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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・41

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    「文子。歯医者さんに行く最高のタイミングは、いつだか知ってる?」
    「え……ええ? え?」
     いつもの教室。文子は目を白黒させた。
    「範ちゃん、いったいどうしたの? 歯医者なんて。あんなところ、いつ行ったってつらいだけだよ」
     文子は当然の答えをしたが、範子は満足しないようだった。
    「いや、それでも、いって楽しいタイミングとつらいタイミングがあるでしょ。それを聞いているのよ」
    「楽しいタイミング、ねえ」
     文子は首をひねった。
    「範ちゃん、常識的に考えて、病院いくのが楽しいなんてことはめったにないよ。あるとすれば赤ちゃんを産む妊婦さんくらいだろうけれど、思うんだけどそうとう苦しいんじゃないかな。それに歯医者ときたら……」
     文子は背筋にぞおっとしたものが走るのを覚えた。
    「だめ、だめ、わたし、歯医者嫌い」
    「そういってしまっては始まらないわ。じゃ、歯医者さんに行くのに、いちばん適したタイミングはいつかしら?」
    「こだわるね範ちゃん」
     範子がここまでいう以上、考えざるを得ない。文子は、もしかしたら範ちゃんはMなのかしら、と思いながら頭をひねった。
    「虫歯になったとき?」
     ほかに思いつかない。
    「違うわね」
     範子は一蹴した。
    「そんなときに行っても、歯をドリルでがりがり削られて、神経を引っこ抜かれて、ただ単につらいだけよ。拷問でも、あれほどのものはそうないわ。歯医者の拷問シーンといえば、映画の『マラソン・マン』であったわね」
    「そんな映画思い出したくないよ範ちゃん」
     文子の背筋に寒気が走る。
    「じゃあ、範ちゃん、いったいどんなタイミングで行けばいいの?」
    「わかると思ったんだけどなあ」
    「わからないよ」
    「いい?」
     範子は指を立て、ひとことひとこと区切るように発音した。
    「む・し・ば・が・な・い・と・き」
    「え?」
    「虫歯がないときよ。歯医者さんには、そのときに行くべきなのよ」
    「よくわからないよ、範ちゃん。虫歯がないとき歯医者に行って、どうするの?」
    「どうするって……してくれることはかなりあるわよ。ほんと、虫歯がないときの歯医者って、いいものよ。まず」
     範子は指を一本折った。
    「徹底的に歯を磨いてくれる。磨き残したところも、全部ね。プロがやるんだから徹底してるわよ。次に」
     範子は指の二本目を折った。
    「歯垢や歯石を完全に落としてくれる。これが一番楽しいわね。ちょっと痛いけど、スクレーパーで削ると、どっさり歯石が削れるわ」
     指の三本目を折る。
    「歯や歯肉のケアもしてくれるわよ。歯周病になりにくいようにしてくれるから、これも安心ね」
     指の四本目。
    「なにがいいといって、歯のホワイトニングをやってくれることかしら。研磨機で歯の茶渋とかを全部落としてくれるんだから、終わった後には歯はぴかぴかよ。」
     手を引っ込める。
    「で、全てが終わった後は、全部きれいにすっきりさっぱり。歯だけだけど、生まれ変わったような気分になるわ。虫歯がないときの歯医者は、医者というよりエステみたいなものね」
    「そういうものなの……?」
     文子の声に、範子はにっこり笑って答えた。
    「そうよ。だってわたし、昨日行ってきたんだもの。ほら、歯がつやつやのぴかぴか」
     文子は範子の歯並びを注意して見た。そういわれてみればたしかに、いつもよりは、どこかきれいに見える。
     ちょっと心が揺らいでしまう文子であった。
    「行ってみようかな……でも、お金がかかるんでしょう?」
    「あのね文子、虫歯がないのよ。やることは歯の掃除だけよ。お金が必要以上にかかる理由がないじゃない。保険証を持っていけば、大丈夫よ」
     行ってみようかな……。保険証は持っているし、安い値段で歯が白くなるんだったら、それに越したことはない。
     それにしても、歯医者をこんなに持ち上げるなんて、ほんと、範ちゃん、Mなのかなあ。
     そう思う文子であった。

     翌日。
     文子は恨み骨髄の視線で範子を見た。
    「範ちゃん、歯医者行ってきたよ」
    「どうだった?」
     範子は面白がっているようだった。
    「ひどいものだった。隠れた虫歯が見つかって、それを治すためにドリルで穴を掘られて、また明日来てくださいって」
    「あら、それは残念。虫歯がなくなってから行くべきなのに」
    「範ちゃん」
     文子は追及しようとした。
    「範ちゃんも、そういう理由で歯医者にがりがりやられたんじゃないの? それを私にも味わわせたいために……」
    「さーて、なんのことだか」
    「範ちゃん、ひどいよお……!」
     漫画の悪役みたいに涼しい顔で笑う範子を見て、文子は確信した。
     Sだ。範ちゃんって、絶対Sだ!
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    ってことは若い女性の歯科技工士さんではなくて、脂ののった年増の(以下略)

    NoTitle

    > 面白い話をしてくれるのが若い女性の歯科技工士さんだったらわたしはさらにそっちを選ぶ!(笑)

    えー、でも、若いだけに経験不足で、ヘタかも(爆)

    Re: ひゃくさん

    同じ面白い話聞くのでも、笑いながら面白い話をされるのと、怒りながら面白い話をされるのでは、わたしは前者を選ぶ!

    面白い話をしてくれるのが若い女性の歯科技工士さんだったらわたしはさらにそっちを選ぶ!(笑)

    NoTitle

    あー、でも、医者って、意外と、怒っちゃう方が、逆に頼りになる的なイメージで、患者ウケよかったりするんじゃない?(笑)

    ていうか、医者って、話すると意外と面白い話聞けるんで好きです(爆)

    Re: ひゃくさん

    うちの歯医者の先生は優しいけどなあ。

    腕前はどうあれ、客商売だから、人あたりがよくない歯医者や医者というのは客が減っていくんじゃないかな、と思うであります。

    NoTitle

    > 「む・し・ば・が・な・い・と・き」

    やだよ。
    歯医者って、「アンタ、こんな歯の磨き方じゃ大変だよ!」って、マジ怒るんだもん。

    Re: ネミエルさん

    健康的な人ですなあ。

    あんなもの、ならないほうが絶対いいので……。

    NoTitle

    なるほど、そういうことですか
    まぁ僕は虫歯になったことがないから歯医者の痛みがわかりませんけどね!←

    Re: 蘭さん

    だから、「虫歯が痛くなってから行く」から嫌いになるんですってば。

    健康診断のつもりで定期的に行くようにしていれば、虫歯の発生も抑えられますし、ドリルでがりがりやられることもありません。歯を磨かれて歯石を除去されるだけです。

    発想をコペルニクス的転回するべきであります。

    妙に歯医者の肩を持つ男でした。歯医者でもないのに。

    Re: ぴゆうさん

    おそれいりやの鬼子母神……。

    それにしても「屁」どころではない絵文字でしたが(^^;)

    こんにちは~!

    大っ嫌いです、歯医者!
    クモ・ムカデ・ゴキブリの次くらいにダメです、私。
    なので、今日も明日も必死になって歯を磨きます、朝・昼・晩・・・。

    それでも虫歯が出来るのは・・・何故?v-406

    NoTitle

    ニャハハハv-391

    恐れ入ったかっカカカカv-411

    タダでは転ばぬ、ぴゆうのさいごっ屁v-355

    Re: ぴゆうさん

    うっ……こんなときにしか使えない絵文字を(^^;)

    やるな。むむう(^^;)

    NoTitle

    ポール どS か!

    私が奥歯を一時間もかけられて、抜いたのを知っとんのに・・・
    オノレーーーv-412
    今日もホッペがブンブクリンじゃーーー
    くそ・・・
    うんこしていくv-294

    覚え書き

    歯医者についてはいろいろといいたいことが溜まっているらしいぴゆうさんの超辛口コメントが楽しみである(^^)
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