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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・38

     ←リンク先紹介 →範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・39
    「……しゃぶをやったら面白いと思うのよ……」
     初夏の陽気のいまの季節に、暑さを覚えてぼおっとしていた文子は、範子の発した言葉に、はっと我に返った。
    「範ちゃん! なにをいってるの! シャブって、覚醒剤のことなの? そんなものに手を出したら、範ちゃん、わたし、範ちゃんと絶交するよ! お願いよ! お願いだから範ちゃん、正気に戻ってえ!」
     胸倉をつかまれて激しく揺すぶられた範子は、舌を噛みそうになりながらも、なんとか答えた。
    「シャブ? ちょっと、それ、違う……違うってば。落ち着いて、文子」
     文子の手から身をもぎ離し、範子はいった。
    「わたしがいったのは、冷しゃぶのことよ」
    「冷しゃぶ?」
     文子は首をひねった。
    「冷しゃぶって、あの、薄切り肉と野菜をぎんぎんに冷やして、そこに中華風のドレッシングをかけてサラダみたいにして食べるあれ?」
    「……よく知ってるわね、文子。そう、それよ」
     範子はうなずいた。
    「こないだ、テレビのコマーシャルで、冷しゃぶ用ドレッシングの広告が出てきてね」
    「もしかしたらあのゴマだれの?」
    「そう。無性に食べたくなったんだけど、うち、家があれでしょう。だから、そんな安いドレッシングを使う料理なんて、無理なのよね。それに、どうせ食べるなら大勢で食べたいし」
    「ははあ。範ちゃん、なにかで理由をつけて、冷しゃぶパーティーをやりたいんだね。わたしは別にいいよ。でも、会場、どこにする? 範ちゃんのお屋敷が使えないんだったら、駒子ちゃんのところか、小宮さんのところかなあ?」
    「それなんだけど」
     範子は声を潜めた。
    「この教室でやろうと思っているのよ」
    「え?」
     文子はすっとんきょうな声を上げそうになった。必死で押し殺す。今は放課後とはいえ、いつどこで生活指導の先生が聞いているかわかったものではないのだ。
    「いつもわたしたちといっしょにお弁当を食べている、駒子ちゃんたちにはすでに話は通したわ。駒子ちゃんが大皿と小皿を持ってきて、わたしが下ゆでした肉を、小宮さんや古々根さんたちがきゅうりの千切りやレタスやキャベツを持ってくる」
    「どうやって。ぬるいとおいしくないよ、あれ」
    「その点は計算済みよ。細長いタイプの保冷剤を入れた魔法ビンに、肉や野菜を入れて持ってくる手はずになっているわ。保冷剤はわたしが、会社の新製品を借りてくるということで。冷凍庫で凍らせたら、冷たさが通常のものの倍の時間、長持ちする高性能なやつよ。ご飯は、麗子ちゃんが人数分を持ってくることで合意しているわ」
     文子は熱をもってきた頭を押さえながら聞いた。
    「それで、この暑い季節に、冷たい冷しゃぶを食べられるというわけなんだね。それはそれとして、いったいわたしはなにをすればいいわけ?」
    「あなたは家がスーパーから近かったわよね」
    「うん。通り道にあるよ」
    「だから、例のドレッシングを買ってきてほしいの。お金は、終わった後でみんなが割り勘ということで」
    「うん。いいよ」
    「決まったわね。決行は、あさって。天気予報では、猛烈に暑くなるということになっているわ」
     文子は、神妙な顔をしてうなずいた。

     それぞれの家で、さまざまな準備工作が行なわれている翌日の夜。しかし……。

     当日昼食時。範子は、学友たちから吊るし上げを食っていた。
     ドレッシングを託された文子が、熱っぽさを通り越して風邪をひき、学校を休んだのだ。
     範子たちは、『ドレッシング抜きの冷しゃぶ』をおかずにご飯を食べるという、考えるだけでも恐ろしい事態に直面していた。
     その後の範子と文子の運命については悲惨すぎてとても語れない。
     しかたがないからこの話はパラレル・ワールドの出来事として忘れたいと思う。
     食い物の恨みは忘れられぬとはよくいわれているが……。
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    ~ Comment ~

    NoTitle

    これを書いた時には、6月で蒸し暑くて、「あー冷しゃぶが食べたいなあ。冷しゃぶが食べたいなあ」と思っていましたからねえ。

    パーティーについては、昔4コマ漫画で読んだ、「様々なものを持ち寄って、学校で弁当としてそうめんを食べる女子高生たち」というのが元ネタです。「× ペケ」の何巻かだったかなたしか。

    NoTitle

    > 冷しゃぶパーティー

    しゃぶしゃぶパーティーっていうのはわかるけど、冷しゃぶって、はたしてパーティーになるのかなぁ…(笑)

    > 駒子ちゃんのところか、小宮さんのところかなあ?

    2人以外で固有名詞のある人って、初めてじゃない?
    ちなみに、小宮さんは私も知ってますよ(笑)

    > 範子たちは、『ドレッシング抜きの冷しゃぶ』をおかずにご飯を食べるという、考えるだけでも恐ろしい事態に直面していた。

    キャンプで焼肉やるのに、焼肉のたれを買い忘れたことはありますね。
    あと、山でもりそばのメニューだったのに、つゆを忘れたこととか…(笑)

    Re: ネミエルさん

    これはつらかっただろうと思います範子たち。

    わたしでも逃げます(笑)。

    Re: 佐槻勇斗さん

    たしかにこの学校、学食がありますから塩も醤油もありますが、

    「仲間うちで学校で冷しゃぶパーティーをしようと思ったのですが、塩と醤油をわけてくださーい♪」

    って先生にいえますか?(笑)

    わたしはちょっと無理です(^^;)

    NoTitle

    それはいやだww
    ご飯をおかずにご飯を食べるようなものだww

    NoTitle

    ドレッシング無しのしゃぶしゃぶとか……悲惨すぎるヾ(=ω=||)

    でも学校に塩くらいあるはず…!!苦笑
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