二人を導いてきたんどすな。

    最後まで一気に・・・!
    と勢い込んできましたが、ちょっとここで休憩いたします(・・;

    この二人、なんだかんだで愛嬌ありますね!

    Re: 面白半分さん

    その本は未読です。というか柄刀一氏の作品、まともに読んだことがないんですよね。

    不勉強申し訳ありません。(汗)

    NoTitle

    既知かもしれませんが
    オセロ絡みの小説として
    柄刀一『モノクロームの13手』がありました。
    ミステリー?SF?勢いで書いちゃったもの?
    評価はいいますまい。

    Re: 神田夏美さん

    あのオチの意味をわかる人はよほどの落語オタクです。
    とはいえ、意味がわかったところで面白いかは別問題なのがつらいところですが(^^;)

    オセロでも、命と5億円くらいを賭けて、ムチャクチャなルールを追加した上で「カイジ」を主人公に福本伸行先生がマンガを描けば傑作になるかもしれません……って無茶か(^^;)

    この二人のやり取りは、もともととあるアニメの同人誌から始まっていますから……。それを詳述すると長くなってしまうので割愛しますが。

    うーむ。

    ちなみに件のラブコメファンタジーは未だに16枚しか書けていません。全体の20分の1……。できるのかほんとにわたし(^^;)

    お久しぶりです♪

    落語にはあまり詳しくないのでオチはよくわかりませんでしたが、確かにオセロを題材にした漫画や小説って少ないですよね。面白そうですが、小説だとめちゃくちゃ難しそうですね(笑)描写力が重要になりそうです。そんなオセロをあえて書いたポール・ブリッツさんに拍手です。

    それにしてもこの二人のやり取りは、見ていて何だか心が和みますね~^^

    Re: 佐槻勇斗さん

    会話文を増やすと、「会話文に頼ってしまう」ので、諸刃の剣だったりします。

    ご自分のスタイルで書いていくのがいちばんいいと思います。

    わたしこそ、会話文の代わりに地の文で話を進めていくのを見習わなくちゃなあ……。

    NoTitle

    ポールさんの作品は会話文が多くていいですよね。
    見習おう…・・・!

    Re: LandMさん

    FIGHT・6においてわたしがファンタジーを書くとどうなるかの実験を試みましたのでぜひご一読を。
    やるんじゃなかったと思いましたが(笑)。

    最近、投稿用にシリアスなファンタジーを書いて中途挫折。昔在学中に書いたファンタジー冒険小説は先輩から「お前はファンタジーというものを勘違いしている」といわれました。ちぇっちぇっ。

    Re: ネミエルさん

    30分の勢いでどこまで書けるか、ということなので、まったく意味不明になってしまいましたね。反省しています(^^;)

    反省したところで行いが改まるかといえば……。(←ダメじゃん)

    Re: トゥデイさん

    盤のデザインを一新して、地味さよりもかっこよさと派手さを売りにできれば、一気に欧米にも広がるかもしれないということですね(違)。

    海外では非常にポピュラーなボードゲームなのに、なぜか日本ではまったくはやらない巨頭といったら、「チェッカー」と「ドミノ」でしょうか……面白いゲームなんですがね。

    NoTitle

    確かにわかりにくい話であるのは間違いないですね。
    私もよくわからなかったですね。落語は分野外ですからね。
    色々な要素をつけたいファンタジーですけど、あまりそういった面は専門外ですからね。ポール・ブリッツ 様にもそういった話を依頼したいぐらいですね。
    コミカルな話という面では面白かったですけどね。

    NoTitle

    僕もまったく意味がわかりませんでしたっ

    オセロは茨城県生まれだという。
    数年前我が家はホストファミリーをしており、アメリカからの留学生がきていたのだが、
    ある時テレビで「オセロ」という短編を観ても全く意味が分からなかったという。
    (禿頭の男をアフロの男が挟むと髪が生える、という15秒ほどの作品)
    多分リバーシと呼んでも通じなかったと思う。実物見せても知らなかったみたいだから。

    NoTitle

    この話のオチ(?)は、よほど落語に詳しい人でないとまず理解不能だろう。

    だから解説はしない(笑)。

    解説したところで面白くもなんともないオチ(?)だからだ。

    三十分の勢いで書いてしまってちょっと反省している(^^;)
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