「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・35
「こんなものを、うちの研究所が作ったわ」
放課後の紅恵学園の教室で、範子はごく小さなスイッチのようなものを文子に見せた。
文子はうさんくさげにそれを見た。
「範ちゃん、なに、これ?」
「これはね……」
文子はスイッチを押した。
「範ちゃん、なにも起きないよ」
「そうね。これ、壊れているんじゃないかしら。も一度ぽちっと」
「やっぱりなんにも起きないよ。範ちゃん、これ、壊れているんじゃないの? その前に、いったいこれ、なに?」
「お父様からの話だと、これは、『携帯型ENTERキー』だってことだったわ」
「携帯型ENTERキー?」
文子は首をひねった。
「いったいそれ、なんに使うの?」
「わからないわ」
範子はキーを三度ほど押した。
「なにも起きないね」
「ほんと、がっかり。もう一度
押しても、どうにもならないみたい」
「故障しているんだよ、きっと」
「故障なんてことはないと思うわ。今朝がた、お父様からもらってきたばかりですもの」
「ちょっと、貸してよ範ちゃん。こういうものは、こう……
押していれば、なんとか
なると思ったけど……ならないね」
「もしかしたら、わたしたちがいる世界とは違うレベルの世界では、なにかが起こっているのかもね」
「たとえばどんな?」
「そうねえ……貸してみて。このスイッチをこう
押すたびに、どこかでパソコンが改行するとか」
「でも、このあたりにパソコンが置いてあるところなんて、どこにもないよ。あるとすれば職員室だけど……」
「あんなところのパソコン、めちゃくちゃになっちゃえばいいのよ。もう、こうやって、押して
押
し
て
押
し
ま
く
っ
て
い
ち秒間に16連射。見た?」
「範ちゃん、範ちゃん。そんなにスイッチを押していたら、機械も壊れるし、職員室がパニックになるよ。そんなことをしたら先生に迷惑だから、やめようよ」
「じゃあ、この機械、このまましまえっていうわけ? それじゃ、これを学校に持ってきた、わたしの立場はどうなるのよ! いいわよ。もう、ムチャクチャに押すから
これで
どう?」
「やっぱり、どうにもなっていないよ、範ちゃん」
「そう。ほんとに役立たずの機械みたいね」
「しまったほうがいいよ。なにが起こるかわからないよ」
「そうねえ。でも、惜しいような」
「でも、ほんとに、なにに使うはずだったんだろう。小説の登場人物であるわたしたちが持っていて、ほんとにいいのかな」
「いいんじゃない? たぶんよからぬことをさせようとしたに決まってるんだから」
「よからぬことって?」
「可能性としては、作者が原稿のページを稼ごうとした、というのが一番あり得るんじゃないかしら」
「それはないよ、この小説、量じゃなくて、時間制だよ」
「だからよ。たぶん作者はついうっかり忘れてしまったのね」
「がっかりだなあ」
範子は失望したかのように機械を見た。
「ええい。毒を食らわばなんとやら、だから……」
これでもかこれでもかこれでもかこれでもか……」
以下二十ページ以上に渡って続く。
読みたい? 読みたくない? ……世の中には読むタイプと読まないタイプの二種類の人間ないし宇宙人ないしロボットというものがあって……。
残念ながらオチはないのだ。とほほほ。
放課後の紅恵学園の教室で、範子はごく小さなスイッチのようなものを文子に見せた。
文子はうさんくさげにそれを見た。
「範ちゃん、なに、これ?」
「これはね……」
文子はスイッチを押した。
「範ちゃん、なにも起きないよ」
「そうね。これ、壊れているんじゃないかしら。も一度ぽちっと」
「やっぱりなんにも起きないよ。範ちゃん、これ、壊れているんじゃないの? その前に、いったいこれ、なに?」
「お父様からの話だと、これは、『携帯型ENTERキー』だってことだったわ」
「携帯型ENTERキー?」
文子は首をひねった。
「いったいそれ、なんに使うの?」
「わからないわ」
範子はキーを三度ほど押した。
「なにも起きないね」
「ほんと、がっかり。もう一度
押しても、どうにもならないみたい」
「故障しているんだよ、きっと」
「故障なんてことはないと思うわ。今朝がた、お父様からもらってきたばかりですもの」
「ちょっと、貸してよ範ちゃん。こういうものは、こう……
押していれば、なんとか
なると思ったけど……ならないね」
「もしかしたら、わたしたちがいる世界とは違うレベルの世界では、なにかが起こっているのかもね」
「たとえばどんな?」
「そうねえ……貸してみて。このスイッチをこう
押すたびに、どこかでパソコンが改行するとか」
「でも、このあたりにパソコンが置いてあるところなんて、どこにもないよ。あるとすれば職員室だけど……」
「あんなところのパソコン、めちゃくちゃになっちゃえばいいのよ。もう、こうやって、押して
押
し
て
押
し
ま
く
っ
て
い
ち秒間に16連射。見た?」
「範ちゃん、範ちゃん。そんなにスイッチを押していたら、機械も壊れるし、職員室がパニックになるよ。そんなことをしたら先生に迷惑だから、やめようよ」
「じゃあ、この機械、このまましまえっていうわけ? それじゃ、これを学校に持ってきた、わたしの立場はどうなるのよ! いいわよ。もう、ムチャクチャに押すから
これで
どう?」
「やっぱり、どうにもなっていないよ、範ちゃん」
「そう。ほんとに役立たずの機械みたいね」
「しまったほうがいいよ。なにが起こるかわからないよ」
「そうねえ。でも、惜しいような」
「でも、ほんとに、なにに使うはずだったんだろう。小説の登場人物であるわたしたちが持っていて、ほんとにいいのかな」
「いいんじゃない? たぶんよからぬことをさせようとしたに決まってるんだから」
「よからぬことって?」
「可能性としては、作者が原稿のページを稼ごうとした、というのが一番あり得るんじゃないかしら」
「それはないよ、この小説、量じゃなくて、時間制だよ」
「だからよ。たぶん作者はついうっかり忘れてしまったのね」
「がっかりだなあ」
範子は失望したかのように機械を見た。
「ええい。毒を食らわばなんとやら、だから……」
これでもかこれでもかこれでもかこれでもか……」
以下二十ページ以上に渡って続く。
読みたい? 読みたくない? ……世の中には読むタイプと読まないタイプの二種類の人間ないし宇宙人ないしロボットというものがあって……。
残念ながらオチはないのだ。とほほほ。
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NoTitle
いや、これ。おバカでウマい!
(たぶん、今まででナンバー1!)
ゲラゲラゲラ…
って、別に中森明菜じゃねーぞ(爆) ←古っ!
(たぶん、今まででナンバー1!)
ゲラゲラゲラ…
って、別に中森明菜じゃねーぞ(爆) ←古っ!
- #17783 ひゃく
- URL
- 2016.09/19 17:10
- ▲EntryTop
Re: 佐槻勇斗さん
携帯小説ってこんなに改行が続くんですか(^^;)
まるっきり読まないもので……。
趣味でやっているから平気といえば平気でありますが、もう自転車操業なのでいつまでもつか……(^^;)
うむむであります。
まるっきり読まないもので……。
趣味でやっているから平気といえば平気でありますが、もう自転車操業なのでいつまでもつか……(^^;)
うむむであります。
Re: lime さん
「千夜一夜物語」のシェヘラザード姫様はなあ、1001日も毎晩毎晩面白い話を、しかもライブで王様の前でやったんだぞ、それに比べてお前(ポール・ブリッツ)は再録ばっかりのうえたかだか500日にもいかない程度で音を上げるのか、しかも3日も休みやがって、と自分に言い聞かせながらやっています(^^)
とりあえず100日できたら、次になにをするかを考えるつもりです。小説やめて書評に転ぶかなあ(^^;)
とりあえず100日できたら、次になにをするかを考えるつもりです。小説やめて書評に転ぶかなあ(^^;)
NoTitle
オチはないのですか!(笑)www
このシリーズ、奇想天外。
どっから読んでもいいのがすごいですね。
そして、30分で??毎日?
ポールさんの頭の中の構造が見てみたいです。
桐野先生もゆっくり読ませてもらっています。
あ、ランキングはじめられたんですね。
来るたびにポチっていますよ。
このシリーズ、奇想天外。
どっから読んでもいいのがすごいですね。
そして、30分で??毎日?
ポールさんの頭の中の構造が見てみたいです。
桐野先生もゆっくり読ませてもらっています。
あ、ランキングはじめられたんですね。
来るたびにポチっていますよ。
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Re: ひゃくさん
35日目で、もうムチャクチャなことになってますね。しかしよく35日ももったもんだ(笑)