「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・46
「なにか~ら~なに~ま~で~まっく~ら~やみよ~」
「どうしたの範ちゃん、そんな古い歌歌って」
文子の問いに、範子はうんざりした調子で答えた。
「歌いたくもなるわよ。あたりを見てごらんなさい」
範子の声がヒステリックになる。
「闇! 闇! 真っ暗闇の暗闇! 自分がほんとうにうちの高校の教室にいるのかどうかすらもわからないわっ! そのうえ文子の顔も見えないし! いったいどうしたらいいのよ、この状況。お~いおいおいおい……」
「おなかが痛いの、範ちゃん!」
「事態を憂えて泣いているのよっ! どうせ作者のことだから、この裏にもなにかバカバカしい理由を用意しているんでしょうけど……」
理由なんてないよ。
「えっ? だって、全ての物事には理由が」
作者の世界というのは、プランク長よりもさらに小さな世界なんだ。そこでは、因果律は働かない。現代物理学。わかる?
「わかった……わけがないでしょっ!」
範子はキレた。作者との対話でキレてしまうとは、根性がなってない娘である。
「なんとしてでもこの状況を脱出するわ」
範子は、闇の中で見えないが、どうやらまなじりを逆立てているらしい。
「範ちゃん、あまり怒ると美容と健康に悪いよ。人間、落ち着きが大事だよ」
「文子が落ち着きすぎなのよ!」
範子はいらいらと爪を噛んだ。やれることがないと無意味なことを始めてしまうのが人間らしい。
「範ちゃん」
「なあに、文子?」
「わたしたちって、なんなのかなあ?」
「なんなのかって、決まっているでしょ。紅恵高校二年A組の生徒、宇奈月範子と下川文子よ」
「それだけでは、ないと思うんだけど」
「おかしなことをいうわねえ」
範子は嘆息した。
「じゃあ、わたしたちは、いったいなんだというのよ」
「神様」
「え?」
「神様じゃないかなあ。わたしそう思うんだけど」
「神がなんでこんなところで暗闇を退屈がっていなければいけないというのよ」
「だからだよ。天地創造前の神様は、退屈でどうしようもなく困っていたんじゃないかなあ」
「だから、天地を作り、人間を生んだの? 文子。それはね」
「そういう意味じゃないよ。神様の心理状況を考えると、わたしたちによく似た感じがするの」
「例えば?」
「わたしたち。暗闇。顔をつきあわせて恐怖におびえている。つまらない、今のような状態がなにより嫌い。そうでしょ?」
「そ、そうだといえば、確かに……。でもそれと、神が?」
「わたしたちみたいになったとき、『神』はどうすると思う?」
「わからない。どうするの?」
「こうするのよ。範ちゃんも、いっしょにいって」
二人は深呼吸した。
『光あれ』
すると、光があった。
二柱の神は、全てのものを作られた。
今の世の中が間違っているのは、神が悪ノリして創造されたからである。
聖書より。
「どうしたの範ちゃん、そんな古い歌歌って」
文子の問いに、範子はうんざりした調子で答えた。
「歌いたくもなるわよ。あたりを見てごらんなさい」
範子の声がヒステリックになる。
「闇! 闇! 真っ暗闇の暗闇! 自分がほんとうにうちの高校の教室にいるのかどうかすらもわからないわっ! そのうえ文子の顔も見えないし! いったいどうしたらいいのよ、この状況。お~いおいおいおい……」
「おなかが痛いの、範ちゃん!」
「事態を憂えて泣いているのよっ! どうせ作者のことだから、この裏にもなにかバカバカしい理由を用意しているんでしょうけど……」
理由なんてないよ。
「えっ? だって、全ての物事には理由が」
作者の世界というのは、プランク長よりもさらに小さな世界なんだ。そこでは、因果律は働かない。現代物理学。わかる?
「わかった……わけがないでしょっ!」
範子はキレた。作者との対話でキレてしまうとは、根性がなってない娘である。
「なんとしてでもこの状況を脱出するわ」
範子は、闇の中で見えないが、どうやらまなじりを逆立てているらしい。
「範ちゃん、あまり怒ると美容と健康に悪いよ。人間、落ち着きが大事だよ」
「文子が落ち着きすぎなのよ!」
範子はいらいらと爪を噛んだ。やれることがないと無意味なことを始めてしまうのが人間らしい。
「範ちゃん」
「なあに、文子?」
「わたしたちって、なんなのかなあ?」
「なんなのかって、決まっているでしょ。紅恵高校二年A組の生徒、宇奈月範子と下川文子よ」
「それだけでは、ないと思うんだけど」
「おかしなことをいうわねえ」
範子は嘆息した。
「じゃあ、わたしたちは、いったいなんだというのよ」
「神様」
「え?」
「神様じゃないかなあ。わたしそう思うんだけど」
「神がなんでこんなところで暗闇を退屈がっていなければいけないというのよ」
「だからだよ。天地創造前の神様は、退屈でどうしようもなく困っていたんじゃないかなあ」
「だから、天地を作り、人間を生んだの? 文子。それはね」
「そういう意味じゃないよ。神様の心理状況を考えると、わたしたちによく似た感じがするの」
「例えば?」
「わたしたち。暗闇。顔をつきあわせて恐怖におびえている。つまらない、今のような状態がなにより嫌い。そうでしょ?」
「そ、そうだといえば、確かに……。でもそれと、神が?」
「わたしたちみたいになったとき、『神』はどうすると思う?」
「わからない。どうするの?」
「こうするのよ。範ちゃんも、いっしょにいって」
二人は深呼吸した。
『光あれ』
すると、光があった。
二柱の神は、全てのものを作られた。
今の世の中が間違っているのは、神が悪ノリして創造されたからである。
聖書より。
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NoTitle
> 親の反対を押し切って哲学科なんかに進学した時からわかり切っていたことではあった(笑)
山田邦子のファンだったとか?(笑)
山田邦子のファンだったとか?(笑)
- #17928 ひゃく
- URL
- 2016.10/10 17:45
- ▲EntryTop
Re: ひゃくさん
親の反対を押し切って哲学科なんかに進学した時からわかり切っていたことではあった(笑)
NoTitle
思うにー。
ぐだぐだであることが何より面白いこのシリーズを、ミョーに深淵にまとめたがるのがブリッツ氏のワルイくせだな(笑)
――ファンより(爆)
ぐだぐだであることが何より面白いこのシリーズを、ミョーに深淵にまとめたがるのがブリッツ氏のワルイくせだな(笑)
――ファンより(爆)
- #17896 ひゃく
- URL
- 2016.10/02 17:39
- ▲EntryTop
Re: 蘭さん
「天地創造」まで引っ張り出してこないといけないくらい、もうネタがないということであります(^^;)
変に「聖書」の内容を引用すると、各派ファンダメンタリストさんたちにボコボコにされてしまうので、注意しないと……(^^;)
変に「聖書」の内容を引用すると、各派ファンダメンタリストさんたちにボコボコにされてしまうので、注意しないと……(^^;)
Re: LandMさん
「ソフィーの世界」は、重箱の隅をつつくような哲学ファンにはやたらと評判の悪い本ですが、そうですか論理が近いですか。
わたしはまだあの本を読んでいないので、なんともいえませんが、読みやすく面白かったということだったら嬉しい限りです(^^)
わたしはまだあの本を読んでいないので、なんともいえませんが、読みやすく面白かったということだったら嬉しい限りです(^^)
こんにちは。
は~~・・・そう来ましたか^^;
いよいよこの物語は「天地創造」の域にまで到達しつつあるんですね~
出来る事なら、「聖書」の中の登場人物になって、色々とやらかして欲しいような気が・・・しないでもない(←どっち)
いよいよこの物語は「天地創造」の域にまで到達しつつあるんですね~

出来る事なら、「聖書」の中の登場人物になって、色々とやらかして欲しいような気が・・・しないでもない(←どっち)

NoTitle
ソフィーの世界の論理に近いですよね。小説の世界の神様は作者である。…という論理ですね。そういうところにポイントをついているところがこの作品の神髄を見た気がしますね。どうも、LandMでした。
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Re: ひゃくさん