「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・53
「範ちゃん」
「どうしたの? 文子」
文子は、手に教科書を持っていた。
「範ちゃん、明日からの期末テストだけど」
「な……なんのことかしら?」
範子は妙に明るい声でいった。作っている感じありありである。
文子は律儀に続けた。
「だから、明日からのテストが」
「聞こえなーい。聞こえません。なに語、それ? あーあーあー」
耳を押さえて目をつぶる範子に、文子はあきれた、とでもいいたげな視線を向けた。
「範ちゃん……現実逃避をしても、むなしいだけだよ」
「現実逃避なんていわないでよ、文子」
「じゃあなにをしてるの、範ちゃんは?」
「無限の想像力の世界を闊歩しているのよ」
「範ちゃん、それを現実逃避っていうんだよ」
文子はため息をついた。
「今度のテストは、範囲がものすごく広いらしいから、なんとか対策を立てたいんだけど……」
「あんなに範囲が広かったら、対策の立てようがないわよ。日ごろから勉強していることが問われる、ということでいいんじゃないかしら」
「範ちゃん……」
文子はいってはいけない疑問を口にした。
「範ちゃん、日ごろから勉強やってるの?」
「うっ……そ、そりゃ、人並みくらいにはやっているわよ。文子だって、そうでしょう?」
「そうだけど、それだと、人並みにやっているみんなは、それに集中的なテスト勉強をやっているはずだから、よけいに差がついて、わたしたちだけ、見事な劣等生になっちゃうよ、範ちゃん」
「まじめね、文子……そういわれると、勉強しなくちゃいけないって気になってきたわ」
「それが普通だって、範ちゃん」
「じゃあ、今晩はわたしの家で徹夜でテスト勉強しましょう。明日の三時間目のテストに、不安を感じているから、そこを集中的に……ね」
「明日の三時間目……?」
文子は首をひねって、手帳の予定表を確認した。
「ちょっ、ちょっと、範ちゃん、明日の三時間目って、あれじゃない、保健体育! わたしのほうが不安を感じるよ! ほかにも試験はあるでしょう、英語と世界史! そっちのほうを中心にやろうよ、やるのなら!」
「勉強くらい楽しくやりましょうよ、文子」
「楽しくやるには越したことはないけど、身の危険を感じる場合はそちらを優先だよ、範ちゃん! まったくもう」
「わかりました。わかりましたって。英語は今からやってもたぶんダメだから、世界史を重点的に攻めたほうが効率的みたいね」
「とりあえず、文明のはじまりから、西ローマ帝国が滅びたあたりまでだっけ、範囲?」
「そういうことよ。なにか問題出してみて、文子?」
「じゃあ、ホルテンシウス法について説明してみて」
「ホルテンシウス法……?」
範子は首をひねった。
「ホルテンシウス法でしょ、うん、わかる。わかるよ。ここまで出かかっているわ」
「じゃあ答えてよ」
「えーと、ローマのあれね。ローマの……」
「帝政ローマのほう? 共和政ローマのほう?」
「あ、文子、人間、帝政だとか共和政だとか、そういった枝葉末節にこだわるべきじゃないと思うの」
「枝葉末節じゃないよ、範ちゃん」
「ホルテンシウス法、ねえ。えーと、共和政ローマで……ローマで……」
「ローマで?」
「農民が……」
「農民が、そう、平民が。それで」
「ええと……乳牛を飼うことを許された法律」
「……………………」
「……………………」
「範ちゃん?」
「なに、文子?」
「範ちゃんって、ばか?」
「……かもしれない」
とはいえ、こういうやつに限って、いざ実際にテストをやってみたら、成績がよかったりするんだからなあ。運命は無情だなあ。
……と、二週間後にテストが返却された文子は思ったのであった。
世の中そんなもんである。
「どうしたの? 文子」
文子は、手に教科書を持っていた。
「範ちゃん、明日からの期末テストだけど」
「な……なんのことかしら?」
範子は妙に明るい声でいった。作っている感じありありである。
文子は律儀に続けた。
「だから、明日からのテストが」
「聞こえなーい。聞こえません。なに語、それ? あーあーあー」
耳を押さえて目をつぶる範子に、文子はあきれた、とでもいいたげな視線を向けた。
「範ちゃん……現実逃避をしても、むなしいだけだよ」
「現実逃避なんていわないでよ、文子」
「じゃあなにをしてるの、範ちゃんは?」
「無限の想像力の世界を闊歩しているのよ」
「範ちゃん、それを現実逃避っていうんだよ」
文子はため息をついた。
「今度のテストは、範囲がものすごく広いらしいから、なんとか対策を立てたいんだけど……」
「あんなに範囲が広かったら、対策の立てようがないわよ。日ごろから勉強していることが問われる、ということでいいんじゃないかしら」
「範ちゃん……」
文子はいってはいけない疑問を口にした。
「範ちゃん、日ごろから勉強やってるの?」
「うっ……そ、そりゃ、人並みくらいにはやっているわよ。文子だって、そうでしょう?」
「そうだけど、それだと、人並みにやっているみんなは、それに集中的なテスト勉強をやっているはずだから、よけいに差がついて、わたしたちだけ、見事な劣等生になっちゃうよ、範ちゃん」
「まじめね、文子……そういわれると、勉強しなくちゃいけないって気になってきたわ」
「それが普通だって、範ちゃん」
「じゃあ、今晩はわたしの家で徹夜でテスト勉強しましょう。明日の三時間目のテストに、不安を感じているから、そこを集中的に……ね」
「明日の三時間目……?」
文子は首をひねって、手帳の予定表を確認した。
「ちょっ、ちょっと、範ちゃん、明日の三時間目って、あれじゃない、保健体育! わたしのほうが不安を感じるよ! ほかにも試験はあるでしょう、英語と世界史! そっちのほうを中心にやろうよ、やるのなら!」
「勉強くらい楽しくやりましょうよ、文子」
「楽しくやるには越したことはないけど、身の危険を感じる場合はそちらを優先だよ、範ちゃん! まったくもう」
「わかりました。わかりましたって。英語は今からやってもたぶんダメだから、世界史を重点的に攻めたほうが効率的みたいね」
「とりあえず、文明のはじまりから、西ローマ帝国が滅びたあたりまでだっけ、範囲?」
「そういうことよ。なにか問題出してみて、文子?」
「じゃあ、ホルテンシウス法について説明してみて」
「ホルテンシウス法……?」
範子は首をひねった。
「ホルテンシウス法でしょ、うん、わかる。わかるよ。ここまで出かかっているわ」
「じゃあ答えてよ」
「えーと、ローマのあれね。ローマの……」
「帝政ローマのほう? 共和政ローマのほう?」
「あ、文子、人間、帝政だとか共和政だとか、そういった枝葉末節にこだわるべきじゃないと思うの」
「枝葉末節じゃないよ、範ちゃん」
「ホルテンシウス法、ねえ。えーと、共和政ローマで……ローマで……」
「ローマで?」
「農民が……」
「農民が、そう、平民が。それで」
「ええと……乳牛を飼うことを許された法律」
「……………………」
「……………………」
「範ちゃん?」
「なに、文子?」
「範ちゃんって、ばか?」
「……かもしれない」
とはいえ、こういうやつに限って、いざ実際にテストをやってみたら、成績がよかったりするんだからなあ。運命は無情だなあ。
……と、二週間後にテストが返却された文子は思ったのであった。
世の中そんなもんである。
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Re: ネミエルさん
メンドくてもやるしかないですね。
ファイト!
勉強しないとこういう大人になっちゃうぞ~(ある意味マジ)。
ファイト!
勉強しないとこういう大人になっちゃうぞ~(ある意味マジ)。
Re: 蘭さん
ようこそいらっしゃいました! もうブログの更新のほうは大丈夫なんですか? これからさっそくお邪魔いたします。
範子は天才肌というか……。
よくいるでしょう、危ない状況に目をつぶってわーっと突っ込んでいって奇跡的に無傷な人って(^^)
まあそういう人なんです(^^)
財閥の娘だけあってそういうことには運が味方しているんですよきっと。
明日はもっとタイムリーな話題になるはずです……ってまたあれか(^^;)
範子は天才肌というか……。
よくいるでしょう、危ない状況に目をつぶってわーっと突っ込んでいって奇跡的に無傷な人って(^^)
まあそういう人なんです(^^)
財閥の娘だけあってそういうことには運が味方しているんですよきっと。
明日はもっとタイムリーな話題になるはずです……ってまたあれか(^^;)
こんにちは^^
すっかりご無沙汰しておりました、蘭です
何ともまぁ、世間的にタイムリーな題材ですね^^;
「能ある鷹は爪隠す」と言いますからね。
範子は間違いなく天才肌なのでしょう。
羨ましいです(*^^*)

何ともまぁ、世間的にタイムリーな題材ですね^^;
「能ある鷹は爪隠す」と言いますからね。
範子は間違いなく天才肌なのでしょう。
羨ましいです(*^^*)
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Re: ひゃくさん
もちろん高校のころ覚えた内容は忘れたけど(笑)