「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・11

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    「あら」
     範子はポケットを押さえた。
    「どうしたの、範ちゃん」
     文子はのんびりと尋ねた。
    「いや、それが……」
     範子は身体のあちこちをせわしなく叩いた。
    「ちょっと、財布を……」
     文子の耳がぴくっと動いた。
    「声が大きいよ、範ちゃん」
    「え? ……声が大きいって、この教室には、わたしたち二人しかいないじゃない」
     放課後の紅恵高校の教室。たしかに、クラスメートは全員帰ってしまったので中には二人しか残っていない。
    「それでも、どこに敵の手が潜んでいるかわからないよ、範ちゃん」
    「敵? 敵って、ちょっと文子、あなた変なアニメの見すぎよ」
    「だって、範ちゃんち、お金持ちでしょう。財布には多額の現金が詰まっているんでしょう。そうしたらお金を狙う敵の手も……」
    「あのね、文子」
     範子は呆れ顔で答えた。
    「わたしは高校生よ。いくら親が宇奈月財閥のトップだからって、そんな大金なんて持たせてくれるわけがないでしょう。財布に入っているのは千五百円ちょっとよ」
    「なあんだ」
     一瞬、身体から力が抜けた文子だったが、すぐに気を取り直した。
     千五百円だって、貧乏高校生から見たら大金だ。駅前の安売りで有名な喫茶店のプリンアラモードが二皿も食べられる。
    「でも、すぐに探しましょうよ。大事なものなんだから」
    「大事って……まあ、そりゃあ、ウナバンクのスーパースペシャルグレートミスリルカードも入っているけど」
     文子の耳が、さらにぴくぴくっと動いた。
    「範ちゃん、その長ったらしい名前のカードはなんなの?」
    「え? うちの銀行の、ただのクレジットカードよ。親が持たせてくれたやつ」
    「範ちゃんクレジットカードなんか持っていたんだ!」
    「ええ? もしかして、この学校、カード持ってきちゃいけないの? 校則かなにかで」
    「探そう! たいへんだよ、そんな大事なものをなくしたりしちゃ」
     文子はがばっと立ち上がり、そこらへんを歩き始めた。
     文子本人は絶対に認めないだろうが、その目には、「金銭欲」という文字がくっきりと映し出されていた。
    「で、どこでなくしたの?」
    「今日の最後の授業が始まる前に、ポケットにあったことは覚えているんだけど」
     範子は天井を見ながら必死に思い出そうとしていた。
    「それからはここの席を動いていないから……」
    「論理的に考えて、この近くにあるってことだね」
     誰か名探偵、たとえばシャーロック・ホームズか明智小五郎の霊でも自分に降りてこないかと考える文子であった。
     文子と範子は机の周りの床を調べ始めた。
    「ないわね」
    「そうね」
     文子は自分にとって最大限論理的と思われるしかたで考え始めた。
    「財布は、ポケットにはない。かといって、床にも落ちていない。範ちゃんは鞄には教科書しかしまわない。となると……」
     ぽくぽくぽくぽくちーん、という、昔のアニメ「一休さん」の決めの効果音が頭に響いた気がした。
    「範ちゃん、もしかしたら、机の中に突っ込んじゃったんじゃないの?」
    「え? そんなバカなことが……」
     範子は机を探った。
     その瞳が驚きに見開かれる。
    「あったわ!」
     範子が机から引っ張り出したのは、確かに、小さなカード入れ兼用の財布だった。
     文子は心の中で、ガッツポーズをした。
    「よかった、見つかって」
     満面に笑みをたたえながら、文子は友人にここぞとばかりお願いしてみた。
    「範ちゃん、財布が見つかったお祝いに、なにかおいしいもの食べに行こうよ」
    「いいわよ。角のマクドナルドね」
    「……え? だって、カードがあるんでしょ?」
     範子はかぶりを振った。
    「このカード、親が教育のために持たせてくれたものだから、限度額が五百円なのよ」
    「五、五百円……」
     文子は足もとがガラガラと音を立てて崩れていくような錯覚に襲われていた。
     それでも二人は仲良くマクドナルドに安いソフトクリームを食べに行ったそうである。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    あったんですよ……駅前再開発がされる前、今からちょうど二十五年くらい前に、駅のバス停からすぐそばのところに、そういう名前のうまそうな居酒屋が……。

    再開発でなくなってしまって、今は別な名前でちょっと入ったところに店を出してまして、ある日行きがかり上土浦で飲む場所を探さなければならなくなり、うまいのかなと入ってみたらそれほどたいしたものでもなかったな、という……それが自分から入ったリアル飲み屋のファースト体験(笑)。

    個人的に飲むならサイゼリヤでワインのデカンタを飲んでいたほうが遥かにローリスクでうまくて酔えて財布にも優しいですね(^^;)

    NoTitle

    > くいもの屋 とりせい

    ???(笑)

    Re: ひゃくさん

    土浦の駅前といえば「くいもの屋 とりせい」と相場が決まっていて(そうか?(^_^;))

    NoTitle

    > 駅前の安売りで有名な喫茶店

    昔、土浦の駅前にあった喫茶店を思い出してしまった(笑)
    いや。実際に入った記憶はないんで、ホントにそれがあったのかは定かではない(爆)

    ていうか、それって、いつの記憶なんだろ?

    Re: 神田夏美さん

    範子ちゃんの親は……。

    ちゃらんぽらんな人であるらしいです(^^;)

    マクドナルドのソフトクリームは、昔100円で売っていてよく利用していたのですが(ソフトクリーム好きなので)、今はどうなっているんだろう。よく行っていた店が撤退してロッテリアになってからというもの、マクドナルドには足を踏み入れてないなあ……。

    NoTitle

    最期の一行がほのぼのしてていいですね^^
    安いソフトクリームでも、仲のいい友達と食べるとおいしいものです♪制服を着ていた頃が懐かしいなあ……^^

    それにしても限度額が五百円って。範子ちゃんの親はどんな人なんでしょう(笑)

    Re: 佐槻勇斗さん

    中国の海賊版CDで、「一休さん」の歌を

    「きすきすきすきすきすっきすっ♪」

    と歌っていたやつがあったそうです。

    一休さんがキス魔みたい(^^)

    Re: れもんさん

    そうかせめて千円に(たいして違わん(^^;))

    クレジットカードの名前は、もうちょっと偉そうなものにしたかったのですがカードとはこのところ縁がないので(^^)

    昔深夜にやっていた「内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎」というアニメに出てきたクレジットカードは偉そうだったなあ(^^)

    NoTitle

    一休さんのオープニング、
    すきすきすきすきすきっすき!は、
    インドネシアでは
    すかすかすかすかすかっすか!
    と言うらしい(益)
    …ほんとうかどうかは、知りません←

    NoTitle

    限度額ご5百円・・。教育のためでももうちょっと入らないと・・・
    スーパースペシャルグレートミスリルカードってめちゃめちゃすごそうですけど( ̄∇ ̄人)
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