「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・25
「頭が真っ白よ、文子」
「わたしもだよ、範ちゃん」
放課後の2-Aの教室。二人は顔を見合わせて、ため息をついた。
そのとおり。二人の頭、すなわち頭部は、真っ白だったのである。
「こんな頭じゃ、正常な社会生活を送れないわ。どうして、どうしてこんなことに。よよよよ」
泣き崩れる範子だった。
「範ちゃん、元気を出して。わたしたちに降りかかったこの状況にも、きっとなにかの原因があるはずだよ。その原因をなんとかすれば、この状況も何とかなるはずだよ」
真っ白の頭で範子をなぐさめる文子であった。
「しかし……どうして頭だけ白くなっているの? まるでブルーマンの白バージョンだわ、これじゃ」
「わからないけれど、だいたいの予想はつくよ、範ちゃん」
「予想?」
「たぶん、作者が、アイデアも何もなく、『頭真っ白』な状態でPCに向かっているんだよ」
「だから、わたしたちも、頭が白いっていうわけ? そそ、そんな。そんな安易な理由で」
「他に説得力ある仮説を考えつかないよ」
「泣いていい? 泣いていい、文子? しくしくしくしくしくしく」
「とにかく、範ちゃん。まともに家に帰れるような顔にしないと、わたしたちまるで死人みたいだよ。デスマスクそっくりな姿ををさらしながら家に帰るのは嫌だよ」
「そりゃあ、わたしも嫌よ。でも、どうやって」
「範ちゃん、化粧品持ってない?」
範子は首を振った。
「わたしは品行方正な紅恵学園の学生よ。化粧品を学校に持ち込むなんて……ねえ」
「やっぱり」
「そういう文子は」
「お金なくてろくに買えないよ。どうしてあんなに高いのか、消費者センターに文句のひとつも」
「消費者センターはいいけど、化粧してこの場を乗り切る作戦は実行不能みたいね。じゃあ、どうしよう」
「こうなったら……範ちゃん、あれしかないよ」
「あれ?」
「お面」
「お面はいいけれど、わたしたち髪の毛まで真っ白よ。そっちはどうするの?」
「スカーフかなにかを巻く必要があるよね」
「でも、おいそれとスカーフなんか見つからないわ。仕方ない、家に電話してなにか適当なものを二人ぶん見つくろってもらうことにする。携帯を出して……ワンタッチダイヤルで……ああ、三太夫? わたし」
「三太夫って……お金持ちはやっぱり違うなあ」
「……うん。そう。そう。かくかくしかじかというわけで、わたしと文子がピンチなのよ。なにか、ごく自然で頭が隠せるなにかを持ってきて! 大至急!」
範子は携帯を切り、文子にいった。
「五分で来るって」
「よかった……でも、なにを持ってくるのかなあ、三太夫さん?」
一抹の不安が胸によぎる文子であった。
「……で、これ?」
全身を包む暑苦しい衣服を着た文子は、目をしばたたかせた。服からはそこしか見えないのだった。
「これって、イスラム教の女の人が着る、『チャドル』ってやつだよね」
「もうなにもいわないで、文子……」
たしかに顔は人の目から完全に隠れるが、これはあんまりだと泣きたくなるのをこらえる二人だった。
「ねえ、範ちゃん。もし、こういうことになった女の人が、わたしたち以外にもたくさんいたら、どうなると思う?」
「どうなるって……」
範子の背筋に冷たいものが走った。
国際社会は震撼し、困惑したが、事態を押し止めることはかなわなかった。
全世界で数億人にのぼる数の若い女性が、そろってイスラム教に改宗したのである。
因果関係は不明である。
「わたしもだよ、範ちゃん」
放課後の2-Aの教室。二人は顔を見合わせて、ため息をついた。
そのとおり。二人の頭、すなわち頭部は、真っ白だったのである。
「こんな頭じゃ、正常な社会生活を送れないわ。どうして、どうしてこんなことに。よよよよ」
泣き崩れる範子だった。
「範ちゃん、元気を出して。わたしたちに降りかかったこの状況にも、きっとなにかの原因があるはずだよ。その原因をなんとかすれば、この状況も何とかなるはずだよ」
真っ白の頭で範子をなぐさめる文子であった。
「しかし……どうして頭だけ白くなっているの? まるでブルーマンの白バージョンだわ、これじゃ」
「わからないけれど、だいたいの予想はつくよ、範ちゃん」
「予想?」
「たぶん、作者が、アイデアも何もなく、『頭真っ白』な状態でPCに向かっているんだよ」
「だから、わたしたちも、頭が白いっていうわけ? そそ、そんな。そんな安易な理由で」
「他に説得力ある仮説を考えつかないよ」
「泣いていい? 泣いていい、文子? しくしくしくしくしくしく」
「とにかく、範ちゃん。まともに家に帰れるような顔にしないと、わたしたちまるで死人みたいだよ。デスマスクそっくりな姿ををさらしながら家に帰るのは嫌だよ」
「そりゃあ、わたしも嫌よ。でも、どうやって」
「範ちゃん、化粧品持ってない?」
範子は首を振った。
「わたしは品行方正な紅恵学園の学生よ。化粧品を学校に持ち込むなんて……ねえ」
「やっぱり」
「そういう文子は」
「お金なくてろくに買えないよ。どうしてあんなに高いのか、消費者センターに文句のひとつも」
「消費者センターはいいけど、化粧してこの場を乗り切る作戦は実行不能みたいね。じゃあ、どうしよう」
「こうなったら……範ちゃん、あれしかないよ」
「あれ?」
「お面」
「お面はいいけれど、わたしたち髪の毛まで真っ白よ。そっちはどうするの?」
「スカーフかなにかを巻く必要があるよね」
「でも、おいそれとスカーフなんか見つからないわ。仕方ない、家に電話してなにか適当なものを二人ぶん見つくろってもらうことにする。携帯を出して……ワンタッチダイヤルで……ああ、三太夫? わたし」
「三太夫って……お金持ちはやっぱり違うなあ」
「……うん。そう。そう。かくかくしかじかというわけで、わたしと文子がピンチなのよ。なにか、ごく自然で頭が隠せるなにかを持ってきて! 大至急!」
範子は携帯を切り、文子にいった。
「五分で来るって」
「よかった……でも、なにを持ってくるのかなあ、三太夫さん?」
一抹の不安が胸によぎる文子であった。
「……で、これ?」
全身を包む暑苦しい衣服を着た文子は、目をしばたたかせた。服からはそこしか見えないのだった。
「これって、イスラム教の女の人が着る、『チャドル』ってやつだよね」
「もうなにもいわないで、文子……」
たしかに顔は人の目から完全に隠れるが、これはあんまりだと泣きたくなるのをこらえる二人だった。
「ねえ、範ちゃん。もし、こういうことになった女の人が、わたしたち以外にもたくさんいたら、どうなると思う?」
「どうなるって……」
範子の背筋に冷たいものが走った。
国際社会は震撼し、困惑したが、事態を押し止めることはかなわなかった。
全世界で数億人にのぼる数の若い女性が、そろってイスラム教に改宗したのである。
因果関係は不明である。
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Re: ihiroppiさん
おそらく「ほら吹き大探偵の朝」に書いた感想をこちらに投稿してしまったのでしょうが、
いずれにせよ、どうもありがとうございます(^^)
映画みたいな臨場感のある作品を書きたいですね、ほんと!
いずれにせよ、どうもありがとうございます(^^)
映画みたいな臨場感のある作品を書きたいですね、ほんと!
映画みたいな終わり方でした
いや、一気に最後まで読みきりました。
深さとエンタテイメントと何かがこうか!こうか!とやってきて。
おもしろかったです!
深さとエンタテイメントと何かがこうか!こうか!とやってきて。
おもしろかったです!
Re: 鍵コメHさん
これを書いた6年前は、今よりかいくらか平和だったのです。
これはその平和だった時代のモニュメントです。
これはその平和だった時代のモニュメントです。
Re: 神田夏美さん
だってほんとうに頭が真っ白だったんだもん(笑)。
ちなみに、「頭が白い」という冒頭シーンは、ちょっと有名な怪奇SF小説の、慄然とするようなオチから持ってきました。
ジョルジュ・ランジュランの「蝿」っていう小説です。興味があったら探してみてください。
ちなみに、「頭が白い」という冒頭シーンは、ちょっと有名な怪奇SF小説の、慄然とするようなオチから持ってきました。
ジョルジュ・ランジュランの「蝿」っていう小説です。興味があったら探してみてください。
NoTitle
宗教は自由なものですから、確かに国際社会が押し止めることはできませんねえ^^
それにしても「頭真っ白」で本当に頭部が真っ白とは……いつもポール・ブリッツさんの発想力には驚かされます^^
それにしても「頭真っ白」で本当に頭部が真っ白とは……いつもポール・ブリッツさんの発想力には驚かされます^^
Re: ネミエルさん
「作者がほんとうになにも考えていないと、時おり小説は深い意味を持った作品に見える」バーナード・ショー
……うそです(^^;)
……うそです(^^;)
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Re: 鍵コメHさん