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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・9

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    「宇宙戦艦ヴォルテックス、発進します」
     文子が冷静な口調で告げた。
     艦長席についた範子は仏頂面だった。
    「艦長、針路をお決めになってください」
    「あのさー、文子……」
     範子は周囲を見回した。
    「ここは、紅恵高校の、いつもの2-Aの教室よ? そんな中で、宇宙戦艦ヤマトだかホワイトベースだかのごっこ遊びは、やったって空しいだけじゃない。わたしたち、もう高校生なんだから」
    「高校生ではありません」
     文子は首を振った。
    「海軍兵学校、士官候補生です。制服を見ればわかるでしょう」
    「じゃあ聞くけどさ」
     範子は半ば意地悪な気分になっていった。
    「どうして、士官候補生なんかが、宇宙戦艦の指揮なんか取れるの? ふつうそういうのは、なんとか将軍とか、元帥とか、提督なんて人じゃないの?」
    「この前の宇宙会戦で、ベテランの軍人が多数死傷したからです。この辺りの星系には、士官レベルの訓練を受けた軍人は、われわれ二人だけしかいません」
    「じゃあさ」
     範子は、すっかり役にはまってしまっている(役というものがあればだが)、文子に次の質問をした。
    「だったらどうして、ほかの乗組員も出てこないの?」
    「完全オートメーション化しているからです。正直なところ、この戦艦を動かすのは、艦長と自分だけで充分であります」
     文子ってこんなに口が減らない子だったっけ。
     ちょっと苛立たしくなった範子は、あえてやらなかった禁断の質問をぶつけた。
    「それじゃっ!」
     周囲をばっと指し示して、
    「このどこが宇宙戦艦のブリッジなのっ! どこから見ても、ごく普通の高校の教室じゃない!」
     文子は周囲を見回し、
    「小官には艦長殿のおっしゃることがわかりかねます。小官には、各種さまざまな情報機器や端末で埋め尽くされた、立派なブリッジに思えますが」
     範子は頭を抱えた。
    「どこまでも口が減らないというかなんというか……」
     範子は席を立つと、ずんずんずんと窓に迫り、窓を開けた。
     風が入ってきた。空は真っ青である。太陽も輝いている。
    「どう、これ!」
     範子は大仰に手を振った。
    「空は青く、太陽は天高く、周りの世界には空気があふれている。これのどこが宇宙戦艦であり、宇宙なの?」
     文子はやれやれとでもいいたいように首を振った。
    「本戦艦は、敵の隕石兵器から身を守るために、大気のバリアーを張っております。それにより、レイリー散乱で太陽光が散乱され、空が青く見えるのであります」
    「それじゃさ」
     範子はもう我慢の限界だった。
    「わたしが、大いぬ座方面に進行! っていったら、この教室は進んでいくわけ!」
    「もちろんであります。復唱します。大いぬ座方面に進行」
     文子は椅子のひとつをひっくり返すと、その表面をなでた。そのとたん、これまでゆっくりと天を進んでいた太陽が、ものすごい速さで天をめちゃくちゃに動き始めたのだった。
     範子は絶叫した。
    「そのまま! 文子! そのまま!」
     文子は椅子を操作し、太陽の運行は元の位置に戻った。
    「これ……もしかして、この星が動いているの?」
    「本艦は惑星改造型戦艦ですから、当然であります」
     文子は表情ひとつ変えずにいった。
     範子は考えた。
    「文子。まずは元の軌道に戻りなさい」
    「わかりました艦長殿。ほかには?」
     範子は少し顔を上気させた。
    「文子。この艦には、他の人間は乗っていないの?」
    「艦長と自分だけであります」
    「そう。じゃ……」
     範子は文子の隣に自分の椅子を持っていった。
    「文子。命令します」
     範子は文子の手を取った。
    「しばらくわたしと、ウダウダしなさい」
     二人の少女は、巨大な戦艦のコックピットで、なにもせずにただのんびりとウダウダした。
     外から風が流れてくる。
     鳥の声も聞こえてくる。
     平穏な昼下がり。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    ウケたようでよかった(^_^)

    NoTitle

    これは、うまい!(笑)

    Re: 神田夏美さん

    巨大な戦艦のコックピットといっても、情景は普通の高校の普通の教室であるんですけどね(^^)

    投稿小説の件は、もちろんいいですよ~♪ お返事はいつになるかわかりませんが。

    こっちもこっちで別な作品の第一稿を書いたので、お返しに送りますね~。

    ラブコメファンタジーはまだできていません。うむむ。

    NoTitle

    巨大な戦艦のコックピットで、なにもせずにただのんびりとウダウダ……ある意味最高のぜいたくかもしれませんね^^
    オチてるようなオチてないようなまったり感がいいです^^

    ところで、まだ全然内定が出ず悲嘆に暮れ、現実逃避として小説を書いているうちに、投稿用の小説が書き上がってしまったのですが(←就活しろ)

    もし、よろしければ送ってもよろしいでしょうか? できればまた以前のように、ポール・ブリッツさんの参考になるご意見が欲しいのです。もっとも、今回は前回とは全く傾向を変えたシリアスものですが。

    今回は珍しく締切より余裕をもって完成できたので(現実逃避でしたから……爆)お忙しいようでしたら全然、遅くなっても結構ですので。もしも、よろしいようでしたら、お願い致します<(_ _)>
    (無理なようでしたらもちろん結構ですので、どうぞ断って下さい。厚かましくて申し訳ないです><)

    それでは、また読みに参りますね~♪

    Re: 卯月 朔さん

    こちらでははじめまして!

    卯月 朔さんのページでは、いつも楽しいファンタジーを読ませていただいております。魔王様との恋物語はどうなったんですかわくわく。

    この三十分一本勝負を書くためだけにダイソーでキッチンタイマーまで買ってしまいました(^^)

    軍隊の言葉をそれらしくするために、一時期戦記ものばかり読んでいたのですが、それが頭にありすぎて、つい「~であります」などという語尾になってしまう副作用が(^^;)

    でもカッコいいセリフが書けると嬉しいですよね。

    範子ちゃんと文子ちゃんのどっちをツッコミ役にするか決めていなかったので、時に応じてボケとツッコミが入れ替わるという、シチュエーションコメディとしてはあるまじきことになっていますが、どうかこれからもご贔屓に(^^)

    このシリーズ、せめて三ヶ月は続けたいですけど、息切れするといきなり月イチ更新になってしまうかもしれません(汗)。

    またそちらにもお邪魔しますね~♪

    こんばんわ!

    こちらにお初のコメントですのに、なんだか中途半端なところに書きこんでしまってすみません; 卯月です!
    『範子と文子の三十分一本勝負』ものすごく面白く読ませていただいてます>< 30分でこのクオリティって…っ゚+。
    なんにせよ「小官には艦長殿のおっしゃることがわかりかねます。」という台詞にものすごくトキめいたので、ここにコメさせていただきました。「復唱します。大いぬ座方面に進行」とか、戦艦モノはどうしてこうワクワクするのでしょう(ノ≧▽≦)ノ!!
    そしてツッコミつづける範子が可愛いですv
    ではでは、失礼いたしました[壁])≡サッ!!

    Re: ネミエルさん

    昔のアニメ「宇宙戦艦ヤマト」なんて、ガミラスの硫酸の海でへしおれてもげたはずの部分が、最終回ではなにごともなかったかのように現れていたからなあ。

    ヤマトの整備班も、ほかにやるべきことがあるだろう、と(^^)

    第三艦橋って、「まっさきに壊れて艦全体のダメージを軽減するため」にあるとしか思えん(笑)

    ネミエルさんの戦艦には艦橋が五個くらいありそうですね。でかいから……(^^)

    Re: 佐槻勇斗さん

    でも戦艦は男のロマンですから(^^)
    そこらへんの兼ね合いが難しい?(なんのだ)

    NoTitle

    第三艦橋大破!

    不死鳥第三艦橋!

    すごいぞ、第三艦橋!

    やっぱり壊れるなら

    二番砲塔と第三艦橋だね!

    NoTitle

    平和が一番、ということですね♪
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