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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・12

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    「開運! なんでも鑑定団! いぇ~いっ!」
    「い、いぇ~い……って、なんでわたしの机でやるわけ? 範ちゃん?」
     宇奈月範子は下川文子の当然の抗議を無視した。
    「さて、第一番は、これ、文子の筆箱です!」
     範子は文子の筆入れをむんずと掴むと目の前にかざした。
    「範ちゃん、返してよお!」
    「これは缶ペンケースというものですね。今から十年ほど前の様式です」
     範子はてきぱきと鑑定をくわえた。
    「ひどいよお、範ちゃん、いくらわたしが物持ちがいいからって……」
    「中にはきちんと、よく研がれた鉛筆、それにシャープペンシルが三本、マーカー、消しゴム、鉛筆削りなどが入っています。宇奈月先生、これについては?」
     範子は変な声を出して自分の問いに答えた。
    「そうですね、すべて平成に百円ショップで買えるものです」
    「百円ショップだっていいじゃない、範ちゃん! どうせわたしは高い文房具なんて買えないよお」
    「では、鑑定の結果を待ちましょう。さて、下川さん、お値段はいくらくらいだと?」
    「バカにしてるんでしょ、範ちゃん! こんなの、千円出せばお釣りがくるよ」
    「千円! 千円ですね! それでは、オープン・ザ・プライス! いち! じゅう! ひゃく! せん! ……いちまん! じゅうまん!」
    「範……ちゃん?」
    「十万円の値がつきました! 宇奈月先生、これはどういうことですか?」
    「あの?」
    「下川文子の文房具に間違いございません」
    「当たり前だよ、範ちゃん! わたしのものなんだから!」
    「下川文子の文房具は、たいへん希少価値が高いのです。求めている人は、お金をいくら積んでも欲しがるでしょう」
     範子の言葉に、文子は頭を抱えた。
    「……コレクター的価値からいって、十万は妥当な金額だろうと思います。ぜひともわたしに譲って欲しい」
     文子は範子の手から筆入れを奪い返して叫んだ。
    「こんながらくたを十万円で売るなんて、できるわけないでしょう! そんなことをいうんだったら、これを鑑定してみてよ、範ちゃん!」
     文子は鞄からなにか書類の入った雑誌ほどの大きさの封筒のようなものを取り出した。
    「なんなのでしょうか、いったいこれは」
     範子はアナウンサーのような調子を崩さずに続ける。どうも、司会のコメディアンの真似は難しいらしい。
     そのまま受け取り、口に手をかける。
    「開けてもよろしいですか?」
     文子はどうやら本気で怒っているらしい。
    「いいわよ、範ちゃん!」
     文子の家にお金があまりないのは知っていたが、ここまでやるのはやりすぎだったか、と範子は思った。
     でも興味を引かれて封筒を開き、中のものを取り出す。
    「…………!」
     それは。
     文子は恐ろしい笑みを浮かべるといった。
    「見覚えがあるよね? 小学校のころ、範ちゃんがわたしに宛てて書いたラブレターだよ」
    「…………」
    「中身も読んであげられるよ。『あやこちゃん、あやこちゃん、あたしとてもくるしい。くるしい。あやこちゃんのことをかんがえるとごはんなんてとてもたべられない……』」
     文子は顔を真っ赤にした範子の手からやすやすと封筒と中のものを奪い返した。
    「お、おねがい、文子。そ、それ以上はやめて。は、恥ずかしい」
     文子は言葉を切った。
    「やめるけど、範ちゃん、この手紙にはいったいいくらの金額がつくかなあ? 誰かに売ってもいいんだけれど」
     範子は頭を抱えると机の上に突っ伏した。
    「ご、ごめん、値段のつけようがないです、文子先生」
    「それとも、送り主に返しちゃおうかなあ? わたしが持っていてもしかたないしね」
     範子はますます小さくなった。
    「そ、それだけはご勘弁を、文子さま」
     しばらく範子は顔を耳元まで赤くしたまま小さくなっていたが、ふと顔を上げ、
    「でも文子、どうしてそんなもの学校に持ってきていたの?」
     今度返事に窮するのは文子の番だった。
    「い、いいじゃない、範ちゃん、そんなこと!」
     暖かな春の日の放課後、暖かな二人の話である。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    ウケてくれると素直に嬉しい(^_^)

    NoTitle

    いいじゃない。このオチ~

    Re: 神田夏美さん

    むか~し、むかしのことじゃった……。

    千葉テレビなどのU局でのう、「神無月の巫女」という番組が放映されておった……。

    第1話、「マリみて」みたいなアニメかと油断して見ておると、いきなり巨大ロボットが出てきて度肝を抜かれるという、ものすごい作品でのう……。

    わしが説明するより、リンクからぷろとん先生の「ぷろとんのページ」に飛んで、「ソウマさん日記」を読んだほうが早いかのう……。


    それにしてもわしも校正をもっとやるべきだったのう……(汗) ついつい別の原稿に取り掛かってしまったもんでのう……(汗汗)

    ラブコメファンタジー第一章30枚がなぜ書けんのかのう……(汗汗汗)

    NoTitle

    百合はいいですなあ(*^_^*)
    モデルとなったアニメ作品というのが何なのか気になります(笑)百合といったらマリみてやストパニがまっさきに思い浮かぶのですが、多分違うんだろうなあ。
    百合のような百合でないような微妙な関係の二人が好きです(笑)
    それにしても、缶ペンに鉛筆とは文子ちゃんもなかなかノスタルジックですね。

    あ、送って頂いた小説の感想、先程メールいたしました~♪^^久々にミステリを読んだので楽しませて頂きました。ありがとうございます。詳しくはメールにて。
    それと何やらうちのブログの紹介もして下さったようで、どうもありがとうございます<(_ _)>

    Re: ネミエルさん

    範子ちゃんは、そういう関係に意識的ながら無意識的ながらあこがれる女の子だと思ってください。

    こういう思考形態が本格的な方向に行ってしまうのか、はたまた一過性のハシカみたいなものなのかは書いているわたしもよくわかっていません。それはこれから書いているうちにしだいに方向性が決まっていくのではないでしょうか(←無責任)

    文子ちゃんのほうは、好意を寄せてもらうのはすごくうれしいけれど、いい友人としてつきあっていきたいな、みたいなスタンスだと思っていただきたいです。手紙を延々と今まで持っていたのも、それが「親友からの自分に対する好意のあらわれの頂点」としてうれしかったからで、それ以上のことではありません。

    まあ、単に普通の友人どうしとするよりはいくらか話も作りやすいですし。

    それに、このショートショートシリーズの基本構成を借りてきたアニメ作品がもろにそういう内容でしたし。……って白状してしまった。まあ、わたしもあからさまに書いているので気がつく人にはもうバレバレだったでしょうが……。

    NoTitle

    範子ってレズですか?
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