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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・49

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    「範ちゃん」
    「なに?」
    「あれが食べたい」
    「あれじゃわからないわよ」
     いつもの紅恵高校の放課後。今日は珍しく、文子のほうから話題をふっていた。
    「カレーだよ」
    「カレーね。そうね。たまに、猛烈に食べたくなるときがあるわよね」
     範子は携帯を取り出した。
    「今度、うちに来ない、文子? そのときまでに、本場インドのスパイスのきいたカレーを用意しておくから……」
    「それじゃ間に合わないよ、範ちゃん。カレーを食べたいのは、今日だし、それにわたしが食べたいのは、そんなインドの本格派じゃなくて、ごくどこにでも売っている、ククレカレーとかボンカレーとかみたいなものなんだから」
    「なんだ、レトルトか」
     範子は携帯をしまった。
    「あ、範ちゃん、レトルトをバカにしているでしょ。レトルトはレトルトで、おいしいんだから」
    「バカにしてはいないわよ。でも、あれって、なんとなく、味に強烈な個性がないじゃない」
    「だからいいんだよ」
     文子は反論した。
    「個性がないってことは、日本人の好みに忠実だということで、いくら食べても飽きない、ということなんだから。毎回毎回同じ勧善懲悪のテレビの時代劇が、くりかえし再放送されるのと同じことだよ」
    「わかるようなよくわからないような比喩ね……」
     範子は額に手をやった。
    「でも、飽きないということでは、本場のカレーも負けちゃいないわよ。あっちの人は、それこそ一年中、カレーを食べているんだから。むしろ、スパイスの配合を変えたりして工夫できるぶん、向こうのほうがよくできているのかもね」
    「あまり、スパイスが強すぎるのは、わたしだめだなあ。むしろ、ソースや卵をかけていただくほうが」
    「文子」
     範子はぴしりといった。
    「いまなんていったの?」
    「ソースや卵……」
    「邪道よ!」
     範子の手は、わなわなと震えていた。
    「カレーは、きちんと味がついている、りっぱな料理よ。そこへソースだの卵だのって……」
    「邪道じゃないよ! いっぺんやってみなよ! カレーにソースをかけて、生卵を落として混ぜると、カレーがマイルドになるんだから」
     文子も一歩も譲らなかった。
     そうなると、話はまたややこしくなってくる。
    「だいたいねえ、カレーをあんなふうに捻じ曲げたのは、イギリス人と明治の日本人が愚かだったからよっ!」
    「愚かなんかじゃないよ! カレーは日本に来てこそ、真の進化を遂げたんだよ! 範ちゃん知らないの? 今や、インドにまで日本式のカレーを出す店があるんだよ!」
    「インドの日本式カレーの店は、現地の人はほとんど寄り付かないで、インド在住の日本人しか入っていないっていうじゃない! それは、国際化の時代に逆行する、悪しきナショナリズムよっ!」
     すでにふたりは自分がなにを口走っているかすらもわからなくなりつつあった。
     そうなると、話がどう進むかはおのずからわかったようなもので。
    「じゃ、文子、今度わたしのうちに来なさい! ほんとうのカレーというものを食べさせてあげるわ!」
    「上等だよ、範ちゃん! こっちこそ、今度お母さんがルーとだしとうどん粉をたっぷり入れた、ほんものの日本のカレーを作るから、ソースと卵をかけて食べてみることね!」
     ふたりはそういって、同時に席を立った。うるわしきふたりの友情も、もはやこれまでか!
     ……数日後。お互いに、相手の支持するカレーをむさぼるように食べて満腹した二人は、幸福な気持ちになり、こんなことでケンカをしたってしかたがない、ということで意見が一致し、前よりも強固な絆で結ばれたという。めでたしめでたし。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    なんでも南極越冬隊いうのは食事に変化がなくてしかも食器をマメに洗うということが難しいそうで、

    薄 一夜目:水炊き(鶏)
      二夜目:しゃぶしゃぶ
      三夜目:魚介鍋
    ↓  四夜目:豚鍋
      五夜目:もつ鍋
      六夜目:しょっつる鍋
    濃 七夜目:カレー鍋

    と、「汁をそのまま使いまわして」、バリエーション豊かな食生活をしていたそうで……。それが「常夜鍋」の本当の姿だ、とか聞きました。

    南極越冬隊には参加したくありません(^^;)

    NoTitle

    > 南極越冬隊の編み出した「常夜鍋」

    あ!それで、常夜鍋。
    わっ。それ、目からウロコぉ~(笑)

    しっかし、昔の日本人って、ネーミングに芸があるよね(爆)

    Re: ひゃくさん

    きっと範子ちゃんはどんな料理でも飽きない心の広い人なのでしょう(ほんとうか?)

    南極越冬隊の編み出した「常夜鍋」って、まさに日本人的発明、という感じがします(^^;)

    まあそれはともかくスパムには飽きたな(それはモンティ・パイソン!(^^;))

    NoTitle

    > 味に強烈な個性がないじゃない

    レトルトカレーって、最近はそうでもないらしいですよ。
    無茶苦茶個性の塊みたいなレトルトカレーも多いらしいです(笑)

    > インドの日本式カレーの店は、現地の人はほとんど寄り付かないで、インド在住の日本人しか入っていないっていうじゃない!

    前に、タモリ倶楽部で、新大久保のネパール人に、日本に来て驚いたことは?って質問をしたら、全員「カレーが甘いこと」って答えたのを見た時は笑いました。
    あと、カレーじゃないけど、中国人が「(日本の)麻婆豆腐が甘いって、信じられない!」って。
    一瞬、ほとんど憎悪に近い表情を浮かべたのはとっても印象的でした(爆)

    > 飽きないということでは、本場のカレーも負けちゃいないわよ。

    本場のカレーはね、たぶん飽きますよー。
    最初はウマくても、早い人だと2日目には飽きると思います。
    ていうのは、向こうのカレーって、日本でいうとしょうゆや味噌といった大豆調味料にあたるんだと思うんですよ。
    日本の料理の味付けって、基本は全て、それらの大豆調味料なわけじゃないですか。
    それと同じなんですよ。
    メインの料理はもちろんカレー(味)なんだけど、その横にある付け合わせのお浸し(みたいに見える)料理も、食べてみればカレー味。
    サラダも、カレー味。そこにあるもの、全部カレー味(スパイス味)なのが、つまり、インディアンフーズってヤツ(笑)

    Re: 佐槻勇斗さん

    わたしも昔は同じように、ソースや醤油は邪道だと思って毛嫌いしていたのですが、

    好奇心から大学の学食のカレーにソースをかけて食べてみたらうまかったのであります。

    それ以来、カレーにソースや醤油をかける人を見ても、寛容になれました(^^)

    でもナンにつけて食べるインド風のやつにかけるのは許せん(笑)。

    NoTitle

    佐槻も範子ちゃんに賛成です。
    我が家では醤油をかける習慣があるのですがほんとうに邪道としか思えない!!
    端っこに福神漬けを載せられるのですら嫌悪ヾ(`Д´メ)
    というかそもそもカレーに具が入っていることでさえ佐槻は首を傾げます←

    人それぞれですよねほんと、好みって。

    Re: ぴゆうさん

    スパイスにこだわるタイプでは、お気に入りのカレー屋がふたつほどあるのですが、片方は電車で家から1時間。もう片方は電車を乗り継いで家から3時間。(笑)

    1時間のほうはそれでも2年に1度くらいの割合で行っているのだから、まあ、食い意地が張っているというか……(^^)

    もちろんそば屋なんかで出してくれるカレーも好きです(^^)

    NoTitle

    カレーって美味しいよね。
    私、何でも好き。
    お家カレーも外カレーもレトルトも、
    どんな食べ方も出来るのが、またカレーの凄い所だよね。
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