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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・36

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    「範ちゃん」
     文子は、力ない声でいった。
    「なあに、文子?」
     範子も力ない声で答えた。
    「この、『やせ薬』だけど、欠陥商品だよ、これ」
    「わたしもそう思うわ……」
     いつもの放課後の紅恵高校の教室。
     二人の少女は、顔を見合わせて、はあっ、と、大きくため息をついた。
    「うちの研究所の報告では、見事なまでの急激な痩身効果が見られるってことだったんだけど」
    「そこだけは合ってるね、範ちゃん」
     範子は親友の姿を見た。
     制服はぶかぶかだった。別に大きな制服を着てきたわけではない。
     文子がやせ細って、いや、やつれているのだった。
     やつれているどころの騒ぎじゃないわね、範子は、じぶんの腕を見ながらつぶやいた。
     範子も文子も、ナチスドイツのユダヤ人収容所からいま解放されて出てきたばかり、という囚人のように、骨と皮だけになっていたのだ。
     当然、歩けるような状況ではない。歩いて家に帰るにも、そんな体力はなかった。
    「みんな、ダイエットに成功したって思ってくれたかなあ」
    「そんなわけないでしょ」
     範子はうう、と顔を覆った。
    「誰がどう見たって、怪しげな手術か薬でこうなったと思うに決まっているわ」
    「その通りなんだからいいわけできないよ、範ちゃん」
    「で、それで」
     範子は手のひらを開いた。そこには、なんの変哲もない錠剤のケースが握られていた。
    「こういった状況になったら飲め、といわれた、高カロリー錠剤があるんだけど」
     文子は手を伸ばしかけ……引っ込めた。
    「どうしたのよ文子」
    「範ちゃん、あたし、オチがわかったわ」
    「オチ……?」
    「この小説のオチは、この薬を飲んだと思ったら、わたしたちが、相撲部屋の新弟子か、女子プロレスの悪役レスラーみたいな、まんまるの超・超・超デブになってしまう、ということになるに決まっているよ、範ちゃん」
    「考えすぎよ、文子」
    「いいえ、絶対、これは作者の陰謀だよ。絶対にそうに決まっているよ、だまされちゃダメだよ、範ちゃん」
    「でも、この身体で帰るわけにもいかないでしょう、文子。こんな身体で帰ったら、家へたどり着く前に倒れちゃうわ。ここはこの薬を信用するべきだと思うけど」
    「罠だよ。これは孔明の罠だよ、範ちゃん」
    「そこまでいうんだったら、なにか実験できる動物とかいないかしら」
     そのとき、どこからか学校の壁かパイプを伝って登ってきたのか、ネズミが一匹、窓の外の出っ張りでチュウと鳴いた。
    「ちょうどいいところにネズミがきたわ。文子、窓を開けにいってくれない? ……そう。そうそう。こっちに入れて。はい。ネズミちゃん。食べ物でちゅよ~」
    「範ちゃん。相手はちっともかわいくないドブネズミだよ」
    「いいのよ。ほら、飢えていたのかひと口かじ……えっ。ええ~っ!」
     薬をひとかじりしたかと思うと、ネズミは饅頭かサッカーボールのように身体がぶくぶくのデブに膨れ上がり、ひっくり返って動かなくなった。
     満腹したのか、気持ちよさそうに眠っている。
    「これは……」
    「やっぱり思ったとおりだよ、範ちゃん」
     二人は頭を抱えた。
    「そうだ!」
     ひらめいたのは範子だった。
    「量を少なくすればいいんだよ、この錠剤をこう、カッターでもって砕いて」
    「そうだね、範ちゃん、頭いい~!!」
    「このネズミがかじった量から計算して、このくらいあれば……」
     二人は、顔を見合わせて薬のかけらを飲んだ。
     ごくっ。

    「範ちゃん……」
    「文子……」
    「やっぱり、薬は定められた用量を守るべきだね」
    「そうね……」
     二人は、もとの体格に戻った身体を見て、肩を落とした。
    「まさか……肌の色が緑色になるなんて」
     二人は、抱き合って涙を流した。
     とほほほほ。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    確かに最後は甘かったかな(^^;)

    非才を恥じるでありますハイ……。

    NoTitle

    天下無双のブリッツ氏にしては、ちょっと最後の最後が甘かったかなぁ…(笑) 

    って、全開ベタ誉めだったんで、今回はちょっと辛口に、ね?(爆)

    Re: ネミエルさん

    思い出すなあ新井素子先生の「グリーン・レクイエム」。

    読もうと思っているうちにタイミングを逃してしまって……。

    Re: ぴゆうさん

    ありがとうございます。

    ガツガツ(^^;)

    オチもうけていただいたようでよかったであります。

    NoTitle

    葉緑体をゲットしただとっ!?
    世界でもっとも進んだ人類になってしまったっ!?

    NoTitle

    ポール君、君の判断は正しいv-426
    ごほうびにv-373
    蘭特製のパスタでチャンポンを御馳走しよう。

    ムフフv-391
    緑のオチは最高にグッドでござる。
    ポールの独断場だよね、うまいんだな。
    楽しかったです。

    Re: 蘭さん

    壁をよじ登ってやってきた、実験台にされる動物は、最初に書いたときは猫だったんですけど、ぴゆうさんと蘭さんの顔(あくまでイメージ)が脳裏をよぎって、危ういところで方針転換しました。ああ危なかった(^^;) でも壁をよじ登れる動物って、猫とネズミしか思いつかないであります。

    ラストシーンのあの二人に、「マチスの絵みたいでかわいいよ」といったら……。やっぱり殴られるだろうなあ(^^;)

    こんにちは^^

    意外なオチに大爆笑!
    ネズミを実験台に使ったトコまでは賢かったですけど、やっぱり作者の裏はかけませんでしたね(笑)。
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