「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・33
来ない。
文子は、自分の机で頬杖をつきながら、不安を感じていた。
今日は、範子は一日、学校を休んだのだ。
なぜかはわからない。範子の家に電話をかけたものの、範子は学校に行ったという話だった。
それならば、来てもいいはずだ。
しかし、来ない。
自分の目の前の席は空席だ。
どうして、来ないのだろう?
来られない理由ができてしまったのだろうか。
どんな理由なのだろうか?
学校がいやになったのか、交通事故かなにかか、それとも……。
考えるのが恐ろしくなってきた。
範子はお金持ちのお嬢様だ。誘拐、テロ……。
想像は想像を呼び、不安は不安を呼ぶ。
もしそういうことになっていたとしたら、今ごろニュースに……。
なるわけがない。文子は首を振った。もし、誘拐だとしたら、ニュースになるわけがない。警察が出て来たにせよ、犯罪者との交渉は、全て情報を秘匿し、水面下で行なわれるはずだ。
誘拐だとすれば、確かに説明がつく。
よけいなことをすれば範子の身が危うい以上、学校もその他も、それなりの対応を取るはずだからだ。
範子はいない。
どうしてだろう。それなのに、範子の『存在』が感じられるのだ。
この場にいないから、余計に強く感じられるのだろうか。
目の前の席に、今も範子が座っているように感じる。
いつもの通りに、後ろの自分の席に振り向いて、笑いかけてくれるように感じる。
手を伸ばせば、その身体に触れられるように感じる……。
文子は手を伸ばそうとして、引っ込めた。
もし、そうすれば、自分が、取り返しのつかないことをしてしまうように思えたからだ。
なぜかはわからない。
「範ちゃん……」
文子はそうつぶやくと、鞄を持って帰ろうとした。
そのとたん。
目の前の空間が、割れた。
「なっ……」
呆然として見る文子の前で、なにかのベールが上がるように、首が宙に浮かんで見えた。
範子の首だった。
「ど、どうしたの、どうしたのよ範ちゃん!」
「うーっ窮屈だった……しゃべれるっていいわあ」
「しゃべれるって、首から下、首から下は!」
「ああ……これ? それよりも、なにか食べるもの持ってない? もうおなかがぺこぺこで……」
「そんなことどうでもいいから!」
文子に、範子は顔をしかめて答えた。
「ああ……これ。うちの会社の新製品、『光学迷彩服』の試作品よ」
「光学……迷彩?」
「そう。人の目からは透明に見える服。面白そうだったから、開発員に頼んで着せてもらったんだけど……脱げなくなっちゃって」
「…………」
「もし、周りのみんなに、この服のことがわかってしまったら企業秘密がばれてしまいかねないし、光学迷彩だけでなく、スパイ活動用だから、中の音は外へ洩れないようになっているので、もしこれで周囲に触れたりしようとしたら、パニックになってしまうと思えたし」
「だったら学校を休んだほうが……」
「テストに備えて、今日の授業は出たかったのよ、どうしても。文子にも会いたかったし」
「ということは、今まで?」
「ずっとこの席に座っていたのよ」
「範ちゃん」
文子は怖い声になっていた。
「駅前に新規オープンした喫茶店の目玉商品、『ジャイアントパフェ・ダブルクリーム』おごってちょうだい」
「え?」
「それから、生首が浮かんでいると怖いので、もう一回そのヘルメットをかぶる!」
「え……ええ」
「行きましょ、範ちゃん!」
文子の機嫌はパフェを二つ食べてコーヒーを飲むまで直らなかったということである。
文子は、自分の机で頬杖をつきながら、不安を感じていた。
今日は、範子は一日、学校を休んだのだ。
なぜかはわからない。範子の家に電話をかけたものの、範子は学校に行ったという話だった。
それならば、来てもいいはずだ。
しかし、来ない。
自分の目の前の席は空席だ。
どうして、来ないのだろう?
来られない理由ができてしまったのだろうか。
どんな理由なのだろうか?
学校がいやになったのか、交通事故かなにかか、それとも……。
考えるのが恐ろしくなってきた。
範子はお金持ちのお嬢様だ。誘拐、テロ……。
想像は想像を呼び、不安は不安を呼ぶ。
もしそういうことになっていたとしたら、今ごろニュースに……。
なるわけがない。文子は首を振った。もし、誘拐だとしたら、ニュースになるわけがない。警察が出て来たにせよ、犯罪者との交渉は、全て情報を秘匿し、水面下で行なわれるはずだ。
誘拐だとすれば、確かに説明がつく。
よけいなことをすれば範子の身が危うい以上、学校もその他も、それなりの対応を取るはずだからだ。
範子はいない。
どうしてだろう。それなのに、範子の『存在』が感じられるのだ。
この場にいないから、余計に強く感じられるのだろうか。
目の前の席に、今も範子が座っているように感じる。
いつもの通りに、後ろの自分の席に振り向いて、笑いかけてくれるように感じる。
手を伸ばせば、その身体に触れられるように感じる……。
文子は手を伸ばそうとして、引っ込めた。
もし、そうすれば、自分が、取り返しのつかないことをしてしまうように思えたからだ。
なぜかはわからない。
「範ちゃん……」
文子はそうつぶやくと、鞄を持って帰ろうとした。
そのとたん。
目の前の空間が、割れた。
「なっ……」
呆然として見る文子の前で、なにかのベールが上がるように、首が宙に浮かんで見えた。
範子の首だった。
「ど、どうしたの、どうしたのよ範ちゃん!」
「うーっ窮屈だった……しゃべれるっていいわあ」
「しゃべれるって、首から下、首から下は!」
「ああ……これ? それよりも、なにか食べるもの持ってない? もうおなかがぺこぺこで……」
「そんなことどうでもいいから!」
文子に、範子は顔をしかめて答えた。
「ああ……これ。うちの会社の新製品、『光学迷彩服』の試作品よ」
「光学……迷彩?」
「そう。人の目からは透明に見える服。面白そうだったから、開発員に頼んで着せてもらったんだけど……脱げなくなっちゃって」
「…………」
「もし、周りのみんなに、この服のことがわかってしまったら企業秘密がばれてしまいかねないし、光学迷彩だけでなく、スパイ活動用だから、中の音は外へ洩れないようになっているので、もしこれで周囲に触れたりしようとしたら、パニックになってしまうと思えたし」
「だったら学校を休んだほうが……」
「テストに備えて、今日の授業は出たかったのよ、どうしても。文子にも会いたかったし」
「ということは、今まで?」
「ずっとこの席に座っていたのよ」
「範ちゃん」
文子は怖い声になっていた。
「駅前に新規オープンした喫茶店の目玉商品、『ジャイアントパフェ・ダブルクリーム』おごってちょうだい」
「え?」
「それから、生首が浮かんでいると怖いので、もう一回そのヘルメットをかぶる!」
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Re: 佐槻勇斗さん
範子も文子も素敵な女の子ですから♪
といいつつ今日も悲惨な目に……(笑)
といいつつ今日も悲惨な目に……(笑)
NoTitle
光学迷彩・・・だと?
実際使うとなるといろいろ問題があるようですね。
暗闇ではボーっと光ったり
曲げれる液晶がなかったりと
宇奈月財閥すげぇ
実際使うとなるといろいろ問題があるようですね。
暗闇ではボーっと光ったり
曲げれる液晶がなかったりと
宇奈月財閥すげぇ
- #1360 ねみ
- URL
- 2010.06/05 22:53
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Re: ひゃくさん
今ではストレスに押しつぶされるので無理だな毎日更新は(^^;)