「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・18

     ←範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・17 →範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・19
    「よく聞いて、文子」
     紅恵高校、放課後のいつもの教室。範子はいつになく真剣な目つきで文子を見据えた。
     文子は完全にだらけきっていた。
    「聞くけどさー、範ちゃん。もう、めちゃくちゃな設定と投げっぱなしエンディングは飽きたよー。普通の学生生活したいよー。高校生なんだから」
    「それどころじゃないのよ」
     範子はそわそわと落ち着かなかった。
    「このシリーズの、作者のストックが切れたのよ」
    「ストックが……切れた?」
     範子はうなずいた。
    「そう。だから、これから先は、ほんとに、『その場の思いつき』だけでわたしたちは生きていかなくてはならないのよ」
     文子はようやく身を起こした。
    「そうかー、これまで、この小説、作者は『考えて』いたんだ」
    「変なところに感心しない」
    「でも、自転車操業はいやだというのも確かだね、範ちゃん」
    「そうでしょう。だから、わたしたちががんばらないと、わたしたちは永劫の忘却の暗闇のなかに飲み込まれてしまうのよ。まあ、もとから読者がほとんどいない、この世の果ての網走番外地みたいなブログだったけど」
    「いいえて妙だね、範ちゃん」
    「で、わたしがなにか面白いことをしないとほんとに暗闇行きなんだけど」
     範子は手のひらに顔を埋めた。
    「わたし、面白いことが何も考えつかないのよ」
     文子は友人の肩に手を置いた。
    「大丈夫だよ、範ちゃん。こういうものって、日ごろの日常の適当なことを書いていたら、適当にページが埋まってくれるから」
     範子は顔を上げた。
    「ほんとうなの?」
    「日本の私小説ってだいたいそんなふうにできてるって偉い人がいっていた」
    「嘘でしょ?」
    「……嘘です」
     二人は肩を落とした。
    「それにしても、面白いことをしようとするとたいへんね。仮装とかしてみる?」
    「したって面白くなるとは限らないよ、範ちゃん」
    「それもそうね……でもどうしよう、この小説を十八禁にするっていうのが、読者アップにつながるもっとも有効な手段だろうけど」
     文子は後ずさりした。
    「ちょ、ちょっと、範ちゃん、それは反則、というか、わたしはいや。いやだから」
    「半分は冗談だから安心して」
    「半分は本気なんだ」
     文子はさらに後ずさりした。
    「できたとしてもやらないってば。まったくもう。それはそれとして、こういうときにいいものが。ほらこれ」
     範子は茶褐色の瓶を取り出した。
    「なにこれ?」
    「『こどもびいる』よ。飲んで明るくなれば、面白いことも考えつくでしょう?」
    「サンガリア? こんな子供だましの飲料じゃ、飲んでも明るい気分なんかにならないよ」
    「そんなこといわない」
     範子は瓶の栓を開け、電光石火の早業で、飲み口を文子の口へと突っ込んだ。
    「うむ……うむぐ……むぐ、むぐ」
     やっぱりちょっとえっちな光景かしら、と範子は思った。

    「だからさー、日本経済が駄目なのは、日本に『哲学』が根付いていないからだよ、範子! 今こそ日本人は、独自の哲学を身につけて、自立しなくちゃ駄目。絶対駄目!」
    「……はあ」
     範子は、「こどもびいる」で顔を真っ赤にしてへべれけになった文子の長広舌をひたすら拝聴していた。
    「だあからあ、西田も和辻も失敗したの。失敗。もう、日本人を記述する哲学と宗教。それがわれわれに求められ……聞いてる? 聞いてる範子?」
    「……はあ」
     巡回の教師や風紀委員の目を逃れて、大至急文子を連れ出さなくては退学になってしまいかねない。「こどもびいる」でこんなになりました、といっても信じてもらえるわけがない。気を揉む範子だった。
     文子は上着を変なふうに着ると、大音声で高歌放吟した。
    「おど~りお~どるな~ら、ちょいと、東村山お~んど~。チョーコク、チョーコク、ワーオ! 近代のチョーコク、ワーオ!」
    関連記事
    スポンサーサイト



     関連もくじ一覧 ▼ 
    総もくじ 3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ 3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ 3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ 3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・17】へ  【範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・19】へ

    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    クレーマーがひとり確定してまして(^^;)

    NoTitle

    > 三十部売れなかったもんなあ。(´;ω;`)

    30部売れたってことは、少なくとも3000人くらいのマーケットはあるってことかと(笑)

    Re: ひゃくさん

    わたしがエロを書いても、迫真力がなくて面白くならないんですよ。

    二冊ほどエロ同人誌は書きましたが、三十部売れなかったもんなあ。(´;ω;`)

    NoTitle

    > 「そう。だから、これから先は、ほんとに、『その場の思いつき』だけでわたしたちは生きていかなくてはならないのよ」

    爆!爆!爆!

    > この小説を十八禁にするっていうのが、読者アップにつながるもっとも有効な手段だろうけど

    あー。
    ブリッツさんのエロって、読んでみたいかも…

    Re: 神田夏美さん

    安易な十八禁化はほんとうに安易ですから、やる気はまったくありません(^^) というかあれは描写力が必要なので、わたし苦手なのであります(^^;)

    色気のある酔いっぷりにしたらそれはそれで問題ですから、一番いやなタイプの、説教する酔いっぷりにしてみました(笑)。
    文子ちゃんの話についていける範子ちゃんも範子ちゃんですけど(^^;)

    NoTitle

    範ちゃんの「この小説を十八禁にしたら~」という発言に笑いました^^
    百合百合で十八禁な二人。確かに需要はありそうですね(笑)いやでも、この二人はこの友達以上恋人未満的な空気が魅力的なのであって……と、何を言っているのでしょうね私は^^
    それにしても色気のない酔いっぷりです(笑)

    Re: ぴゆうさん

    続けられる限り続けますけど、負担になったら退却しますこのシリーズ。さすがにこれで疲れきってしまったらなんなので。


    うちの周りでは自販機で普通に売っていますけどねドクターペッパー。捜してみたらあるのではないでしょうか?

    チェリーもそうですが、「ペッパー」いうことは香りづけに……?(^^)

    チェリーといえば、チェリーコークをまだ飲んだことがありません。すごくマズいという話もあれば、なかなかいけるという話も聞くので、飲んでみたいんですが近くにない。ドクターペッパーファンはとっつきやすいそうですがほんとかなあ。

    NoTitle

    ノウノウ、面白いよ。
    とってもね、なんか作者が身近に感じるもの。
    このままのノリで続けてね。
    ドクターペッパー・・・なつかしい。
    売ってないよね、見かけないなぁ。
    あれって、チェリーだよね。
    チェリーのジュース、アメリカ版みたいだよね。

    Re: ぴゆうさん

    このシリーズ、気を抜いていると、すぐに

    「作者の愚痴」

    になってしまうので気をつけてます。

    たしかに愚痴のほうが楽なんですが。

    うむむ創作力の貧困(^^;)

    いかん、前向き、前向き!

    Re: トゥデイさん

    ストックというほどのこともないんですが、とりあえず2編くらいは書き溜めておいてあります。

    30分と時間を決めてありますので、毎日出かける前に時間を作ってえいやっと。

    でもそれでもその2編を割り込むとちょっと顔におびえの色が(笑)

    ルートビアは飲んだことがありませんが、わたしは「ドクターペッパー」が大好きです。「コーラではない」と思って飲めばうまい清涼飲料だと思います。

    Re: ネミエルさん

    やっぱりマズいの? あれ。

    小さいころは、わたしはクリスマスになるとシャンメリーが楽しみで楽しみでしかたなかったです。

    メーカーにダマされる心理は普遍的だなあ(笑)。

    Re: れもんさん

    あれって、どこからどうみても「子供をだます」ための飲料ですからねえ。

    実はわたしは飲んだことはありません。

    そうか微妙か……。

    NoTitle

    作者の苦悶、苦闘する姿にううむとなぞらえたりする自分。
    人間は考える葦なのかもしれないが、考え過ぎる気もする。
    まずはヤリナハーレなのかな。
    やってだめなら次回があるさ、ですね。
    といつも気持ちだけは前向きなのも・・・
    それでいいのか?自分。

    私も同じく「今までストックがあったのか」と思いました。

    子どもビールと言えば、「ルートビアー」という代物がアメリカにはよくありますが、
    前に行った時に飲んだ感想は「ロッテのブラックブラックが液状化した感じ」でした。

    NoTitle

    こどもびいるおいしくないです・・・
    アレはクリスマスに飲みましたが

    まずかったです

    NoTitle

    こどもびいる。大分前に一度飲んだのですが。あれ、味がめっちゃくちゃ微妙です;・・・
    まぁ、中身は単なる炭酸ですから・・・。

    というか、絶対「こどもびいる」じゃないですよね・・?
    よ、酔ってますよね・・?文子・・

    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・17】へ
    • 【範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・19】へ