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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・32

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    「お金がないわ」
     範子は財布を逆さにして振って見せた。
     中からは、ほこりがぱらぱらと落ちてきただけだった。
    「範ちゃん、なんとかいうカードを持っていたじゃない」
     文子はのんびりと答えた。
     範子のせっぱ詰まった顔は変わらなかった。
    「あれは不渡りになったの」
    「不渡り?」
     文子もようやく真面目な顔になり、範子に向かい合った。
    「範ちゃん、それって……」
     範子は蒼白な顔でうなずいた。
    「宇奈月財閥が……宇奈月財閥が……」
    「もしかして、倒産?」
     範子の手は震えていた。
    「もしかしなくても、破産よ」
     一瞬の静寂。
    「ちょ、ちょっとちょっとちょっと、世界にまたをかける一大企業集団って、そんなに簡単に破産するものなの?」
    「ユーロ安と北朝鮮情勢への対応で失敗して、アイスランドで火山が噴火してメキシコで油井が崩壊して……そのしわよせが、いっぺんにやってきたところに、アメリカのウォール街のヘッジファンドに騙されて、債務が一挙に五十倍に膨れ上がって……」
    「うわあ……」
    「今は家には大量の債権者が押しかけてひどいことに」
     文子は言葉も出なかった。
    「……ってことは、範ちゃん、この学校はどうするの?」
    「どうするかは検討中よ……」
     文子の頭に、電撃的に浮かんだイメージがあった。世界名作児童文学のひとつである、『小公女』である。
    「範ちゃん!」
     文子は範子の肩をつかんだ。
    「わたし、範ちゃんをミンチン先生から守ってあげる! 絶対! 絶対! うちは貧乏だけど、範ちゃんを住まわせてあげるくらいのスペースはあるよ! だから、どこにも行かないで!」
     文子はがくがくと範子の肩を揺さぶった。
    「文子、文子、そんなに振り回さないで。揺れる。揺れる。舌を噛みそう。うわっ。うわっ」
     範子の声に、文子は肩を揺さぶるのをやめた。
    「でも、ほんとに、範ちゃん、これからどうするの?」
    「とにかく、今晩は、一族会議をやるみたいよ。それでこれからどうするかを決めるわけだけど……気が重いわ……」
    「そう……」
     文子もしばらく沈んだ表情になったが、急に顔を上げた。
    「範ちゃん、もしかして、わたしをからかってる?」
     範子は虚を突かれた顔になった。
    「からかってなんか……」
    「だって、普通、そんなことになったら、大ニュースとして、テレビにもラジオにも新聞にもでかでかと載るじゃない」
    「文子……」
     範子は、鞄から新聞を取り出し、文子の前に置いた。
     そこには、一面トップで確かに『宇奈月財閥破産、解体へ』という文字が躍っていた。
    「うわあ……」
     文子はその記事を何度も何度も読んだ。
    「これじゃあ、ほんとにほんとなんだね」
    「そうなのよ」
     範子は机に突っ伏した。
     身体を震わせて泣き始める。
    「わたし、わたし、文子といっしょにいたいのに、それしか望みはないのに、学校もやめて、どこかの脂ぎった中年男のところへ、債権の一部としてお嫁にやられちゃうんだわ。そうなんだわ。きっと、そうなんだわ」
    「範ちゃん……」
     文子はどう言葉をかけたらいいかわからなかった。
     携帯の呼び出し音が響いた。
     範子の携帯だった。
    「一族会議の結論が出たようね」
     範子は諦念に満ちた顔で携帯に向かった。
    「はい。範子です。お父様? ……はい。……はい」
     その顔が驚愕に歪む。
    「え、今、なんて? ……『避難訓練』? お父様、お父様?」
     うなずいていたが、やがてその顔には、安堵とも怒りともつかない独特な表情が浮かんだ。
     電話を切る。
    「文子……」
     文子はほっとしたようだった。
    「範ちゃん、よかった。ほんと、どうなるかと思ったよ」
    「わたし、さっきの話を聞いて、真面目にうちを出て文子の家に置いてもらおうかと思ったわ。まったくうちの家族は、財閥とは思えないほどちゃらんぽらんなんだから」
    「もういいよ、範ちゃん。ソフトクリーム食べに行こうよ。わたしがおごるから」
     教室から二人が去った後、職員室では、居残っていた教師が何気なくテレビをつけた。
    「宇奈月財閥、巨額損失。解体の危機か」
     というテロップが躍っていた。
     教訓:めったなことは口にするものではない。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    いつぞやの話で巨大化して学校をぶっ壊したときに、その外の草っ原でふたり仲良くウダウダしていたことがありますから、これが最初というわけでは(笑)

    NoTitle

    教室から二人が去った後、職員室ではって、えー、このお話って、教室以外にも世界があったんだ!
    ていうか、教室以外の舞台が出てきたのって初めてじゃない?

    あれ?
    いや、あったか!?(爆)

    Re: 小説と軽小説の人さん

    我ながら、このシリーズを書いていたときは自分になにかが取り憑いていたとしか思えません。こんなハードなことをよくやったもんだなあ。

    そのせいかへろへろになって一時リタイアするのですが。ギャグ漫画家が身体を壊すのもわかるような気がします。

    あと七十話近く、どうかごゆるりとお読みください。

    範子の一族、皆変人そう。
    ここまで一気に読みました。とても即興で書いているとは思えない面白さでした。
    あと七十話程ですか。早く全部読みたいようなゆっくり楽しみたいような、そんな気分です。
    • #10814 小説と軽小説の人 
    • URL 
    • 2013.07/06 19:14 
    •  ▲EntryTop 

    Re: LandMさん

    間に合ったようでよかったです(^^)

    大正のころに一大コンツェルンを築いていた「鈴木商店」もつぶれるときはあっさりでしたからねえ。世の中は怖いものであります。

    ……が、この小説で宇奈月財閥を潰すと話が終わってしまうのでそれはできないのでありました(笑)。

    Re: ネミエルさん

    明日になればなにもかも元に戻っているのがこの手の小説のお約束で……(^^)

    NoTitle

    どうもLandMです。
    以前は絵師様に対するコメントありがとうございます。ご心配なさらずとも、あの時はまだ大丈夫でしたから。……あと30分遅れていたらアウトでしたけど。恙無く送らせていただきした。誠にありがとうございます。

    破産!!
    ……って、財閥ってつぶれるときは一気ですから怖いですよね。一つが回らなくなると、全部が回らなくなりますからね。情勢が情勢ですからね。

    NoTitle

    うぉう、危ないじゃないか、財閥!
    大丈夫なのかっ!?

    兵器の輸出とか(ry

    Re: 蘭さん

    30分で大急ぎで書いているからネタをやるにしても舌足らずになってしまうもので(^^;) うーん一瞬誤解させてしまった。どうしたものか(汗)

    当面の目標は100話です。あと2ヶ月はガマンしておつきあいください(^^;)

    すでに「三太夫」さんが出てきたから、教師が出てきてもいいかな、と……。

    単にネタに詰まったともいいますが(爆)。

    おはようございます^^

    ええっ!?
    いよいよもしかして、このシリーズって終盤に近づいて行ってるとか!?
    ・・・・なワケないですね^^; 今回も、ただの「ネタ」なんですよね(笑)。

    てか、教師出て来た、教師! びっくり!v-405
    職員室も出て来た! これまた驚き(^^;
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