「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・15
「よい子のみんな寄っといで~紙芝居だよ~」
でっかいスケッチブックを抱えた範子に対し、文子は醒めたまなざしを送った。
「範ちゃん……『ゲゲゲの女房』見たでしょ」
範子はそれに対し、鞄からなにかを出して答えた。
「お嬢ちゃんアメを買ってね~」
文子は範子が出したものを見た。そこには、駄菓子屋で売っているソースせんべいと、スーパーで売っている水飴の瓶があった。
「範ちゃん、よくこんなもの買ってきたね……」
水飴などをなめるのも久しぶりである。ちょっと好奇心がうずいた文子であった。
「いくら、範ちゃん?」
「お嬢ちゃんは美人だからサービスしちゃうわよ~」
「範ちゃん、それってちょっときわどい台詞だよ」
とはいえ、まあいいや、と文子は思った。範子は慣れているとはとても思えない手つきで水飴の瓶を開け、割り箸を突っ込み、袋を破いて取り出したせんべいに水飴を押しつけた。
文子は渡してくれたせんべいをかじり、水飴をなめてみた。どこか郷愁を感じさせる味がした。
「出し物は、皆さんおなじみ、正義の味方、『巫女バット』だよ~」
「なによそれ」
範子が大きく開いたスケッチブックには、金色ドクロの頭に、巫女の装束をした、なんともけったいな姿のヒーロー……なのか、ヒロインなのかわからぬ姿の人物が描かれていた。
範子は日めくりカレンダーの要領でスケッチブックをめくり、次の絵を出した。どうやら、画用紙の一枚一枚の裏に、台詞がかかれているらしい。
「凝ってるね、範ちゃん」
文子はいった。
範子の妙な独り舞台がはじまった。
「その日、太陽エネルギーを研究している来栖川博士は、国際会議に出席するため、娘の桜と船上の人となっておりました。『わしが研究している太陽エネルギーは、世界平和のために使われなくてはならんのじゃ』」
「最近は飛行機じゃないの?」
文子は、いってはいけないツッコミをした。範子は当然、無視して話を進める。
「するとそのとき、波間をググーッと割って、巨大なロボットのようなものが姿を現しました。おおっこれこそ、ヒメー博士が作り出した『アマノ怪タンク』ではありませんか」
強引な展開に、文子はあっけに取られた。
「怪タンクは船上から博士と桜を引っつかむと、奇怪な音を出しながら空を飛んでいきました。ゴンゴンゴンゴンシュー」
「…………」
「二人が連れて行かれたのは、悪の天才、ヒメー博士の秘密基地でした」
文子はもうなんといったらいいかわからなかった。
「『ふふふ来栖川博士、あなたの発明した太陽エネルギーの秘密をしゃべるのだ。わたしが作り出した月ロケットと組み合わせれば、わたしたちは世界を征服さえできる』」
「どうして月ロケットと太陽エネルギーで世界を征服できるの……?」
「『太陽エネルギーは貴様などには絶対に渡さん!』『ふふふいつまで強がっていられるかな? 娘さんがどうなってもいいのかな?』奇怪なマジックハンドが桜をつまみあげます。ガチャーンガチャーン」
「…………」
「『ひ、卑怯だぞヒメー博士! あなたはそれでも科学者なのか!』ヒメー博士のマジックハンドが、桜の服にかかりました」
「まさか範ちゃん、一線を越えて描いてしまったの?」
文子はおろおろした。
「『ああっ、しいたけさん、しいたけさん、助けて!』」
「なんでしいたけなのよっ!」
「『わははははははは!』笑い声も高らかに、突如現れた正義の味方、『巫女バット』! 続きは次回のお楽しみ!」
文子は疲れきった。飴をなめる。
「範ちゃん、最後まで描ききれなかったのね」
範子は首を振った。
「さて、次の話!」
ページが繰られた。
結局文子が家に帰れたのは夜遅くだった。
でっかいスケッチブックを抱えた範子に対し、文子は醒めたまなざしを送った。
「範ちゃん……『ゲゲゲの女房』見たでしょ」
範子はそれに対し、鞄からなにかを出して答えた。
「お嬢ちゃんアメを買ってね~」
文子は範子が出したものを見た。そこには、駄菓子屋で売っているソースせんべいと、スーパーで売っている水飴の瓶があった。
「範ちゃん、よくこんなもの買ってきたね……」
水飴などをなめるのも久しぶりである。ちょっと好奇心がうずいた文子であった。
「いくら、範ちゃん?」
「お嬢ちゃんは美人だからサービスしちゃうわよ~」
「範ちゃん、それってちょっときわどい台詞だよ」
とはいえ、まあいいや、と文子は思った。範子は慣れているとはとても思えない手つきで水飴の瓶を開け、割り箸を突っ込み、袋を破いて取り出したせんべいに水飴を押しつけた。
文子は渡してくれたせんべいをかじり、水飴をなめてみた。どこか郷愁を感じさせる味がした。
「出し物は、皆さんおなじみ、正義の味方、『巫女バット』だよ~」
「なによそれ」
範子が大きく開いたスケッチブックには、金色ドクロの頭に、巫女の装束をした、なんともけったいな姿のヒーロー……なのか、ヒロインなのかわからぬ姿の人物が描かれていた。
範子は日めくりカレンダーの要領でスケッチブックをめくり、次の絵を出した。どうやら、画用紙の一枚一枚の裏に、台詞がかかれているらしい。
「凝ってるね、範ちゃん」
文子はいった。
範子の妙な独り舞台がはじまった。
「その日、太陽エネルギーを研究している来栖川博士は、国際会議に出席するため、娘の桜と船上の人となっておりました。『わしが研究している太陽エネルギーは、世界平和のために使われなくてはならんのじゃ』」
「最近は飛行機じゃないの?」
文子は、いってはいけないツッコミをした。範子は当然、無視して話を進める。
「するとそのとき、波間をググーッと割って、巨大なロボットのようなものが姿を現しました。おおっこれこそ、ヒメー博士が作り出した『アマノ怪タンク』ではありませんか」
強引な展開に、文子はあっけに取られた。
「怪タンクは船上から博士と桜を引っつかむと、奇怪な音を出しながら空を飛んでいきました。ゴンゴンゴンゴンシュー」
「…………」
「二人が連れて行かれたのは、悪の天才、ヒメー博士の秘密基地でした」
文子はもうなんといったらいいかわからなかった。
「『ふふふ来栖川博士、あなたの発明した太陽エネルギーの秘密をしゃべるのだ。わたしが作り出した月ロケットと組み合わせれば、わたしたちは世界を征服さえできる』」
「どうして月ロケットと太陽エネルギーで世界を征服できるの……?」
「『太陽エネルギーは貴様などには絶対に渡さん!』『ふふふいつまで強がっていられるかな? 娘さんがどうなってもいいのかな?』奇怪なマジックハンドが桜をつまみあげます。ガチャーンガチャーン」
「…………」
「『ひ、卑怯だぞヒメー博士! あなたはそれでも科学者なのか!』ヒメー博士のマジックハンドが、桜の服にかかりました」
「まさか範ちゃん、一線を越えて描いてしまったの?」
文子はおろおろした。
「『ああっ、しいたけさん、しいたけさん、助けて!』」
「なんでしいたけなのよっ!」
「『わははははははは!』笑い声も高らかに、突如現れた正義の味方、『巫女バット』! 続きは次回のお楽しみ!」
文子は疲れきった。飴をなめる。
「範ちゃん、最後まで描ききれなかったのね」
範子は首を振った。
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